米国公文書館所蔵の合計160万ページの中から選択収録した文書の編集著作物性を認定した事例 | 著作権コンサルタントが伝えたいこと

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米国公文書館所蔵の合計160万ページの中から選択収録した文書の編集著作物性を認定した事例

 

▶平成24年1月31日東京地方裁判所[平成20(ワ)20337等]▶平成24年9月10日知的財産高等裁判所[平成24(ネ)10022等]

(2) 上記認定事実によれば,原告書籍収録文書は,単に米軍押収文書を時系列に従って並べたり,既に分類されていたものの中から特定の項目のものを選択したりしたというものではなく,原告が,未整理の状態で保存されていた160万ページにも及ぶ米軍押収文書の中から,南北朝鮮のどちらが先に朝鮮戦争を仕掛け,戦争を主導したかを明らかにする文書という一定の視点から約1500ページ分を選択し,これを上記(1)のとおり原告の設定したテーマごとに分類して配列したものといえる。

したがって,原告書籍収録文書は,全体として,素材たる原資料の「選択」及び「配列」に編者の個性が顕れているものと認められるものであり,編集著作物に当たるというべきである。

(3) これに対し,被告らは,原告書籍収録文書における素材の選択及び配列は,米軍押収文書から出版物を作成する場合にとられる標準的なものであり,創作性があるとはいえないと主張し,その根拠として,原告書籍より先に刊行された北韓関係資料集に収録されている資料の中に,原告書籍収録文書と同じ資料が少なからず存在することなどを挙げる。

しかしながら,証拠及び上記(1)掲記の各証拠によれば,北韓関係資料集と原告書籍とは,米軍押収文書の中から編者が選択した資料を掲載しているという点では同じであるもの,北韓関係資料集に収録されている文書と原告書籍収録文書が共通するのは,原告書籍収録文書全体の1割にも満たないものであり,北韓関係資料集の収録文書全体に占める割合は更に低いものであって,両書籍における資料の選択及び配列の仕方には,共通点が乏しいものと認められる。また,このほかに,原告書籍収録文書における素材の選択及び配列がありふれたものであることを認めるに足りる証拠はない。

したがって,被告らの上記主張を採用することはできない。

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