【美術工芸品/応用美術】美術工芸品ってなに?著作権で保護される? 2/3 | 著作権コンサルタントが伝えたいこと

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【美術工芸品/応用美術】美術工芸品ってなに?著作権で保護される? 2/3

 

▶応用美術の著作物性について

 

上述したように、法第2条2項は、少なくとも「美術工芸品」は美術の著作物として保護されることを明記したにとどまり、美術工芸品以外の「応用美術」を著作権法上一切保護の対象外とするものではないと解されます。美術の著作物との関係で、現行著作権法の制定当初(昭和45年)からいまだに議論されている「応用美術の著作物性」について、ここで少し触れておきます。

 

一般に、美術は、「純粋美術」と「応用美術」とに大別でき、ここに、「純粋美術」とは、絵画や版画、彫刻などのように、専ら美の表現のみを目的として個別に制作され、それ自体の鑑賞を目的とし、実用性を有しないものをいい、一方、「応用美術」とは、実用品に美術あるいは美術上の感覚・技法を応用したものを総称した呼び方です。「美術工芸品」は、既成の純粋美術の技法を一品製作に応用する場合に該当し、「応用美術」の一態様として捉えることができます。

ところで、著作権法は、その2条1項1号で「美術の範囲」に属するものを著作物の対象とすると規定するとともに、同条2項で、「美術の著作物」には「美術工業品」を含む、と規定しています。一方、同じく知的所有権(知的財産権)法に分類されますが、産業政策立法(産業促進法)の一つである「意匠法」に規定する「意匠」(意匠法2条1項参照)との関係で、応用美術をどこまで著作権法の保護対象とすべきか、応用美術のうち美術工芸品に属しない類型のものは美術の著作物として著作権法の保護の対象となりうるか、といった問題が、長い間、学会や実務界等で議論されています。現時点で、明確に”通説だ”と呼べる見解があるかどうかはにわかには判断できないところです(最近の裁判例については後述)。なお、国際的には、「応用美術の著作物」(works of applied art)に対する法令の適用範囲やその保護条件をどうするかといった点は、各国における立法政策の問題だと認識されています(ベルヌ条約2条(7)参照)。

 

代表的な裁判例を概観してみると、「美術工芸品」以外の「応用美術」であっても、意匠や実用新案の登録の可能性に係わらず、著作権法によって保護される場合はありうる、という点は、まず間違いなく言えるでしょう。ただ、その線引きといいますか、著作権法による保護のライン(境界線)という話になると、「美的表象を美術的に鑑賞することに主目的があるもの」とか、「高度の美的表現を目的とするもの」と言ってみたり、「美の表現において実質的制約を受けることなく、専ら美の表現を追求して制作されたもの」、「純粋美術と同視しうるもの」、「高度の芸術性(思想又は感情の高度に創作的な表現)を有し、純粋美術としての性質をも肯認するのが社会通念に沿うもの」、「独立して美的鑑賞の対象となり得る程度の美的創作性を備えている場合」など、いまだ明確な基準は確立していないように見えます。結局のところ、個別の事案ごとにケースバイケースで認定が行われることになりますが、同一事案であっても、認定者(裁判官)によって判断が割れる場面もあるでしょう。

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