適法引用を否定(「公表」要件欠如)した事例 | 著作権コンサルタントが伝えたいこと

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適法引用を否定(「公表」要件欠如)した事例

 

平成25年06月28日東京地方裁判所[平成24(ワ)13494]

ア 前記前提事実のとおり,被告Y2は,被告ブログ2中の被告記事3において原告文書2を,被告記事6において原告文書3を各掲載しているものであり,これにより,原告文書2及び3を公衆送信しているものと認められる。

イ この点に関し,被告Y2は,原告文書2及び3の掲載は著作権法32条1項の引用に当たるから,上記アの行為に公衆送信権侵害は成立しない旨主張する。

しかし,前記前提事実のとおり,原告文書2は東京行政書士会における苦情申告手続において提出された苦情申告書であり,原告文書3は,東京弁護士に対する懲戒請求に関し,東京弁護士会綱紀委員会宛てに提出された答弁書であるところ,いずれの手続も,担当委員会内における非公開での審理が予定されているものであるから,このような手続において提出された原告文書2及び3について,「発行」(著作権法3条1項)されたものと認めるに足りる程度の複製物の作成及び頒布(公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物の作成及び頒布)がされたものとは認められない。また,上記のとおり各手続が非公開とされていることに照らし,原告文書2及び3が,原告又はその許諾を得た者によって公衆送信等の方法で公衆に提示されたものとも認められない。そうすると,原告文書2及び3は,いずれも「公表」(同法4条1項)されたものと認めることができず,「公表された著作物」(同法32条1項)に当たらないから,被告Y2の行為が同法32条所定の引用に当たるものとは認められない。

ウ したがって,被告Y2の上記行為は,原告の公衆送信権を侵害するものに当たる。

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