シャフトのカタログデザインは美術の著作物か(詳細版) | 著作権コンサルタントが伝えたいこと

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シャフトのカタログデザインは美術の著作物か(詳細版)

~ゴルフクラブのシャフトの外装デザイン及びその基となった原画並びにそのカタログの表紙デザインの著作物性を否定した事例~

 

▶平成28年12月21日知的財産高等裁判所[平成28(ネ)10054]

ウ 本件シャフトデザイン及び本件原画の著作物性の有無

控訴人は,①本件シャフトデザイン等の縞模様を含むベース部分は,トルネード(竜巻)をイメージし,人間のパワーの源である赤から,シャフトのカーボンを表す黒に昇華していく表現であり,ゴルフ界に嵐を巻き起こすという意味を込めている,②ブランドロゴの横字画部の右側を鋭角に伸ばすことでボールの弾道やエネルギーの伸びと指向性を表現している,③ブランドロゴをトルネード模様(縞模様)の上に配置することでシャフト縦方向へのパワーを表現する工夫を凝らしているから,本件シャフトデザイン等には創作性が認められるべきである,と主張する。

しかし,①縞模様は,本件シャフトデザイン及び被告シャフト以外にもシャフトのデザインに用いられた例がある上に,様々な物のデザインとして頻繁に用いられ,縞の幅を一定とせずに徐々に変更させていく表現も一般に見られるところである。ゴルフシャフトの色として,赤,黒及びグレーの3色を用いた例は証拠上複数見られる。よって,本件シャフトデザイン等を縞模様とし,縞の幅を変化させ,縞の色として赤,黒及びグレーを選択したことは,ありふれている。

また,②いわゆるデザイン書体は,文字の字体を基礎として,これにデザインを施したものであるところ,文字は,本来的には情報伝達という実用的機能から生じたものであり,社会的に共有されるべき文化的所産でもあるから,文字の字体を基礎として含むデザイン書体の表現形態に著作権としての保護を与えるべき創作性を認めることは,一般的には困難であると考えられる。しかも,本件において,「Tour AD」のブランドロゴは,上記ア(エ)のとおり,既存のフォントを利用した上で,「T」の横字画部を右に長く鋭角に伸ばしたものであるところ,文字として可読であるという機能を維持しつつデザインするに当たって,文字の一字画のみを当該文字及び他の文字の字画を妨げない範囲で伸ばすことは一般によく行われる表現であること,文字の一字画を伸ばした先を単に鋭角とすることも,平凡であることからすれば,この表現が個性的なものとは認められない。

さらに,③ブランドロゴをトルネード模様の上に配置したことに関しては,シャフトのデザインに製品等のロゴを目立つように配置することは,他のゴルフクラブのシャフトにも頻繁に見られる表現であり,細長いシャフトに文字を大書して目立たせる配置をすることの選択の幅は狭いから,ブランドロゴをトルネード模様の上に配置したことが個性的な表現とはいえない。

よって,本件シャフトデザイン等に,創作的な表現は認められず,著作物性は認められない。

2 争点(2)(本件カタログデザインの著作物性)について

本件カタログデザインは,上記のとおり,本件シャフトデザイン等の縞模様部分を平面上に表現し,その配色を,赤,黒及び白とし,会社マーク及び「Tour AD」のブランドロゴ等が配置されたものである。

控訴人は,本件カタログデザインは,本件シャフトデザイン等の特徴的部分である縞模様部分を長方形の平面に表現し,これをカタログの表紙とすることで本件シャフトデザインをアピールすることを意図して制作されたものであるから,創作性がある,と主張する。

しかし,上記1(2)ウのとおり,縞模様は,様々な物のデザインとして頻繁に用いられ,縞の幅を一定とせずに徐々に変化させていく表現も一般に見られる上,縞の色として,原色である赤と,無彩色である黒及び白を選択することも,特段の工夫が見られず,平凡であるから,本件カタログデザインには,本件シャフトデザイン等より更に創作的な表現はなく,著作物性は認められない。

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