応用美術の著作物性 | 著作権コンサルタントが伝えたいこと

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応用美術の著作物性

 

▶平成28年12月21日知的財産高等裁判所[平成28(ネ)10054]

ところで,著作権法は,建築(同法10条1項5号),地図,学術的な性質を有する図形(同項6号),プログラム(同項9号),データベース(同法12条の2)などの専ら実用に供されるものを著作物になり得るものとして明示的に掲げているのであるから,実用に供されているということ自体と著作物性の存否との間に直接の関連性があるとはいえない。したがって,専ら,応用美術に実用性があることゆえに応用美術を別異に取り扱うべき合理的理由は見出し難い。また,応用美術には,様々なものがあり得,その表現態様も多様であるから,美的特性の表現のされ方も個別具体的なものと考えられる。

そうすると,応用美術は,「美術の著作物」(著作権法10条1項4号)に属するものであるか否かが問題となる以上,著作物性を肯定するためには,それ自体が美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えなければならないとしても,高度の美的鑑賞性の保有などの高い創作性の有無の判断基準を一律に設定することは相当とはいえず,著作権法2条1項1号所定の著作物性の要件を充たすものについては,著作物として保護されるものと解すべきである。

もっとも,応用美術は,実用に供され,あるいは産業上の利用を目的とするものであるから,美的特性を備えるとともに,当該実用目的又は産業上の利用目的にかなう一定の機能を実現する必要があり,その表現については,同機能を発揮し得る範囲内のものでなければならない。応用美術の表現については,このような制約が課されることから,作成者の個性が発揮される選択の幅が限定され,したがって,応用美術は,通常,創作性を備えているものとして著作物性を認められる余地が,上記制約を課されない他の表現物に比して狭く,また,著作物性を認められても,その著作権保護の範囲は,比較的狭いものにとどまることが想定される。そうすると,応用美術について,美術の著作物として著作物性を肯定するために,高い創作性の有無の判断基準を設定しないからといって,他の知的財産制度の趣旨が没却されたり,あるいは,社会生活について過度な制約が課されたりする結果を生じるとは解しがたい。また,応用美術の一部について著作物性を認めることにより,仮に,何らかの社会的な弊害が生じることがあるとすれば,それは,本来,著作権法自体の制限規定等により対処すべきものと思料される。

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