銅像の著作者は誰か(著作者の推定を覆した事例) | 著作権コンサルタントが伝えたいこと

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銅像の著作者は誰か(著作者の推定を覆した事例)

 

▶平成17年6月23日東京地方裁判所[平成15(ワ)13385]▶平成18年02月27日知的財産高等裁判所[平成17(ネ)10100等]

著作物とは,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいい,著作者とは,著作物を創作する者をいうのであるから(著作権法2条1項1号,2号),本件各銅像についても,本件各銅像を創作した者をその著作者と認めるべきである。

ジョン万次郎像は,ブロンズ像であり,ブロンズ像は,塑像の作成,石膏取り,鋳造という工程を経て製作されるものである。そして,ブロンズ像の顔の表情,全体の構成,体格やポーズなどにおける表現が確定するのは塑像の段階であるから,塑像を制作した者,すなわち,塑像における創作的表現を行った者が当該銅像の著作者であることは明らかである。

本件においては,ジョン万次郎像の制作者として,被告が自己のサインをその台座部分に施しているため,著作権法14条により,ジョン万次郎像の著作者は,被告と推定される。しかしながら,当裁判所は,ジョン万次郎像の塑像を制作した者すなわちジョン万次郎像の著作者は,原告であると認定する。その理由は次のとおりである。

(略)

上記で認定したところによれば,ジョン万次郎像の塑像制作について創作的表現を行った者は原告であるから,ジョン万次郎像は原告が制作したものと認められる。被告は,ジョン万次郎像について,その塑像の制作,石膏どり,鋳造といった銅像の制作工程において,原告の助手として,その制作に必要な準備を行ったり,粘土付け等に関与したにすぎないものと認められる。

以上によれば,本件では,被告がジョン万次郎像の制作者として,自己のサインをその台座部分に施しているため,著作権法14条により,ジョン万次郎像の著作者であると推定されるものの,その推定は覆されたものというべきであり,ジョン万次郎像は,原告により制作され,著作されたものと認められる

 

[控訴審同旨]

著作物とは,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」をいい(著作権法2条1項1号),著作者とは,「著作物を創作する者をいう」のであるから(同項2号),美術品である本件各銅像については,本件各銅像を創作した者をその著作者と認めるべきである。そして本件各銅像のようなブロンズ像は,塑像の作成,石膏取り,鋳造という3つの工程を経て制作されるものであるが,その表現が確定するのは塑像の段階であるから,塑像を制作した者,すなわち,塑像における創作的表現を行った者が当該銅像の著作者というべきである。

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