翌日、社長から僕の携帯に電話がかかってきた。
「あっ、菅原だけど、Mさんからオレ宛に電話があって、担当を不知火くんにやってもらう事にしたから…」
「えっ!?どういう事ですかぁ?この前は僕の話に納得して下さいましたよね?」

「もういいの!そんな事!担当変える事にしたからね!プッープッープッー」

ーそんな事って…そんな事って!ー

僕には全く信じられなかった。その一言に耐えられなかった。
だってそうだろう。
僕が今までやってきた営業活動をすべて否定された様な言い方だ!僕の自尊心はズタズタになった。

ー今度は担当の置き換えか!相変わらず人を替えればそれで解決したと思っていやがる!そんなにオレが信じられないのか?そんなにMがかわいいのか?いや!そんなハズはない!は社長の取引中止リストに載っていたハズだ!だとしたらMさんから『困ったさん面』で相談されたので、得意の『いい顔』をしたのだろう。僕には「Mはわがままだから放っておけ」と言っておいきながら、Mには「鈴木はあんな性格だから」と言ってなだめたに違いない。
結局は社員の意思より目前の売り上げ最優先かー

つづく…

それは3月の東京展示会での事。


「いらっしゃいませ!遠い九州からのご来社有り難うございます」


わざわざ足を運んで下さる得意先に丁寧なお礼は欠かせない。

入社当初からお付き合いのあるMさん。

もうお互いの性格もクセもよく分かっている。


「今日は他社の展示会も多いからあまりゆっくり出来ないの。早速見ていくわ!」


相変わらずせっかちで気持ちに余裕がない。


「分かりました。今回は秋物1回目の商品で7/末~8/末にかけての納期です」


「じゃあ、上がって来たら9/21付で送ってくれる?無理ならそれまで止めておいてね!」


「えっ?」


「だから9/21で!」


今までそんな事言われた事ない。


Mさんに限らず他の得意先からも。

回の納品は早い商品で7末。

ウチの会社では7末から8末に上がって来る商品に関してだけは

伝票を先付け8/21付や9/1付が渋々許される。

(本来は上がって来た日に即日納品するか月内での納品が基本である。)

それを9/21付にして欲しいとは社内外でもありえない。

先方もウチとは取り引きが長いので分かっているハズなのに



「それは出来ません。遅くても8/末には送らせて頂かないと!それが無理なら今回は受注を見合わせて下さい」


と、断った。

あまりにもありえないお願いだったので僕の言い方もキツかった様だ!

それに対して先方は


「何?その言い方!九州は10月まで最高気温が30あるのよ!それくらいしてくれたっていいじゃない!」


僕は以前から度重なる無理やお願いを聞いて来た。

それらに僕は僕の出来る範囲で対応して来た。

社長に分かれば怒鳴り散らされる様な事までMさんをかばってやってきた。

たぶん、それらが先方を増長させたのだろう。

だから断った。


「無理です」


「そんな融通効かないんだったら帰る」



ー 話し合いも出来ないのか ー


「ちょっと待って下さい」


ここであいまいになった関係に線を引くいい機会だと思ったが


「帰るから


と、帰って行った。


その後、社長から


「どうしたの?」


と、聞かれた。


「今回の展示会商品を9/21で納品して欲しいと言われたので断りました」


と、素直に答えた。


「あんなわがままなお店放っておけばいいよ!」


社長もMさんのわがまま加減を十分に知っていた。


「僕は散々わがままを聞いて来ました。怒って帰るからには先方もそれなりの覚悟があると思います。でも先方はウチを必要としてますから辞めないでしょう、いや辞めれないでしょう。それでも僕はこれを機会に取り引きを辞めて、他の新規のお店に行こうと思いますがいいですか?」


僕の営業活動に足を引っ張って来たMさん。

僕は取り引き中止を訴えた。


「お前が間違ってるんじゃないから仕方ないじゃない」


一応社長の了解を得た。商売は人対人で成り立っている。

お互いの言う分はある。

当たり前だ。

譲れない所、譲れる所はどちらにも必ずある。

それを調整して成り立たせるのが商売ではないのか。

どちらかが一方的なのはありえないし続かない。

僕はそれなりにわきまえているつもりであった。

しかし、この後に僕にとっての最大の問題が起こる。

つづく・・・

前回の内容はこちら


日に日に社長の暴言は酷くなるばかり。

最近は東京本社へ行っても社長は挨拶すらしない。

もちろん目も合わさない。


もともと社長の機嫌ばかりを気にしている会社だ。

東京本社との電話で

「お疲れ様です」

の挨拶の次に交わされる会話は

「今日のボスの機嫌は?」

だ。

社内は常に社長の機嫌を伺いながら働いている。

社長の機嫌で社内の空気がガラッと変わる。

誰だって機嫌の悪い時はある。

人間なのだから


ただ出来るだけ出さない様に制御出来るのも人間。

となる社長は動物か?いや、独裁者だ!

気を遣わせるなら、あなた(社長)より得意先に気を遣わせろと言いたい。

僕たちは得意先にサービスを提供して成り立っているのだから


トップが社員の足を引っ張ってどうする!


そして、僕の重要感を示す3本目の太い糸が切れる時が来た。


つづく・・・