『アンの青春』訪問。 第17回目:双子ドーラとデイヴィの叔父さんからの手紙。
《四月のある金曜日の夕方、アンが郵便局から手紙を持って帰って来ます。途中、リンド夫人に合ってしまい、あやうく政党談義に引きずり込まれそうになるのですが、うまく逃れて》
―――アンはマリラ宛の手紙を持っていた。ブリティシュ・コロンビア州のある町の消印だったーーー
双子の叔父さんの住むイングリッシュ・コロンビア州とプリンス・エドワード島の位置関係
家に着くと、アンは興奮して言った。
「きっと、あの子たちの叔父さんからの手紙よ。マリラ、何て言ってきたのかしら?」
「それは開けてみるのが一番じゃないかね」:“The best plan might be to open it and see.”
マリラも興奮していたが、それを表には出さないようにそっけなく言った。
〈本文〉
[英語原文] Page 94, line6 from the bottom
※ Anne tore open the letter and glanced over the somewhere untidy(乱雑な) and poorly written contents.
“He says he can’t take the children this spring . . . . he’s been sick most of the winter and his wedding is put off(延期する). He wants to know if we can keep them till the fall and he’ll try and take them then. We will, of course, won’t we Marilla?”
“I don’t see that there is anything else for us to do,” said Marilla rather grimly, although she felt a secret relief.
“Anyhow they’re not so much trouble as they were . . . or else we’re got used to them. Davy has improved a great deal.
“His MANNERS are certainly much better,” said Anne cautiously, as if she were not prepared to say as much for his morals.
Anne had come home from school the previous evening, to find Marilla away at an Aid meeting, Dora asleep on the kitchen sofa, and Davy in the sitting room closet, blissfully absorbing(夢中にさせる) the contents of a jar of Marilla’s famous yellow plum preserves . . . “company jam,” Davy called it . . . . which he had been forbidden(禁じられた) to touch. He looked very guilty when Anne pounced on him and whisked(追い払った) him out of the closet.
“Davy Keith, don’t you know that it is very wrong of you to be eating that jam, when you were told never to meddle(いじくり回す) with anything in THAT closet?”
“Yes, I knew it was wrong,” admitted Davy uncomfortably, “but plum is awful nice, Anne. I just peeped(のぞき見する) in and it looked so good I thought I’d take just a weeny taste. I stuck my finger in . . .” Anne groaned . . . “and licked it clean. And it was so much gooder than I’d ever thought that I got a spoon and just SAILED IN(勢いよく始めた).”
[単語・語句の意味]
tore(tearの過去形;破る):glanced over(チラッと見た):untidy(乱雑な):poorly(下手に):contents(中身):put off(延期する;参考、postpone 延期する、日本人、put や take などで動詞をつくるのが不得手かも? ex) 頻出 take place ⇒ occur のこと ): keep(預かる): fall(秋;主に米国ではautumn):grimly(いかめしく):secret(人目につかない): relief(安堵):be used to(慣れた): MANNERS(行儀作法): cautiously(注意して):as if(まるで~であるかのように): morals(品行):Aid meeting(互助会):closet(戸棚), blissfully(この上なく幸せに): absorbing(夢中にさせる):jar(瓶):plum(セイヨウスモモ、プラム): preserves(砂糖で調理した保存果物;動詞、保つ、維持する):company jam(来客用ジャム): forbidden(禁じられた): pounced(飛びかかる):whisked(追い払った):meddle(いじくり回す、干渉する):uncomfortably(心地悪く;発音、アンコンフォタブリィ), :peeped(のぞき見する):weeny(ちっぽけな):groaned(うなってしまった):gooder(goodの比較級;子供の間違い? 普通は better):SAILED IN(勢いよく始めた)
[日本語訳] 今回は、中村佐喜子訳を提示してみます。
ページ157、8行目
※ アンは封を切って、らんぼうな下手な字の中味をすばやく読んだ。
「この春は子供たちを引き取れないって。――冬中ずっと病気していて、結婚ものばしたんですって。―--それでね、もし秋までこっちであずかってくれれば、それまでには引きとるようにするつもりだが、それでいいかどうかという問いあわせよ。 もちろんそれでいいわね? マリラ」
「ほかにどうしようがあるの」と不機嫌らしく言ったが、マリラは内心ほっとしたのだ。
「まあ前よりはずっと手がかからなくなったし、――こっちが馴れたというのかもしれないが。 デイヴィにしても、ずっとよくなったからね」
「お行儀はたしかによくなったわ」とアンは用心ぶかく言った。 道徳観念のほうは、保証のかぎりではないと言いたげに。
前の晩のこと、アンが学校から帰るとマリラは後援会に行って留守だった。 ドラは台所の長椅子でねむっていたが、デイヴィは居間の納戸にはいりこんで、マリラのご自慢のプラムの砂糖漬けを夢中でなめているところだった。 そのかめにさわっていけないと言われていたデイヴィは、それを『お客用ジャム』と言っていたのだが。――-アンがとんで行って納戸から引っぱり出すと、デイヴィはいかにも ばつの悪そうな顔だった。
「デイヴィ。あそこの納屋のものにはさわってはいけないと言われているのに、あのジャムを食べたりして、悪いと知らなかったの?」
「そりゃ知ってたよ」とデイヴィは不平そうに言った。 「だけどプラムのジャムってうまいね、アン。 ぼくね、ちょっとのぞいたら、うまそうだったからね、味だけためそうと思ったんだよ。 指をつっこんでね」――-アンはうめいた。 ――-「それをなめてみたんだ。 そしたら思ったよりずっとおいしいから、思い切ってスプーンをもってきて、やっちゃったんだよ」
[三人の翻訳の比較]
※ Anne tore open the letter and glanced over the somewhere untidy and poorly written contents.
“He says he can’t take the children this spring . . . he’s been sick most of the winter and his wedding is put off. He wants to know if we can keep them till the fall and he’ll try and take them then. We will, of course, won’t we Marilla?”
“I don’t see that there is anything else for us to do,” said Marilla rather grimly, although she felt a secret relief. “Anyhow they’re not so much trouble as they were . . . or else we’re got used to them. Davy has improved a great deal.
“His MANNERS are certainly much better,” said Anne cautiously, as if she were not prepared to say as much for his morals.”
MIによる逐語訳:For comparison
アンは手紙の封を切り、相当下手なくそな字で書かれた中身をざっと読んだ。
「彼は、この春には子供たちを引きとれないって言ってるわ・・・この冬は、ほとんど風邪にかかってたもんで自分の結婚も延期していたそうよ。 彼の提案では、この秋までは、こっちに二人の世話をお願いして、そのあと できるだけ子供たちを引きとれるように頑張ってみるから、ということみたい。 もちろん、それでいいわよね? マリラ」
「わたしは、かまわないよ。それに、ほかにどういう手があるのさ、私たちに」自分がほっとしているのを気づかれないように、厳めしい表情でマリラは言った。「ともかく双子も最近は、前ほど面倒をかけないし、・・・まあ、こちらが慣れたというのもあるけどね。 特にデイヴィの進歩はたいしたもんさ」
「彼のお行儀には、たしかに長足の進歩があるわね」デイヴィの品行に依然として問題があることなんか おくびにも出さないで、アンは注意深く同意した。
(399文字)
◎中村佐喜子訳:丁寧な翻訳。 ただ、避けられない 誤植。
※ アンは封を切って、らんぼうな下手な字の中味をすばやく読んだ。
「この春は子供たちを引き取れないって。――冬中ずっと病気していて、結婚ものばしたんですって。―--それでね、もし秋までこっちであずかってくれれば、それまでには引きとるようにするつもりだが、それでいいかどうかという問いあわせよ。 もちろんそれでいいわね? マリラ」
「ほかにどうしようがあるの」と不機嫌らしく言ったが、マリラは内心ほっとしたのだ。
「まあ前よりはずっと手がかからなくなったし、――こっちが馴れたというのかもしれないが。 デイヴィにしても、ずっとよくなったからね」
「お行儀はたしかによくなったわ」とアンは用心ぶかく言った。 道徳観念のほうは、保証のかぎりではないと言いたげに。
(318文字)
△松本侑子訳:かなり淡泊な翻訳?『赤毛のアン』の時とは大違い(2度目ーーしつこい?)
アンは封をやぶり、乱雑な悪筆に急いで目を通した。
「春になっても双子は引きとれないそうよ・・・冬はほとんど病気で、結婚も延期したんですって、だから秋まであずかってもらえまいかって、秋になったら引きとるつもりですって。 マリラ、もちろんあずかるわよね、そうでしょ」
「そうするしかないだろうね」マリラはむずかしい顔をしていたが、内心、安堵していた。 「あの子たちも前ほど悪さをしなくなったし・・・こっちが慣れたのかもしれないが、デイヴィは見違えるほど良くなったよ」
「お行儀は、たしかにぐっと良くなったわ」アンは用心して言った。 しかし素行のほうはまだほめるつもりはなかった。
(281文字)
⦿村岡花子訳: 活き活きした、すばらしい翻訳。
アンは封をきり、いくらか だらしのない、へたな字で書いてある中身に目をとおした。
「この春は、子供たちをひきとれないと言ってきたわ。―――冬じゅうほとんど病気だったので、結婚をのばしたのですって。 あたしたちに、秋まで、子供たちをあずかってもらえまいか、秋になればひきとるようにするからと、あたしたちの都合を問いあわせてきたのよ。 もちろん、あずかるわね、マリラ?」
「ほかにどうしようもないじゃないか」マリラはむすっとした顔で言ったが、内心ほっとしたのだった。 「なんにせよ、あの子たちも以前ほどは世話をやかせないようになったしね―――もっとも、わたしたちのほうでなれてしまったせいかもしれないがね。デイビー目立って良くなってきたよ」
「お行儀はたしかに良くなったわ」
アンは用心ぶかく、おこないのほうは知らないがという口ぶりをした。
(360文字)
[使用書籍]
1. Anne of Avonlea ペーパーバック – 2024/3/25
英語版 Lucy Maud Montgomery (著)
2.アンの青春 赤毛のアン・シリーズ 2 (新潮文庫) 文庫 – 2008/2/26
ルーシー・モード・モンゴメリ (著), Lucy Maud Montgomery (原名), 村岡 花子 (翻訳)
3.アンの青春 (文春文庫 モ 4-2) 文庫 – 2019/9/3
4.アンの青春 (角川文庫) 文庫 – 2008/4/25
モンゴメリ (著), 吉野 朔実 (イラスト), 中村 佐喜子 (翻訳)

