『赤毛のアン』再訪。 第74回目:アン、レドモンド大学に行かないことを決断する。
《マリラの眼が失明の淵にあるということを知ったアンは何か重大な決断をしたようなのです》
マシュウが亡くなってしばらくしてのある日、アンが帰ってくるとマリラがジョン・サドラーさんと話をしていた。
「ジョン・サドラーさん、何のご用事だったの?」
「わたしがグリーン・ゲイブルズを売るつもりだというのを聞いて、あの人は買いたいと言ってきたのさ」
「買いたいって? まさか、ここを売るって言うの!」
「ほかにどうすればいいというのさ? さんざん考えた末のことだよ」
「・・・・・・」
「それにしても、こうなってみると あんたが奨学金をいただいたのはありがたいことさね」
[英語原文] Page 418, line 5
Marilla broke down and wept bitterly.
‘You mustn’t sell Green Gables,’ said Anne resolutely.
‘Oh, Anne, I wish I didn’t have to. But you can see for yourself. I can’t stay here alone. I’d go crazy with trouble(心配事) and lonliness. And my sight would go(病状が進行する) – I know it would.
You won’t have to stay here alone, Marilla. I’ll be with you. I’m not going to Richmond.’
‘Not going to Richmond!.’ Marilla lifted her worn(やつれた) face from her hands and looked at Anne. ‘Why, what do you mean?’
※ ‘Just what I say. I’m not going to take the scholarship. I decided so the night after you came home from town. You surely(よもや) don’t think I could you alone in your trouble, Marilla, after all you’ve done for me. I’ve been thinking and planning. Let me tell you my plans. Mr Barry wants to rent the farm for the next year. So you won’t have any bother over that. And I’m going to teach. I’ve applied for the school here – but I don’t except to get it, for I understand the trustees have promised(契約する) to Gilbert Blythe. But I can have the Carmody School – Mr Blair told me so last night at the store. Of course, that won’t be quite as nice or convenient as if I had the Avonlea school. But I can board(食事をとる) home and drive myself over to Carmody and back, in the warm weather at least. And even in winter I can come home on Friday. We’ll keep a horse for that. Oh, I have it all planned out, Marilla. And I’ll read to you and keep you cheered up. You shan’t be dull(さえない) or lonesome(寂しい). And we’ll be real cosy(居心地の好い) and happy here together, you and I.’
参考:上記、I’ll be with you forever. 「わたしいつまでも、あなたと一緒よ」は素敵なフレイズです。
[単語・語句の意味]
broke down(brake downの過去形;壊れた):wept(weepの過去形、過去分詞、泣いた): bitterly(身を切るように):resolutely(ひと思いに):I’d (I wouldの短縮形):crazy(気が変で):trouble(心配事):lonliness(寂しさ):sight(視力):go(病状が進行する):won’t(will notの短縮形):worn(やつれた): scholarship(奨学金):surely(よもや) :after all(何といっても):trustees(理事会、評議会;発音、トラスティーズ) :promised(契約する): board(食事をとる):cheered up(元気づけた):shan’t(shall not の短縮形;きっと~でない) :dull(さえない、どんよりした;発音、ダル):lonesome(寂しい):cosy(居心地の好い)
[日本語訳]:今回は、松本侑子訳を提示してみます。
ページ439、7行目。
そう言うと、マリラはくずれ、激しく泣いた。
「グリーン・ゲイブルズを売ってはいけないわ」アンは心に決めたように言った。
「私だって、売らずにすめばと思うよ。でも、アン、あんたにも分かるだろ。この農場に一人で暮らしてはいけないんだよ。大変だし、寂しいしで、気がふれてしまうよ。目も悪くなるだろうしね、そうに決まっているよ」
「ここに一人で住まなくてもいいのよ。私も一緒に住むわ。レッドモンドへは行かないことにしたの」
「大学に行かないだって!」マリラは、両手でおおっていた泣き顔を上げ、アンを見つめた。「どうして、どういうことだい」
※「言った通りよ。奨学金はもらわないわ。 マリラが眼医者さんから帰った晩、決めたの。困っているマリラを残して行けるわけないでしょう。マリラにはとてもお世話になったのに。先々のことはちゃんと考えて計画を立てたのよ。 ねえ、私の計画を聞いて、うちの農場は、来年、バリーさんが借りたいと言っていたから、これは大丈夫よ。それから私は先生になるわ。アヴォンリー校に申しこんだけど、理事会はギルバート・ブライスと契約したそうだから、ここはだめかもしれないわ。でも、カーモディー学校なら勤められそうだって、昨日、ブレアさんが店で教えてくれたの。もちろんアヴォンリーの方が近くて便利だけど、雪のない間は、ここに住んで、カーモディーまで自分で場所に乗って通えるわ。冬になっても毎週金曜日にグリーン・ゲイブルズに帰るわよ。そのために、馬は置いておきましょうね。さあどう、マリラ、何もかも計画ずみなのよ。本だって私が朗読してあげるし、マリラを元気づけてあげるわ。退屈しないし、寂しくないわよ。 マリラと私、ここで一緒に、居心地よくして、楽しく暮らしていきましょうよ」
[三人の翻訳の比較]
※ ‘Just what I say. I’m not going to take the scholarship. I decided so the night after you came home from town. You surely don’t think I could you alone in your trouble, Marilla, after all you’ve done for me. I’ve been thinking and planning. Let me tell you my plans. Mr Barry wants to rent the farm for the next year. So you won’t have any bother over that. And I’m going to teach. I’ve applied for the school here – but I don’t except to get it, for I understand the trustees have promised to Gilbert Blythe. But I can have the Carmody School – Mr Blair told me so last night at the store. Of course, that won’t be quite as nice or convenient as if I had the Avonlea school. But I can board home and drive myself over to Carmody and back, in the warm weather at least. And even in winter I can come home on Friday. We’ll keep a horse for that. Oh, I have it all planned out, Marilla. And I’ll read to you and keep you cheered up. You shan’t be dull or lonesome. And we’ll be real cosy and happy here together, you and I.’
MIによる逐語訳:最近MIが変に学習したのか、無駄な言葉も散見?
「言った通りなの。わたし、奨学金はもらわないことにしたのよ。マリラが町から帰って来た夜、そう決めたの。こんな状態のマリラを一人にして置けるわけないでしょ? わたしに、こんなにも良くしてくれたマリラを。 いい考えがあるのよ、まあ、わたしの計画を聞いてくれない? 畑はバリーさんが借りたいそうなのよ、だから畑については心配ないの。 それでわたしは、先生になろうと思っているの。 わたし、ここの学校に申し込んだんだけど、そっちのほうはだめだったの、というのは当局はもうギルバート・ブライスと契約したそうなの。 でも、カーモディー校の可能性はあるの。昨晩、店で会ったブレアさんが そうおっしゃったの。 もちろんアヴォンリーに比べたら便利で最高とは言えないけれどね。 でも少なくとも、夏の間はここで生活し、カーモディーまでは馬車で行き帰りできるの。それで、冬だって金曜日には帰ってこられるわ。 だから馬は、処分しないで手元に置きましょ。 わたし、そう計画立ててるのよ、マリラ。 本だって読んであげられるし、元気づけてもあげられるわ。マリラはきっと、退屈もしないし、寂しくもないのよ。それで、私たち二人、ここでほんとに居心地よく幸せに暮らせると思うの」
(508文字) MI: Manual Intelligence
⦿松本侑子訳:コンパクトですばらしい翻訳。ただ、この部分、は微妙。
※「言った通りよ。奨学金はもらわないわ。 マリラが眼医者さんから帰った晩、決めたの。困っているマリラを残して行けるわけないでしょう。マリラにはとてもお世話になったのに。先々のことはちゃんと考えて計画を立てたのよ。 ねえ、私の計画を聞いて、うちの農場は、来年、バリーさんが借りたいと言っていたから、これは大丈夫よ。それから私は先生になるわ。アヴォンリー校に申しこんだけど、理事会はギルバート・ブライスと契約したそうだから、ここはだめかもしれないわ。でも、カーモディー学校なら勤められそうだって、昨日、ブレアさんが店で教えてくれたの。もちろんアヴォンリーの方が近くて便利だけど、雪のない間は、ここに住んで、カーモディーまで自分で場所に乗って通えるわ。冬になっても毎週金曜日にグリーン・ゲイブルズに帰るわよ。そのために、馬は置いておきましょうね。さあどう、マリラ、何もかも計画ずみなのよ。本だって私が朗読してあげるし、マリラを元気づけてあげるわ。退屈しないし、寂しくないわよ。 マリラと私、ここで一緒に、居心地よくして、楽しく暮らしていきましょうよ」
(468文字)
⦿村岡花子訳:自然で素晴らしい翻訳。このパラグラフはジニアスかも?
「ええ、あたし、奨学金はとらないことにしたのよ。マリラが町から帰って来た晩にそうしようって決めたのよ。どうしてマリラをひとりぼっちにしておけるものですか。どのくらいあたしのために、尽くしてくださったかしれないのに。もう、あたし、いろいろ考えたり計画をたてたりしているのよ。 まあ、聞いてちょうだい。畑のほうはバーリーさんが借りたいと言ってなさるから世話なしだし、あたしは教えようと思うの。ここの学校に申しこんでみたのだけれど、もうギルバート・ブライスにきまってるんですって。でもカーモディーの学校ならあるのよ―――ゆうべ、ブレアさんがお店で教えてくださったわ。アヴォンリーで教えるほどは、何かにつけて便利で好都合ってわけにはいかないけれど、家に住んで、カーモディーまでは馬車で毎日通えばいいわ。 あたたかいうちはね。冬になっても、毎週金曜日には帰ってこられるもの。だから馬は手放さないでおきましょう。ああ、マリラ、あたし、もうすっかり計画を立ててしまったのよ。それから、マリラに本を読んであげて、元気づけてあげるわ。退屈したり、さびしくなったりなんかしないわ。そうすれば、あたし、いつでもマリラといっしょにいられて、二人で楽しくやっていかれるわ」
(521文字)
○中村佐喜子:非常に端的な日本語にすれば(意訳すれば)、実はこんな感じの文章なのかも。ただ、この部分、は微妙。
「ただそれだけよ。奨学金を受けないことにしたの。あたし、マリラが町から帰ってきた夜、そう決心したのよ。あたしにあれだけつくしてくださったマリラを、一人放ってあたしが行けると思うの? マリラ。あたし計画をたててるのよ。まあ聞いてよ。畑はバーリイさん来年借りたいと言っているわ。だからその点は心配なしよ。そしてあたしはおしえるの。ここの学校に申し出てみたんだけどね、―――もう学校理事とギルバート・ブライスの間に話がついているらしく、見込みなさそうなの。でもカーモディーの学校なら行けるのよ、―――ゆうべ、ブレアさんがあの見せてそう話してくれたわ。あそこは、そりゃエヴォンリーで勤めることを思うと不便だし、いい学校でもないけどね。でも少なくとも温かい季節の間は、家から馬で通えるでしょ。冬の間は金曜ごとには帰れるわ。そのために馬は置くのよ。ねえ、これで見透しがつくじゃないの、マリラ。そしてあたしが本を読んだり、元気づけたりしてあげるわ。そうすれば退屈でもさびしくもないでしょ? ここで二人で、ほんとに楽しい幸福な生活をしましょうよ。ね?」
(466文字)
[使用書籍]
1.Anne of Green Gables (Puffin Classics) ペーパーバック – イラスト付き, 2008/9/11
英語版 L. M. Montgomery (著)
2.赤毛のアン 赤毛のアン・シリーズ 1 (新潮文庫) 文庫 – 2008/2/26
ルーシー・モード・モンゴメリ (著), 村岡花子(訳)
3.赤毛のアン (文春文庫 モ 4-1) 文庫 – 2019/7/10
4.赤毛のアン (角川文庫) 文庫 – 1957/11/30
モンゴメリ (著), Lucy Maud Montgomery (原名)
中村佐喜子(翻訳)

