『赤毛のアン』再訪。 第9回目。スペンサー夫人の誤解がもとでアンがグリーン・ゲイブルズによこされたのですが、夫人がマリラと話しているうちに 直ぐに 恐ろしい解決策が見つかります。

 

手伝いの子どもを欲しがっているブリュエット夫人が偶然そこに通りかかります。

 

「まあ、ブリュエットの奥さんがやってきます。こんな都合の良いことはありませんよ」

スペンサー夫人は叫んで、みんなを客間へ招き入れた。

 

そこでスペンサー夫人は、ブリュエットの奥さんに事情を話します。

 

ブリュエット夫人は、アンを 頭のてっぺんから爪先まで無遠慮に眺めてから・・・・言い放ちます。

 

「うーん、あんたには 見かけ以上のものは無さそうだね。 ただ、根性だけはありそうだ。 まあ、根性があるというのは 結局のところ一番なんだが」 という風に。

 

 

 [英語原文]  page 64, line 8 from the bottom

 

  ‘Humph! You don’t look as if there was much to you(見た目以上のもの). But you’re wiry(筋金入り).  I don’t know but the wiry ones are the best after all(結局のところ).

 

Well, if I take you you’ll have to be a good girl, you know ― good and smart and respectful(敬意を表する). I’ll expect you to earn(稼ぐ) your keep(生活費), and no mistake about that. Yes, I suppose(思う) I might as well(なお) take her off(彼女を引きとる) your hands, Miss Cuthbert.

 

 The baby’s awful fractious(むずかる), and I’m clean(すっかり) worn out(疲れ果てた) attending to him.  If you like I can take her right home now(right now,今すぐ).’

 

 Marilla looked at Anne and softened at the sight(眼差しを和らげる) of the child’s pale face with its look of mute(沈黙の) misery(みじめさ) – the misery of a helpless little creature(生きもの) who finds itself once more caught in the trap(わな) from which it had escaped.

 

※※ Marilla felt an uncomfortable conviction that(有罪の判決), if she denied(退ける) the appeal of that look(沈黙の訴え), it would haunt(捉える) her to her dying day(彼女の去りゆく日々).    

 

 

単語意味:

much to you(見た目以上のもの):wiry(筋金入りの、針金の、細い):after all(結局のところ):respectful(敬意を表する):earn(稼ぐ、もたらす):keep(生活費、生活必需品):suppose(仮定する、思う):as well(なお、おまけに): take her off(彼女を引きとる):fractious(すねる、むずかる):clean(すっかり): worn out(疲れ果てた、使い古した):right now(今すぐ):softened at the sight(眼差しを和らげる):mute(沈黙の、口のきけない): misery(みじめさ):creature(生きもの):trap(わな):conviction(有罪判決):denied(退ける、否定する):appeal of that look(沈黙の訴え):haunt(捉える):her dying day(彼女の去りゆく日々:参考、dying wish、遺言

 

 

 

[日本語訳] 村岡花子訳より。ページ82、1行目

 

「フム、たいして見ばえはしないが、しんは強そうだね。結局は、しんの強いのがいちばんさね。 よろしい わたしがひきとるとしたら、いい子でなけりゃだめだよ―――いい子で、りこうで、行儀正しくね。 

 

食べさせてやるんだから、それだけの働きしなくちゃね。それだけは まちがわないようにね。 じゃあ、クスバートさん、この子はひきとりましょう。 

 

あかんぼが ひどくむずかりますんでね。 もうもうやりきれません。 なんなら、このまま、この子を家へ連れて行ってもよござんすわ」

 

 アンのほうを見やったマリラの心はうたれた。 真っ青の顔のみじめさ。 どうしょうもない小さな生きものが やっとぬけだしたわなに またもやつかまった感じだった。 

 

マリラはこの無言の訴えをしりぞけたなら、残る生涯の最後の日まで この顔つきが目から離れないだろうという気がした。

 

 

 

 

三人の翻訳の違い。

※ Humph! You don’t look as if there was much to you. But you’re wiry.

 

◎村岡

フム、たいして見ばえはしないが、しんは強そうだね。

 

○中村

ふーむ。たいして役に立ちそうにもみえないがね。しかし、しんはあるようだね。

 

▲松本

ふん! 見てくれはたいしたことないが、やせて丈夫そうだ。

 

ここは、村岡の訳が原文をうまくとらえていると思います。 松本さんは誤訳に近いかも? 

 

 

※※ Marilla felt an uncomfortable conviction that, if she denied the appeal of that look, it would haunt her to her dying day.  

 

◎◎村岡

マリラはこの無言の訴えをしりぞけたなら、残る生涯の最後の日まで この顔つきが目から離れないだろうという気がした。

 

○松本

マリラは良心の呵責に苛まれた。この無言の訴えを退けたら最後、死ぬ日までこの子の顔がちらついて離れないだろう。

 

▲中村

マリラは、もしその無言の訴えをしりぞけたなら、きっとそれに生涯つきまとわれるだろうと思って、不気味になった。

 

ここも、村岡の訳が原文を的確にくみ取り、かなり上手な日本語に変換していると思いました。個人的には、中村さんの訳が笑っちゃうくらい素敵だと思います。

         Take a coffee?!

 

[参考書籍]

1.Anne of Green Gables (Puffin Classics) ペーパーバックイラスト付き, 2008/9/11

英語版  L. M. Montgomery ()

 

2.赤毛のアン 赤毛のアン・シリーズ 1 (新潮文庫文庫 – 2008/2/26

ルーシー・モード・モンゴメリ (), 村岡花子(訳)

 

3.赤毛のアン (文春文庫  4-1) 文庫 – 2019/7/10

LM・モンゴメリ (), 松本 侑子 (翻訳)

 

4.赤毛のアン (角川文庫文庫 – 1957/11/30

モンゴメリ (), Lucy Maud Montgomery (原名)

中村佐喜子(翻訳)