『赤毛のアン』再訪 第7回目。 マリラは、女の子を間違えて世話したスペンサー夫人のもとへとアンを連れて帰ることにします。

 

マシューが門に寄りかかって、寂しげに馬車のふたりを見送っています。

 

その馬車でのドライブ中、アンは何かを吹っ切ったように自身のこれまでをマリラに説明します。

 

[英語原文]  page 52, line 3

 

 ‘Do you know,’ said Anne confidentially, ‘I’ve made up my mind to enjoy this drive.  It’s been my experience that you can nearly always enjoy things if you make up your mind firmly that you will

 

Of course, you must make it up firmly, I am not going to think about going back to the asylum while we’re having our drive.  I’m just going to think about the drive. 

 

Oh, look, there’s one little early wild rose out!  Isn’t it lovely?  Don’t you think it must be glad to be a rose?  Wouldn’t it be nice if roses could talk? 

 

I’m sure they could tell us such lovely things.  And isn’t pink the most bewitching colour in the world?  I love it, but I can’t wear it. 

 

※※Red-headed people can’t wear pink, not even in imagination.  Did ever know of anybody whose hair was red when she was young, but got to be another colour when she grew up?’   

 

 

 

単語意味:

confidentially(内々に、ないしょで:参考、confidence信頼; 記憶方法、内々の話には信頼がmade up(決める;make upthings(物事)you will(自身が望むことを)firmly(固く、強く)asylum(孤児院)wild rose(野バラ)to be a rose(バラになれて)lovely things(すてきな事、嬉しい事)bewitching(魅惑的な:参考、witch, 魔法、魔術imagination(想像)anybody(だれか)grew up(成長して)

 

 

[日本語訳] 今回は、松本侑子訳より。ページ60、2行目(最初から)

 

「あのね、おばさん」アンは、秘密を打ち明けるように言った。 「私、このドライブを楽しむことに決めたわ。私の経験から言うと、物事は楽しもうと思えば、どんな時でも楽しめるものよ。 

 

もちろん、楽しもうと固く決心することが大事よ。 とにかく、着くまでは孤児院のことは考えないことにして、馬車のドライブを存分に楽しむわ。 

 

ほら、見て、小さな野薔薇が一輪、咲いている。 きれいね。 あの花は、自分が薔薇で良かったと、きっと喜んでいるに違いないわ。 

 

もし薔薇が口をきいたら、すてきでしょうね。 とても愛らしいことを話してくれると思うの。 ピンクは、この世でもっとも魅力的な色ね。 大好きよ。 でも私には着られないの。 

 

※※赤毛がピンクを着るなんて、たとえ想像の中でも無理だわ。 おばさん、赤毛の子どもが、大きくなって髪の色が変わった話を聞いたことがある?」

 

 

 

[三人の翻訳の違い(1. は、あまりに瑣末?)]

 

スコットランド系とイングランド系の祖先を持つカナダ人であるモンゴメリにとっては、「薔薇」というのは とても 「こだわりのある花」 だと思います。

 

:1.「one little early wild rose」の翻訳の仕方について。

 

◎松本は、「小さな野薔薇が一輪」

 

○村岡は、「早咲きの小さなばらが」

 

△中村は、「早咲きの野ばら

 

 

本来は、言うまでもなく「早咲きの小さな野薔薇が一輪」なのですが。なぜか三人とも省略をし、しかも省略している部分が各々違うことは ちょっと興味深い。わたしは、「one」としているのですから「一輪」は必須と考えます。

 

加えて、「wild rose」 の訳としては、「野薔薇」「野ばら」「野バラ」が出てきますが、どれがふさわしいと思いますか? わたしは、ここでは漢字の「野薔薇」しかないと思いました。

 

 

※※:2.「Red-headed people can’t wear pink, not even in imagination.」の翻訳の仕方について。

 

○松本:「赤毛がピンクを着るなんて、たとえ想像の中でも無理だわ」

 

◎村岡:「赤い髪をした者はたとえ想像でもピンクのものは着られないのよ」

 

○中村:「赤毛にはピンクはだめだわ。考えるだけでもだめだわ」

 

わたし:「赤い髪をした者はピンクの服は着られないの、たとえ想像の中でもね」

 

 

中村さんの訳は、総じて庶民的で 良い意味で “ラフ” です。

 

 

追記:

今回の始まり、「 ‘Do you know,’」は、普通はもちろん「おばさん、知ってる?」ですけど。

 

松本:「あのね、おばさん」

村岡:「あたしね、・・・」

中村:「ねえ、あたし、・・・」

 

と翻訳しております。皆さん、じょうず ですよね。

 

                      巨大サンマ(なのですよ!!) を狙う パラサウロロフス

 

 

[参考書籍]

1.Anne of Green Gables (Puffin Classics) ペーパーバックイラスト付き, 2008/9/11

英語版  L. M. Montgomery ()

 

2.赤毛のアン 赤毛のアン・シリーズ 1 (新潮文庫文庫 – 2008/2/26

ルーシー・モード・モンゴメリ (), 村岡花子(訳)

 

3.赤毛のアン (文春文庫  4-1) 文庫 – 2019/7/10

LM・モンゴメリ (), 松本 侑子 (翻訳)

 

4.赤毛のアン (角川文庫文庫 – 1957/11/30

モンゴメリ (), Lucy Maud Montgomery (原名)

中村佐喜子(翻訳)