『赤毛のアン』Re-visited. 第6回目です。 間違いでグリーン・ゲイブルズ にきてしまったことがわかり涙にくれたアンですが、一晩寝て少し気分も回復します。

 

朝食時、アン得意のおしゃべりが始まるのですが。

「お願いだから。黙っておくれ」とマリラに注意されます。

 

アンは素直に口を閉じ、物想いに耽り、まるで機械のように口を動かし食事を終えます。

 

 

[英語原文]  page 47, line 7

 

When the meal was ended, Anne came out of her reverie and offered to wash the dishes.

 

'Can you wash dishes right?'  asked Marilla distrustfully.

'Pretty well, I’m better at looking after children, though.

I’ve had so much experience at that.   It’s such a pity you haven’t any here for me to look after.'

 

' I don’t feel as if I wanted any more children to look after than I’ve got at present.  You’re problem enough in all conscience.  What’s to be done with you I don’t know.  Matthew is a most ridiculous man.'

 

'I think he’s lovely,' said Anne reproachfully.  'He is so very sympathetic.   He didn’t mind how much I talked – he seemed to like it.  I felt that he was a kindred spirit as soon as ever I saw him.' 

 

 'You’re both queer enough, if that’s what you mean by kindred spirits,' said Marilla with a sniff.    

 

 

単語意味:

reverie(白昼夢:スージー・クーパーに同名の茶器あり;白昼夢は、daydream の方が有名です):came out (醒めた):distrustfully(疑わしげに):though(とはいえ):at that(そのうえ、さらに):pity(哀れむ、同情する):look after(面倒を見る):conscience(分別、良心:発音;カンシャンス):ridiculous man(おかしい男、ばかな男):reproachfully(とがめるように:発音、リプロウチフリィ):sympathetic(思いやりのある;参考、sympathetic nerve, 交感神経; parasympathetic nerve, 副交感神経):kindred spirit(同類の魂;発音、キンドリッド・スピリット):queer(奇妙な):sniff(鼻でフン! とやること)

 

       レバリィー:白昼夢

 

[日本語訳] 今回は、松本侑子訳より。ページ55、後ろから3行目

 

 食べ終わると、アンは夢から醒め、「皿を洗いましょうか」とすすんで言った。

 

「ちゃんと洗えるかね」マリラが訝しんで聞いた。

「とても上手よ。子守ならもっと得意よね。何しろ慣れているもの。 この家に、私があやすような子どもがいなくて、残念ね」

 

「これ以上、手のかかる子どもなんかいりませんよ。 あんたで充分手を焼いているんだから。あんたをどうしたものかねえ。マシューも困ったひとだよ」

 

「あら、おじさんはいい人よ」アンは 口を尖らせた。 「思いやりがあって、私がどんなにしゃべってもうるさがらないで、むしろ喜んで聞いてくださったわ。 一目見た時から、私たち、心の同類 だと思ったわ」

 

「あんたたちが、その 心の同類 とやらだとしたら、それは二人とも変わり者だからだよ」マリラは鼻であしらった。

 

 

 

※:三人の翻訳の違い;

 

「kindred spirit」の翻訳の仕方について。

 

 

松本は、kindred spirit に「心の同類」という特定の語句(名詞句)を与えております。

これは「気が合う」として会話文の中に埋没させた村岡、中村とは一線を画しておます。

わたしは松本訳を好ましく感じました。

 

ただ私なら、kindred spirit の訳として、素直に「同類の魂」とします。

 

というのは、「spirit」「心」と訳すことに違和感を感ずるのです。やはり「spirit」には ワン・ランク上の「魂」という訳が良く似合うのです。 「富士には月見草がよく似合う」と同じです。

 

 

追加情報:

赤毛のアンには、「kindred spirit」に類似の、「bosom friend」という語句があり、松本、村岡はいずれも「腹心の友」と訳しているのに対して、中村は「腹心の友だち」とか普通に「親友」と訳している。

 

「bosom friend:腹心の友」は、「kindred spirit:心の同類」より有名です。

 

 

マシューとアンの二人には「kindred spirit」「同類の魂」があり、

アンとダイアナには「bosom friend」「腹心の友」という語句が良く似合う。

 

 

 

[参考書籍]

1.Anne of Green Gables (Puffin Classics) ペーパーバックイラスト付き, 2008/9/11

英語版  L. M. Montgomery ()

 

2.赤毛のアン 赤毛のアン・シリーズ 1 (新潮文庫文庫 – 2008/2/26

ルーシー・モード・モンゴメリ (), 村岡花子(訳)

 

3.赤毛のアン (文春文庫  4-1) 文庫 – 2019/7/10

LM・モンゴメリ (), 松本 侑子 (翻訳)

 

4.赤毛のアン (角川文庫文庫 – 1957/11/30

モンゴメリ (), Lucy Maud Montgomery (原名)

中村佐喜子(翻訳)