『赤毛のアン』再訪。 第4回目です。マリラ・カスバート驚く。

    Marilla Cuthbert  Surprised.

 

マリラは、マシューが女の子をつれているのを見てびっくりしてしまいます。

 

 

[英語原文]  page 32, line1

 

 Marilla came briskly forward as Matthew opened the door.  But when her eyes fell on the odd little figure in the stiff, ugly dress, with the long braids of red hair and the eager, luminous eyes, she stopped short in amazement.

 

 ‘Matthew Cuthbert, who’s that?’ she ejaculated.  ‘Where is the boy?’

 ‘There wasn’t any boy,’ said Matthew wretchedly.  ‘There was only her.’  

 

 He nodded at the child, remembering that he had never even asked her name.

 

‘No boy!  But there must  have been a boy,’  insisted Marilla.  ‘We sent word to Mrs Spencer to bring a boy’. 

 

 ‘Well, she didn’t.  she brought her.  I asked the stationmaster.  And I had to bring her home.  She couldn’t be left there, no matter where the mistake had come in.’ 

 

‘Well, this is a pretty piece of business!’  ejaculated  Marilla. 

 

 

 

単語意味:

briskly(きびきびと):odd little figure(奇妙な子ども):stiff(ぴんと張った、硬い):braids(編み上げ):eager(熱心な):luminous(輝く):stopped short(立ち止まる):amazement(驚いて、驚愕):wretchedly(哀れに):nodded(うなずく):insisted(主張する):sent word(告げる、知らせる):stationmaster(駅長):no matter(間違いなく):pretty (かなり):business(要件;参考、It’s not your business!  「お前の知ったこっちゃないぜ!」喧嘩になりますので使用注意):ejaculated(叫ぶ)

 

 

 

[日本語訳] 今回は、中村佐喜子訳より。ページ40、8行目

 

 マシューがドアをあけると、マリラはいそいそと出迎えた。けれどそこに見苦しいつまった服を着て、赤毛を二本に編みさげ、くい入るような眼を輝かせているへんな子どもの姿をみとめると、驚いて突っ立った。

 

 「マシュー、それは誰です?」といきなり言った。「男の子はどこ?」

 「男の子はいなかったんだよ」とマシューはしおれて言った。「この子がいただけだよ」

 

彼は、まだ名前を聞いていなかったと思いながら、子供の方を眼顔でさした(それとなく見ること

 

「男の子がいなかったって? いいえ、必ずいたはずですよ」とマリラは言いはった。 「わたしたちはミセス・スペンサーに、男の子を連れてきてくださいと頼んだのですから」

 

 「うん、それがそうではなかったんだよ。 あの奥さんが連れてきてくださったのは、この子だったよ。 駅長にも聞いたんだがね。 それで家に連れてきたよ。 まちがいだとしても、この子をあすこに放ってはこれないと思ってね」(あすこ「あそこ:彼処の音変化

 

 「まあ、厄介なことになりましたね!」と、マリラが遠慮なく言った。

 

 

 

三人の翻訳の違い;

 

※:1. ‘No boy!  But there must  have been a boy,’  insisted Marilla.  ‘We sent word to Mrs Spencer to bring a boy’. について。

 

中村:

「男の子がいなかったって! いいえ、必ずいたはずです」と、マリラは言いはった。 「わたしたちはミセス・スペンサーに、男の子を連れてきてくださいと頼んだのですから」

 

松本:

「男の子がいなかったですって! そんなはずはありませんよ。スペンサーの奥さんに、男の子をと、ちゃんと言づけたんですからね」

 

村岡:

「男の子はいなかったんですって? いなくちゃならないはずじゃないの。男の子をよこしてくださいって、スペンサーの奥さんに、ことづけしたんですもの」

 

 

Insist(主張する) は、かなり強めの言葉です。 ですから松本、村岡のように、簡単に省略していいような単語ではないと思うのですが? しかも、前で使っている must がイタリックになっており、これもある種の強調です。

 

それから、村岡さんの、「男の子はいなかったんですって?」 も悪くはないと思いますが、しかし・・・全体の緊張感が。 「んーん、どうでしょうか?少し失われるような気が」(長嶋監督の口調で

(言い方は少し変ですが、以後も中村のマリラは、’長屋のおかみさん風’、村岡のは、’山手のお母さん風’、そして松本はその中間で、’普通のお母さん風’ な感じがします)

 

*:2.ほぼ同じパラグラフ内にある、二ヶ所の ‘ejaculated ’ の訳について。

三人とも、訳し方を微妙に変え、日本語の良点を十全に活用している?

 

中村:①いきなり言った。 ⓶遠慮なく言った。

 

松本:①思わず口走った。 ⓶声を張り上げた。

 

村岡:①叫んだ。 ⓶言った。

 

ejaculate,  ejaculation は「射精する、射精」の方が、良く知られているかも知れません。 科学用語として。

 

 

 

[参考書籍]

1.Anne of Green Gables (Puffin Classics) ペーパーバックイラスト付き, 2008/9/11

英語版  L. M. Montgomery ()

 

2.赤毛のアン 赤毛のアン・シリーズ 1 (新潮文庫文庫 – 2008/2/26

ルーシー・モード・モンゴメリ (), 村岡花子(訳)

 

3.赤毛のアン (文春文庫  4-1) 文庫 – 2019/7/10

LM・モンゴメリ (), 松本 侑子 (翻訳)

 

4.赤毛のアン (角川文庫文庫 – 1957/11/30

モンゴメリ (), Lucy Maud Montgomery (原名)

中村佐喜子(翻訳)