「コーヒー おかわりしないのか?」
そう言われたので2人分のおかわりをカウンターで受取り少し深めのソファーに腰を下ろす。
そして鈴木氏は再びワンステップフェスティバルについて話し出した。
「堂前の寿司屋で初めてワンステップの話を聞きボディーガードの依頼を受けた。初代の会長は少し焼もちを焼いたのか面白くない顔をしていたが、何かひとつ良い事をやりましょう。という事で話はまとまった」
報酬はなく 〇に東と書かれた腕章を作ってもらう事がたったひとつの条件だった。
「ノーギャラなんですか?腕章だけ?」
「そうだ。それだけだ。だから佐藤三郎は相当助かったと思うぞ」
そして当日
なんと鈴木氏の最初の仕事は小野洋子のセキュリティーだった。
「えっ!いきなり小野洋子ですか?」「そう。やっぱり皆見たいだろ?ビートルズと結婚した日本人で世界中が知ってる有名人だ。それこそ変な野郎がわんさか集まって来た」
その小野洋子から耳を疑う依頼を受ける。なんとパンティーを300枚用意してほしいと言うのだ。
「それをステージからブン投げるというんだよ。妙な事するなと思ったが・・・」
卸団地の金大(カネダイ)に行き300枚のパンティーを集めた。
客と東北連合の間でトラブルはなかったのだろうか?どう見てもガードマンには見えなかっただろうし。
「そりゃ沢山あった。こっちは舐められちゃいけないと思うから どけコラ!と荒い口調で言うわな。すると向うもなんだテメーって まぁそうなるわ。だからそっちこっちでイザコザ 小競り合いがあった」
小野洋子は当時から内田裕也と親交がありいつも行動をともにしてたそうだ。
「内田裕也は紳士だった。その辺は矢沢と大違いだ」
今でも矢沢永吉と内田裕也は仲は良くないらしい。そしてそもそもはワンステップの楽屋で起きた事が発端だとも。
血の気の多き若者達が集まれば・・・ そこに鈴木氏も加わり・・・
そりゃ大騒動になった事でしょう。
「そう言えばダウンタウンブギウギバンドとも喧嘩したなぁ」
セキュリティーの人間がアーティストと喧嘩するって・・・
「当時はそんな事許された時代なんですかね?」
「いや。佐藤三郎は立場がなかっただろうよ」
「・・・・」
「何でそうなったかは忘れたが完全に矢沢が悪かった。あいつは行儀が悪すぎた。まぁ朝鮮人だからしょうがねぇんだろうな。でオレと矢沢の間に入ったのが所ジョージのマネージャーだった」
そんなワンステップの一件があったにも関らず矢沢永吉は東北連合にボディーガードを依頼する。
「それが例の矢沢を刺す!って話ですか?」
「そう。矢沢がソロになって初めて野外でコンサートを菅生(宮城県)でやるという事になったんだ」
野外コンサートはどうしても成功させたかった。それを失敗するとその後のソロワークに大きく影響する。そのぐらいの一大イベントだった。
そしてそのコンサートに宮城の暴走族「けむり」が「矢沢を刺す!」と騒いでいたらしい。
噂はドンドン大きくなり本人の耳にも入る。
東北連合は矢沢を守るべく菅生のステージへ向かった。
そしてコンサートが始るとすぐ「けむり」を発見。
「やめろ!」「なんだこの野郎!」の大騒動。当然客席での出来事だ。観に来たお客さんもパニックになっただろう。
しかし
「東北連合の鈴木だ」
その一言で「けむり」は大人しくなった。
そしてコンサートは無事終了。
「矢沢からお礼の言葉も連絡も一切ない」
「そういう男だって事だ」
そういえば以前 風とロックに矢沢永吉の出演が決まっててドタキャンするという事があった。
「シークレットなのに事前に名前が漏れていた」のがキャンセルの理由だと聞いた。
もしかして 矢沢永吉は今でも・・・
「ああ たぶん俺の事 怖がってるんだろ?」
ところで
小野洋子とはどんな人だったのだろう。
「良い人だった。最後に何かお礼をしたいとも言われた」
「凄いですね。何かもらったんですか?」
「それが俺はダメなんだよ・・・ 小野洋子・・・ タイプじゃないと言うか・・・ 気持ち悪かったんだよ」
キャロルはどうでした?
「う~む ステージ前はリーゼントにしてないのが不満だった。結局奴等にとってリーゼントはファッションでしかないんだな。俺らにとっては魂だったから髪を下ろしてるのを見た時はガッカリした」
そして鈴木氏は少し嬉しそうな顔をして・・・
「本物のリーゼントはCOOLSだけだった」
そう言うとスターバックスのコーヒーを一気に飲み干した。
