COOLS
若い奴でも名前ぐらいは知ってるだろう日本のロックンロールバンドだ。
グループサウンズ以後、日本にはROCKと呼ばれる音楽はとても乏しかった。
ニューミュージックとか歌謡曲とかママゴトみたいな音楽ばかりで何の刺激にもならねい。
そんな中70年代の中頃に突如現れたのがCOOLSだ。
明らかに他とは違う不良オーラ。それでいて本気で音楽をやってる意志も伝わってくる。
「あーこいつらは本物だ。そして俺達と同じ匂いがする」
当時は長髪にラッパズボン履いて8~15分ぐらい演奏するのが主流だった。それなのに50sのように革ジャンにリーゼントで演奏もスパッと3~4分。
男なんだか女なんだか分からないような髪型にうんざりしてた俺は次第に彼らにのめり込んで行き東北連合の連中を引き連れて身辺警護をするようになった。
リーダーの舘ひろしを始めそれぞれが個性的で見事にバランスのとれた不良然としたルックスは当時の暴走族の憧れでありハクをつけようと喧嘩を売って来る連中の標的でもあった。
そのメンバーの中に水口晴幸。通称ピッピがいる。
もう40年来の付き合いになるのだろうか?親友というより相棒という方が近いかも知れないし、ある意味俺の女房よりも俺の事をわかってる奴だ。
次第に親しくなって東京のピッピの部屋で朝まで話し込んでは雑魚寝して!なんて事をよくやっていた。
楽しかった。
若かったし悪さもすれば女や喧嘩なんて日常茶飯事だったが・・・
楽しかった。
そんな噂をどっからか聞いて来たのだろうか、ピッピの部屋には次第に人が集まるようになり横山剣や当時チョッパーの店長だった太(ふとし)も来ていた。
ある日の事 太がボソッと漏らした。「秀光さんが酷いんですよ」
秀光とはCOOLSのドラマーでチョッパーのオーナー。
結成時から何かと面倒な男でもあった。
「秀光がどうした?」
どうやら秀光は修学旅行で地方からやって来る子供らに「これピッピが同じモノ使ってる」とか言って騙してるというのだ。
太が「ヤバクないですか?」と言っても「どうせバレやしねぇ」と。
まぁ秀光はそういう奴だった。
そんな秀光が危うく命拾いする出来事があった。
それは同じ時期チョッパーで働いていた伊藤という店員が秀光にぶっ飛ばされるという事件が起きた。
その話を聞いた「極悪」の連中が騒ぎだした。
5~6人が青タンに顔を腫らせた伊藤をピッピの部屋に連れて来た。
「これ見て下さい。いくら何でも酷すぎるじゃないですか!今から秀光のところに行って東京湾に沈めて来ますから」
まさかと思ったがその凄い剣幕に本当にやりかねないと思った。
しかし当時のCOOLSは大事な時。トラブルが表沙汰になったら一大事だ。
俺とピッピは必死で極悪の連中を説得した。
「頼む。この一件は俺とピッピに預けてくれ」
すると「伊藤!お前はそれで良いのか?」
ピッピのファンでここで働けばピッピに会えると思ってチョッパーで働いてたぐらいの男だ。
「自分のために申し訳ないです。宜しくお願いします」と伊藤。
すぐさま秀光のところに行き謝罪させ事なきを得た。
あの時、俺とピッピが動いてなかったら秀光はこの世にいないどころかCOOLSも活動してなかったかも知れない。
仲間のためには体を張るピッピ。
俺とピッピは益々絆が深くなって行くのを感じていた。
もっとも当の本人、秀光はそこまで深刻に周りが騒いでいた事など知らなかっただろうしあの野郎はその後
仲間を裏切る大事件(窃盗)を起こす。それはまた後日詳しく書く事にしよう。
ぶっ飛ばすと言えば・・・
この俺もCOOLSのメンバーをやっちまった事がある。
それは俺ら東北連合が郡山に当時あったセントラルホールでCOOLSのコンサートを主催した時の事だ。
セントラルホールはプロレスの興行もやるような会場で1000人ぐらい入る大きなハコだった。
俺らは頑張ってチケットを売り何とか満員に出来るまで売りさばいた。
当日のタイムテーブルを見るとリハ終了から本番まで結構な空き時間がある。
狭くて汚いセントラルホールの楽屋で冷めた弁当食わすより出来立てで温かい料理を食べさせてやりたい。
そして他のどの地方よりも郡山のコンサートはよかったと言ってもらえるようなパフォーマンスをしてもらいたい。
そんな気持ちもあり俺は知りあいのレストランを貸し切った。
タクシーに各自分乗して10分ぐらいで着くレストランへ向かう。どうやらピッピは支度が遅れて後から追っかけるらしい。
タクシーを走ら間もなく着く頃にヴォーカルの村山がボソッと言った。
「チッ面倒くせー こんなとこ来る必要なんかねェーんだよ」
その言葉を俺が許すはずもなく、「何だとこの野郎。もう一回言ってみろ」。
俺は村山の胸ぐらを掴み髪を引っ張ってブン投げる。さらには持っていたボールペンで顔を何度か突いていた。
「ヤッシー何やってんだよ!」
遅れて到着したピッピが慌てて俺を止める!
血だらけの村山は怯えながらレストランに逃げるように入っていった。
「ヤッシーいったいコレはどういう事なんだよ。教えてくれ何があったんだよ」
そういうピッピに俺は
「その前にひとつだけ約束してくれ」
「なにを?」
「いいから約束してくれ!」
俺達2人は絶叫しながらにらみ合っていた。
つづく
