将棋は、負けを認めた方が投了して終了するゲーム。
その投了時に発する言葉が、
「負けました」
この「負けました」はアマチュア、プロ、大人だろうが子供だろうが敗者が必ず口にする言葉。
そう、あの藤井二冠も渡辺三冠も負けた時は、必ず口にしているのだ。
昨日の将棋大会、低学年の部決勝戦。
昨年決勝で涙した三年生君と新生一年生君の低学年県代表をかけた一戦。
力的には互角。
道場の段位では三年生君が一つ上。
対局が始まった。
中盤でミスをした三年生君が一年生君に押されていく。
私が見た時はすでに一年生君の勝勢だった。
それでも必死に粘る三年生君。
敗勢の局面から、最善と思われる手を考え指し続ける。
だが、その時が刻々と迫ってくる。
詰み
三年生君はどんな思いだったろう。
昨年は二年生ながら決勝まで進み、一学年上の三年生に挑み敗退。
人目もはばからず号泣していた。
それから一年。
道場に通い続け段位を上げ、力をつけていった。
今年は低学年代表の最後のチャンス。
本大会は優勝候補だった。
「負けました」
ふり絞った声はかすれていた。
でも、はっきり聞こえた。
大きな声だった。
私は胸が熱くなった。
期待されていただろう。
昨年同様の決勝の舞台。
相手は二学年下の一年生。
一生懸命やったが、負けた。
悔しかったろう。
残念だったろう。
でも、
対局者として、責任を持って、
負けた自分を認め、
勝った相手を敬い、
低学年決勝戦という舞台を締めてくれた。
大きな声で、「負けました」という言葉で。
本人はそんな事など意識していなかったかもしれないが、立派な「負けました」だった。
この姿勢は相手の一年生君にも伝わったと思う。
その後三年生君は大号泣だったが、最後まで一生懸命将棋に向き合った三年生君に拍手を送りたい。
将棋をやる意味。
勝つことよりも、強くなることよりも、もっと大事なことがある。
そんな事を改めて感じたひと時だった。