PARCO劇場で上演中の、蓬莱竜太作・演出『シャイニングな女たち』を観てきました。
先日、WOWOWで放送された『おどる夫婦』が面白かったので、大きな劇場での蓬莱さんの作品を観てみたいと思って、チケットをとりました。
出演者は、女性7人と男性1人。
蓬莱さんご本人もよく言われるそうですが、ほんとに女性心理を描くのが巧みで…なんでそんなに女性の気持ちや女性同士のあれこれがわかるの?と思いつつ、視点や場面が変わるスピーディな展開には大いに惹きつけられました。
心理描写のリアルさもあいまって、ところどころ胸が痛む場面もありましたが、彼女たちの姿に、この不確かな世界を生き抜く覚悟と力を見た気がします。
いや、というより、そうであってほしいという彼女たちへの、自分自身への祈りだったのかもしれません。
以下、ネタバレありの感想ですので、未見の方は自己判断のもと、お読みください!
2025年12月14日(日)14時
PARCO劇場
作・演出 蓬莱竜太
出演 吉高由里子 さとうほなみ 桜井日奈子 小野寺ずる 羽瀬川なぎ 李そじん 名村辰 山口紗弥加
ホテルで開催されている他人の「お別れの会」にもぐりこんで、ビュッフェを食べて帰ることを楽しみとしている金田(吉高由里子)ーこの時点で、胸にひっかかりを覚えましたがー
ある日、もぐりこんだ「お別れの会」で、かつて自分がキャプテンをしていた大学のフットサルのチームメイトと遭遇してしまいます。
遺影には、かつての後輩の白澤(桜井日奈子)の姿が…
なぜ、自分だけ、白澤の「お別れの会」に呼ばれなかったのか?
場面変わって、大学時代。
金田は、2011年の東日本大震災の4か月後に、女子サッカーワールドカップで優勝した「なでしこ」の姿に感銘を受け、自分もサッカーをやる!と思い立ちます。
このあたり、金田の単純さや無謀さ、他人を巻き込んでいく強引だけれども明るいパワー、同時にそうせざるを得ないほどに震災が与えた金田への影響を感じさせましたが、
中学時代からの親友の山形(さとうほなみ)とともに未経験の学生たちをスカウトし、女子サッカー経験者の川越(山口紗弥加)を顧問に迎え、人数が少なくてもできるフットサル部を発足。
怪我で選手生命を絶たれた悔しさを厳しすぎる指導をすることではけ口にしている顧問の川越の態度には批判的な気持ちになりましたが、
時にボールを蹴り、時にマイムで表現しながら、はじめはボールを触ったこともなかった彼女たちが、徐々に生き生きとしていくところは、観ているこちらも楽しくなりました。
けれども彼女たちそれぞれに抱えているものもあり、ある時は自分自身のことを、ある時は別の者の心情を代わりに語り、と、ところどころで視点を変えながら、本心を語っていました。(いやだからなんでそんなに女性心理に詳しいの?蓬莱さん)
やがて、はじめは内気でおどおどしていたのにめざましく上達した白澤が、金田のポジションを脅かすまでになったことから、金田のとる態度が変わっていき、部内のムードが険悪になっていきます。
そして、金田の白澤に対する嫉妬心や未熟さから、やがて白澤を傷つけてしまう出来事が…
そんな日々の中でも、ある日の試合では、奇跡的に、一瞬、彼女たちが輝いた瞬間があった…けれど、チームメイトたちの金田への感情は取り返しのつかないものになっていて。
誤解やすれ違い、自分が発した言葉が意図せず相手に届いたり、などが重なって少しずつ人間関係の中にヒビが入っていくさまが観ていて辛かった。
大学卒業後、金田は財団の非常勤職員として働いていますが、大学時代のチームメイトとは交流がない様子。
ある日、白澤は運転中に事故をおこして死亡しますが、ブレーキを踏んだ形跡がなかった。
白澤が大学時代に書いた部活を題材にした漫画と、傷心をつづったブログがネット上に残っていたため、ネットに群がる有象無象から、その原因は当時のキャプテンにあり、とされ、ついに金田は特定されてしまいます。
金田自身に非があったとはいえ、まだ若く未熟だった時代のことなのにバッシングを受け続けることは、ネット社会のリアルを反映していてやりきれない思いになりました。
かつての明るさはどこへ、金田は、今は死んだ心を抱えて生きている。
「お別れの会」にもぐりこむことで、唯一、自分はまだ生きている、と「生」を確認していたよう。
ネットを見た白澤の親が、金田を「お別れの会」によぶことを拒否していたんですが、死んだ白澤が事故の真相を語る場面があって、観客である私は救われた気持ちになりましたが、金田たちはそれを知ることはないわけで、切ない…
その他のメンバーも、大学卒業後、色々な人生を歩んでいることが語られ、「お別れの会」の後、降りしきる雪の中、どこからともなく飛んできたボールをみんなで回すシーンはとても美しかった。
「悔い」と「赦し」の物語に結実するのね、と思ったところ、ラストシーンで、2024年、能登半島地震、とのテロップが。
そう、彼女たちは、金沢の住人だった。
この物語の背景には、実際の災害の数々があって、フィクションでありながら、その点で私自身が生きている現実とリンクする感覚になりました。
東日本大震災、熊本地震、新型コロナ感染症、能登半島地震、と、生き延び、乗り越えた、と思ったあとに、また災害がやってくる…災害に限らずとも、私たちはなんと不安定な世界で生きていることか。
けれど、そんな中でも、生きている限り日々を過ごしていかなければならないし、かつて確かに輝いていた一瞬があったことを支えにしてもいいのかもしれない。
そしていくつになっても、いつだって、輝くことはできると思いたいし、祈りたい。
金田を演じた吉高由里子さん、無自覚なわがままで人を振り回していくところなど、痛々しいところもあったけど、こういう人いるな、と思わせるリアルさがあり、難しい役を与えられたと思いますが、独特の魅力を発揮していました。
その他の彼女たちも、キャラクターがたっていて、共感したり、反感を覚えたりしながら観ていました。大学時代と、その後の人生の歩みを感じさせる姿の対比もよかったです。
唯一の男性で、山形と付き合いながらも金田にも惹かれていく原を演じた名村辰さん、女性キャストばかりの中でも力が入りすぎず、自然な演技がよかった。
山形が親友という言葉に自分自身が縛られていたことに気が付くきっかけを作るという役どころをうまく演じていたと思います。
簡易的な装置を人力で動かして場面転換するところなどは、小劇場的でもあり、それを大きな劇場で成立させているところに蓬莱さんの手腕を感じました。
蓬莱さんの作品を観ていると、古傷をえぐられるような感覚にもなりますが、それでもどこかに優しさを感じたりもしています。
