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cookieの雑記帳

興味を持ったことなどを徒然なるままに書き留めていきます。半分は備忘録。音楽(classicからpopsまでなんでも)、美術(絵画、漫画、現代美術なんでも)、文学(主に近現代)、映画(洋画も邦画も)、旅や地理・歴史(戦国以外)も好き。「趣味趣味な人生」がモットーです。

三連休の中日、安室奈美恵さんの引退日ということで、世間はそんな話題で持ちきりだった9月16日日曜日、午後からはピアニスト・山田磨依さんの演奏会を聴きに、東急東横線の大倉山駅にほど近い、大倉山記念館に行ってきました。



今は自宅からは1時間半以上かかりますが、東横沿線の実家からはほど近く、子どもの頃は梅林などでもよく遊んでいましたがすっかりご無沙汰しており、今回およそ40年ぶりに訪れました(^_^;)


東急東横線の大倉山駅からは線路沿いの坂道をひたすら登っていくのですが、こんなにきつかったかしら?と歳を感じずにはいられませんでした。


10分くらいで到着した大倉山記念館は、ギリシャ神殿様のガッチリとした建物で、実業家の大倉邦彦氏が昭和7年に大倉精神文化研究所の本館として建てたとのこと。

内部は詳しくは見ていませんが、結構複雑な構造になっているようです。
正面の入口から入るとそのまま二階へと上がる階段があり、登りきったところの扉の中がホールになっています。


ホールも内装も独特で、荘厳な雰囲気が感じられます。

今回演奏するピアニストの山田磨依さんは1990年生まれの若手で、今年生誕90年になるフランスの作曲家・ジャン=ミシェル・ダマーズを取り上げたCDをリリースされたのがアンテナに引っかかりました。
フランスで学んできたのち帰国。2年くらい前からダマーズの音楽を積極的に紹介されているようで、今回のプログラムも「珠玉の音楽宝石箱 〜フランス&イギリス〜」と題して、ダマーズをはじめ英仏近現代の小品を集めた粋な選曲。自分の好きな音楽のど真ん中であり、これは聞き逃せないですよね。
チケットは完売で、さほど広くないホールはお客さんでぎっしりでした。100人くらいだったしょうか? 圧倒的に年配の方が多く、ジョイフルコンサートの常連の方々と思われました。




前半はイギリスの作曲家の作品から。フレデリック・ディーリアスとフランク・ブリッジという、19世紀から20世紀にかけて活躍した作曲家です。
19世紀のイギリスは世界的な作曲家が輩出せず、20世紀になってベンジャミン・ブリテンが登場するまで、ヘンリー・パーセル以降、300年間不毛だったと言われるほど、ほかの西欧諸国に比べクラシック音楽が発展しませんでした。とはいえ、作曲家がいなかったわけではなく、国内では人気のある作曲家はいました。今ではスタンダードになったエルガーやホルスト、ヴォーン=ウィリアムズらも同じような時期に活躍しました。
その中でもディーリアスやブリッジはフランス印象主義の音楽を取り入れた作風で、より近代的な印象を受けます。今回取り上げられた『3つの前奏曲』『おとぎ話組曲』はともに初めて聴く曲でした。作曲家名をきかなければ、フランス🇫🇷の作品ですよと言われてもわからないですね。
決して響きの良いホールではないですが、山田さんの奏でる音色は自分の好みに合っており、作品世界に引き込まれました。

ウィリアム・ロイド=ウェバーは、ミュージカル『キャッツ』などの音楽で有名なアンドリューのお父さん。ブリテンより少し若い世代で、『ロマンティック・イブニング』はとても可愛らしく優美な小品でした。甘くなり過ぎない山田さんの演奏は好感が持てました。

前半最後はドビュッシー。今年は没後100年のメモリアルイヤーで、演奏会でも多く取り上げられていますが、その中でもドビュッシーの代名詞といってもよいベルガマスク組曲からの『月の光』、そして華やかな『喜びの島』が演奏されました。
これぞフランス音楽!という、空間を満たすキラキラ感。重くはないけど軽すぎない、主張を感じる演奏でした。
『喜びの島』はワトーの絵画「シテール島への船出」にインスパイアされて作曲されたそうですが、同じ絵を見て3回りくらい若いプーランクもそのままの名前の『シテール島への船出』という2台のピアノのための曲を書いています。可愛らしい小品ですが、演奏映えするのはやっぱりドビュッシーですね。

休憩を挟んでの後半はオールフランスもの。まずはフランス六人組の紅一点、ジェルメーヌ・タイユフェールの小品『ロマンス』。彼女も生涯穏健な作風で作曲されました。

そして、ここからが本日のメインプログラムで、山田さんがライフワークと明言しているダマーズの作品と、ダマーズに関連するフォーレの作品が演奏されました。
ところでダマーズって誰?というくらい日本ではほとんど知られていないと思われます。山田さんは子どもの頃から親しんでいるとのことですが、私が初めてダマーズの作品に触れたのは、フルートの佐久間由美子さんの演奏を通してでした。1990年のCD「パリの息吹き」やハープの吉野直子さんとのデュオリサイタルなどです。
1928年生まれのジャン=ミシェル・ダマーズは1925年生まれのピエール・ブーレーズと同世代。親世代であるオリヴィエ・メシアンやアンドレ・ジョリヴェらがすでに新しい音楽世界を構築し、その門下である前述のブーレーズらがさらに前衛音楽へと進んでいく中で、印象派の影響のもと新古典主義などを軸に活動を展開していった、どちらかといえば、音楽史の中ではメインストリームにいない作曲家です。ピエール・サンカンやナディア・ブーランジェ門下のジャン・フランセもこの括りに入るでしょう。基本調性は保ちつつも、響きはけっして古臭くはない音楽。プーランク好きの自分にとって、その延長線上にある音楽です。惜しくも2013年に亡くなられました。
今ではCDも色々出ており(輸入盤ですけど)、またYouTubeにもたくさん動画がアップされているので、ダマーズ作品に触れるのは容易になりました。
そんな中で、『ダマーズ生誕90年に寄せて』と名打ったCDをリリースしたのが山田磨依さんなのです。前述の佐久間由美子さんや、清水信貴さん(ダマーズ本人が伴奏!)、委嘱作品を録音した工藤重典さんなどのフルート作品の国内盤は出ていましたが、ピアノ作品をある程度まとめて録音したのは、輸入盤を含めてもレア。素敵なアルバムに仕上がっているので、未聴の方はぜひ聴いていただけたらと思います。
今回のプログラムでは『夜明け』という2005年の小品と、代表作の1つである1990年の『ソナチネ』が取り上げられました。ダマーズの乾いた抒情性が伝わる好演でした。

ラストはフォーレの作品で『即興曲 第3番 op.34』(1883)と『即興曲 第6番 op.86 bis』(1913)。前者はピアニストでもあるダマーズ自身も録音している作品。後者はハーピストであるダマーズの母親が初演した作品のコルトーによるピアノ編曲版。
堂々とした演奏で、プログラムの最後にふさわしい選曲でした。
大きな拍手に迎えられてのアンコールは、ダマーズの小品を2曲。踊るのはちょっと難しそうな『タランテラ』と、「おとぎ話」より諧謔味あふれる『白猫』でした。猫好きの山田さんならではの演奏だったのでは^ ^

全体を通して軽やかで粒立った音と、決して甘ったるくなり過ぎないキリッとした輪郭は、この時代のフランス音楽にふさわしい演奏だと思いました。
素晴らしい若手の演奏家に出会えて、午後のひとときを楽しく過ごさせていただきました。
ライトグリーンの衣装もお似合いでした。

すでに来年のダマーズの誕生日を祝う演奏会の案内が出ており、楽しみですね。