今年が没後50年にあたる画家・藤田嗣治。先日ブログにも書いた「没後50年 藤田嗣治 本のしごと」展に引き続き、メモリアルイヤーの中で最も規模の大きな『没後50年 藤田嗣治展』が東京都美術館で始まりました。
毎年のようにどこかでフジタ作品の展覧会が開催されている現状は、自分が興味を持った1980年代後半から2000年代中頃のなかなか作品を観ることができなかった状況を考えると、隔世の感があります。
素敵な作品もさることながら、とにかく本人のキャラが立っているので、取っつきやすいのではないかと思います。
私は普通の眼鏡でしたが割引料金でした。
こちらはタイトルどおり、今の芸術家たちによるトリビュート作品の展示になります。素人の私には、どこがフジタと結びつくのか、よくわからない作品もありましたが、とても興味深かったです。
エコール・ド・パリの画家としてピカソやモディリアーニらと交わり、やがて「乳白色の下地」と呼ばれる、独特な風合いの画面を生み出し、丸メガネにおかっぱ頭という、個性的な出で立ちと相まって、時代の寵児となりました。
しかし、帰国後の日本では太平洋戦争の作戦記録画を描いたことで、戦後はその批判の矢面に立つこととなり、日本の画壇との関係はこじれ、結局アメリカを経由しフランスに戻ることになりました。
洗礼を受けてレオナール・フジタとなり、以後日本に戻ることなく、この地で生涯を閉じました。
そんな経緯から、日本でのフジタの扱いにはデリケートな問題を含んでおり、特に君代夫人の生前は、展覧会の開催や画集の出版などもかなり制限されていました。
国内で初めての本格的な画集が発売されたのも今世紀に入ってからで、公開された資料などから、ようやく研究が進んできたのもここ10年のことです。
今回の展示では、国内のコレクションを中心に、欧米の美術館から代表作を集め、全体を八章に分けて、おおよそ年代順に並べて展示されています。
I 原風景 ー 家族と風景
II はじまりのパリ ー 第一次世界大戦をはさんで
III 1920年代の自画像と肖像 ー 「時代」をまとうひとの姿
IV 「乳白色の裸婦」の時代
V 1930年代・旅する画家 ー 北米・中南米・アジア
VI-1 「歴史」に直面する ー 二度の「大戦」との遭遇
VI-2 「歴史」に直面する ー 作戦記録画へ
VII 戦後の20年 ー 東京・ニューヨーク・パリ
VIII カトリックへの道行き
会期前半で平日日中ということもあって、あまり混雑もなく、余裕を持って鑑賞できました。初めて観る作品、また何度も観ている作品ともども堪能しました。
この夏、オススメの展覧会です。
図録には2種類の表紙があり、右が会場特設ショップ限定だそうです。中身は一緒です。
生涯に5回結婚したフジタの、5人の妻を軸に画業を振り返る、林洋子さんによる特集記事は読み応えがあります。林さんはこの展覧会をはじめ、前述の「没後50年 藤田嗣治 本のしごと」展、そしてこのあと訪れた『1940’s フジタ・トリビュート』と、3つの展覧会の監修を務めており、自分と同世代の素晴らしい研究者に頭が下がります。
さて、東京都美術館のすぐ裏手には東京藝術大学の美術学部があり、正門を入った右手には藝大美術館があります。
会期は8月15日までですので、興味のある方はお急ぎあれ。