素敵な一夜をありがとう! ミシェル・ルグラン トリオ@Blue Note TOKYO | cookieの雑記帳

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興味を持ったことなどを徒然なるままに書き留めていきます。半分は備忘録。音楽(classicからpopsまでなんでも)、美術(絵画、漫画、現代美術なんでも)、文学(主に近現代)、映画(洋画も邦画も)、旅や地理・歴史(戦国以外)も好き。「趣味趣味な人生」がモットーです。

すでに2週間が経過してしまいましたが、7月7日土曜日、七夕の晩は妻と2人で、5年ぶりの来日となる御歳86歳になるミシェル・ルグランの公演を聴きに、Blue Note TOKYOに行ってきました。


今回はトリオでの来日。東京は4日間8公演で、この日は2日目にあたり、私たちは夜の公演。この時点で以後の公演はSOLD OUTしていました。
ちょうど開場くらいの時間に到着。夕暮れ時の南青山は、街の灯りも点り始め、雰囲気のある情景になっていました。


今春は多忙から体調を崩したミシェル。ニューヨーク公演などがキャンセルになった経緯もあったので、今回の来日は大丈夫なのかと心配していましたが、無事に到着とのツイートを見てひと安心。
さらに初日の演奏の動画が届き、ますます期待が高まりました(初日のライブレポートとセットリストはこちら)。

チケット予約時に飲み物も併せて頼んでおいたこともあり、「ルグランにシャンパン、合いますよね」と、にっこりと受付嬢に送られて入場。

正面中央の比較的前寄りの席で、ステージもよく見える位置でした。


おつまみと一緒に、今回の公演に合わせたスペシャルメニュー、その名も『MICHEL LEGRAND』というカクテルも注文。ジンベースでグレープフルーツとレモンのさっぱり柑橘にハーブリキュールのペルノを加え、トニックウォーターで仕上げた、ジントニックよりはまろやかでやや香り強めな一品でした。



そうこうしているうちに開演時間の20時に。満場の拍手に迎えられメンバーの登場。ミシェルは足元がおぼつかない感じで、女性に手を支えられての登壇。だいぶお歳召したなぁと思いましたが、そのあとのパフォーマンスは別人の如く凄まじかったです。
指揮台に立ったら人が変わったように背筋が伸びたカラヤンの最後の来日公演の様子が目に浮かびました。

トリオのメンバーは、
   Michel Legrand (p)
   Geoff Gascoyne (b)
   Sebastiaan De Krom (ds)
で、普段ミシェルと母国でトリオを組んでいるメンバーではありませんが、イギリスからのお二人はロンドンでの公演などではお馴染みです。

オープニングはゴキゲンなナンバーRay Blues。Rayはもちろんレイ・チャールズのこと。ミシェルはちょうど正面に位置するドラムのセバスチャンに目配せしながらマイペースで。二人のやり取りにクスリと笑ってしまいます。続いてはLa Valse des Lila /Once Upon a Summertime』。しっとりとしたバラード。演奏も乗ってきて、ミシェルの歌声も。音程は??でしたが、そんなことは気にならない、素晴らしい演奏でした。
続いては、やっぱり来ましたね! のChanson des jumelles (Les Demoiselles de Rochefort)。濱田さんのツイートで、『双子姉妹の歌』をリクエストしたと書かれていたので期待をしていました。他のメンバーはやったことがないとのことでしたが、そんな感じは全く無かったですね。指の動きは全盛期と比べれば、ミスタッチも多くなっていると思いますが、とにかく良く動きます。歳を感じさせないフィンガーテクニックでした。時々指先を舐めながら弾く姿はとても楽しそうで、観ている方も気持ちがあがります。

定番のYou Must Believe in Springはウッドベースのジェフがナイスなソロを聴かせ、そして、ミシェルに問いかけてみたい、このタイトルWhat Are You Doing the Rest of Your Lifeでココロを揺さぶったあとは、グルーブ感たっぷりのFamily Fugueで盛り上げました。微笑みながら楽しそうに弾いているミシェルはとても素敵。MCは英語と、時々フランス語混じりで、結構面白いことを言ってましたが、全部は聞き取れず(^_^;)残念!

後半戦は晩年のマイルス・デイヴィスとのコラボ作品「Dingo」からのナンバーで、はじめにスローバラードのDingo Lament。ここでもミシェルは歌いながら、指先は悲しげだけれども高揚していくような旋律を紡ぎ、そこにベースとドラムスが寄り添ってgood vibes。前述のように歌は音程微妙でしたが、それが演奏を損なうこともなく、かえって味わいがありました。続けて今度は速いテンポのDingo Rock。ドラムスが大活躍でした。
夢に出てきたという、往年のジャズピアニストの名前を挙げながら、そのスタイルを真似てみたり、茶目っ気たっぷりの演奏でWatch What Happens (Les Pianistes de Jazz)を。
そして最後はやはりこの曲、I Will Wait for You (Les Parapluies de Cherbourg)
。ミシェルの思い入れが強い、ジャック・ドゥミとの「シェルブールの雨傘」。この有名な主題を、今度はラテンやニューオリンズなど、さまざまなスタイルでノリノリで弾いて一気に駆け抜けました。
会場は割れんばかりの拍手で、この素晴らしいピアニスト・作曲家と仲間たちを讃えました。

本当に素敵なライブでした。
セットリストは初日とほぼ同じで、アンコールはありませんでしたが、途中に『双子姉妹の歌』が入り、嬉しかったですね。
終演後も会場は余韻に包まれていました。

演奏が素晴らしかったのはもちろんのこと、フロアのスタッフがとても親切で、ホスピタリティを感じました。いろいろご配慮いただき、本当にありがたかったです。
さらに駅まで乗ったタクシーの運転手さん、「ルグラン、良かったですか?」と話しかけてきたのでびっくり。公演情報をチェックしているのか、やけに詳しくて話も弾み、「確か007の音楽もやってましたよね?」と、『ネバーセイ・ネバーアゲイン』の話が出てきた時にはびっくりしました。まさかタクシーの中でこんなマニアックな話になるなんて^ ^

妻ともども大満足な、素敵な一夜となりました。
本人も乗り気だという、またの来日を期待してます!

《セットリスト》
1. Ray Blues
2. La Valse des Lila /Once Upon a Summertime
3. Chanson des jumelles (Les Demoiselles de Rochefort)
4. You Must Believe in Spring
5. What Are You Doing the Rest of Your Life
6. Family Fugue
7. Dingo Lament
8. Dingo Rock
9. Watch What Happens (Les Pianistes de Jazz)
10. I Will Wait for You (Les Parapluies de Cherbourg)


ブルーノート東京の機関紙の先月号の表紙を飾ったミシェル。見開きで今回の公演が特集されており、濱田高志さんが寄稿しています。


フライヤーには「ルグランと私」と題して、ファンを自認する業界の方々のコメントが掲載されています。