渋谷といっても駅周辺の喧騒とは無縁の住宅街・松濤。この一角に建つ渋谷区立松濤美術館は、いつも個性的な展覧会で目を引きますが、今回は20世紀前半のチェコを代表する画家・イラストレーターのヨゼフ・チャペックとその3歳年下の弟で作家のカレル・チャペックが子どもをテーマにして世に送り出した作品を集めて展示する、『チャペック兄弟と子どもの世界』展です。
私のチェコへの興味は音楽からで、特に作曲家のマルティヌーの作品が好きで、その周辺の文化にはとりわけ愛着があります。
弟のカレル・チャペックはマルティヌーと同じ1890年生まれ。小説や戯曲などの分野で活躍し、第二次世界大戦の足音が聞こえ始めてきた1939年に若くして亡くなりました。未完の絶筆『ある作曲家の生涯』は一昨年に日本でも翻訳が出版(青土社)されました。挿画は兄・ヨゼフです。
展覧会の中心はヨゼフの作品です。出品作のほとんどがチェコの個人蔵なので、まとめて観るチャンスは少ないのではないかと思います。今回はまたとない機会ですね。
ヨゼフはもともとはピカソらの影響を受けたキュビズムの画家としてスタートしました。この頃からすでに子どもをモチーフにした作品を多く手がけています。
やがて自身に娘さんが生まれたり、より子どもの世界へと傾倒していきました。
さらに作風もよりシンプルなものに変化していきました。
ヨゼフはいわゆる芸術絵画とイラストなどの大衆絵画に優劣はないと考えており、とても共感できます。
数多くの絵本の挿画などを手がけ、のちには自分でストーリーも含めて作るようになりました
戯曲はなかなか舞台に触れる機会は無いのですが、『マクロプス事件』は、この舞台を観た作曲家ヤナーチェクがオペラ化を熱望し、チェコ語の台本でという条件で許可がおりたため、現在では彼のオペラの代表作の1つとして鑑賞することが比較的容易です。
こういった本来の創作活動の傍ら写真などにも凝っており、今回はその中から愛犬「ダーシェンカ」の写真が展示されています。とにかくいろいろな事に興味を持っていて、小説や戯曲にとどまらない、多くの活動をしました。
カレルの作品を含め、ヨゼフが装丁を担当した数々の本も展示されています。ともに児童文学に大きな足跡を残しました。
エントランスは一階、会場は地下一階と二階に分かれており、各階のエレベーターホールにはバレエ「おもちゃ箱」のデザイン画が展示されていて、二階のエレベーターホールが撮影OKになっています。
ナチスやヒトラーに批判的だった兄弟は2人ともその活動がナチスにマークされており、カレルはその手が伸びるまえに亡くなってしまいましたが、ヨゼフは捕らえられ強制収容所送りになってしまいました。その後ヨゼフの消息はわからなくなり、収容所で亡くなったと考えられています。
20世紀初めの中欧で活躍した兄弟が残した素敵な遺産。あまり穏やかではなかった時代の中で、純粋な目で子どもたちをとらえた作品からは、今の私たちに訴えかけてくるメッセージを強く感じます。
期待以上に素敵な展覧会でした。
会期は明日5月27日(日)までです。興味のある方、おススメですよ。
見逃してしまった方、関西の方、このあと神戸に巡回するようです^ ^














