谷川賢作×濱田高志『ミシェル・ルグランについて語ろう』@御茶ノ水・ESPACE BIBLIO | cookieの雑記帳

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興味を持ったことなどを徒然なるままに書き留めていきます。半分は備忘録。音楽(classicからpopsまでなんでも)、美術(絵画、漫画、現代美術なんでも)、文学(主に近現代)、映画(洋画も邦画も)、旅や地理・歴史(戦国以外)も好き。「趣味趣味な人生」がモットーです。

11/29水曜日、前日からの仕事明けの夜は、御茶ノ水にあるESPACE BIBLIOに、『ミシェル・ルグランについて語ろう』という、たいへん魅惑的なトークイベントを聴きに行ってきました。
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今回のトークショーは、ルグランが大好きという作曲家の谷川賢作さん(詩人の谷川俊太郎さんの息子さんです)と、ルグランと言えばこの人しかいないという、ルグランの友人で日本での窓口役でもある濱田高志さんによるものです。
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今年が生誕85年のミシェル・ルグラン 。『ロシュフォールの恋人たち』の公開50年と併せて、濱田さんを中心とした様々な企画が行われてきました(過去のブログにいくつかを取り上げています)が、その1つが今回のトークイベントになります(ちなみに恵比寿ガーデンシネマでのドゥミ作品の上映は大成功で、全国巡回が決まったりしているそうです)。
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先日、濱田さんが上梓された『ミシェル・ルグラン クロニクル』(立東舎)発売記念というのが、いちおうこの催しの名目です。以前濱田さんが書かれたルグラン初の公認本『ミシェル・ルグラン 風のささやき』の大幅改訂増補版であり、2年前に出版された『ミシェル・ルグラン自伝』(アルテスパプリッシング)をディスコグラフィーで補完している姉妹本になります(と、濱田さん)。『自伝』はミシェルの右腕であるステファン・ルルージュとの共著という形で、年代順の記述ではないところがポイント。元々は小冊子で刊行したいと思っていたが企画が通らず、まとまった書籍にしないとダメとのことで、このような形になったのだそうで、ミシェルはいわゆる自伝は大嫌いなのだそうです。
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さて、谷川さんと濱田さんはこの日初顔合わせだったそうで、お互いのルグラン体験などから話はスタート。濱田さんは大の手塚治虫ファンで、『火の鳥』が映画化された時に、そのサウンドに打ちのめされたのがルグランとの出会いと。一方谷川さんは、『火の鳥』の時はすでにルグランを知っていた(父谷川俊太郎さんがこの脚本に関わっている)ので、それ以前、シェルブールの雨傘とかかなぁと。
しかしその後が大きく違っていて、谷川さんはルグランにハマることはなく離れた位置にいたのだけれど、前述の自伝をたまたま読んで、非常に感銘を受け、ルグラン再発見になったそうで。ちなみにこの自伝は特に業界の方々には評判が良いのだそうです。
対する濱田さんは、そこからルグランの音楽にどっぷりと浸り、当時発売されていたレコードを集め、自分で調べてフィルモグラフィーを作ったり。ある時、知人の仲介で、来日中のルグランをコンサートの楽屋に尋ねたところ、そんな話は聞いていないとマネージャーに追い返されそうになっているところにミシェル登場。どうしたんだい?ということで、濱田さんがあなたのファンでと言うと、サインを貰おうと持っていたたくさんのレコードにミシェルが興味を示し、楽屋に入れてもらえたとのこと。さらにミシェルは濱田さんの作ったフィルモグラフィーに感心し、これがあれば他のリストと併せて完璧なものができるので、帰国したら連絡するよと。
さらに濱田さんのこの行動をたまたま見ていたのがアルファレコードの社長さん(火の鳥の音楽プロデューサーの村井邦彦さんの元奥さんという偶然!)で、ミシェルのCDを出す契約があるのだけれど、ファンのあなたの意見がききたいといわれて会社に呼ばれ、忌憚ない率直な意見を述べたところ、ミシェルとの交渉が上手く進んだそうで。大人の事情から選曲などはプロデューサーの名前で出す代わりに、ライナーノーツを書かせてもらえることになり、これが濱田さんのキャリアのスタートになったとのことです。
思い切った行動が将来を大きく変えてしまったわけで、全くもって素晴らしいことだと思います。
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そんな濱田さんに、谷川さんからいろいろ質問が。どんな楽譜を使っているのか?鉛筆で書いているのか?などなど。
ミシェルのところに泊まったりしている濱田さんならではの、日常の姿などについてお話しいただけました。
部屋にある資料などは好きに見ていいよと。本人は1日6時間くらいピアノを弾いているのだそうで、それをBGMにしてしまった濱田さんの贅沢なこと!
ミシェルは通常は鉛筆で書いているけど、清書はペンで。それも日本のぺんてるの使い捨てタイプのものが気に入っていて、箱買いしているそうなのですが、製造中止になってしまったらしいと。どこでも思いついたら書き留めているらしく、手帳に五線を手書きしてたり。音楽はいつも彼の頭の中をまわっていて、どこを切り取るかだけなんだと。だから書けないスランプはないそうで。
ハリウッドでのエピソード。劇伴を書いたら、それをオーケストレーションするのは専門のオーケストレーターで、ミシェル自身がやらせてもらえないジレンマ、監督はOKしたのにプロデューサーからrejectされたり、そんなことの繰り返しからうつ状態になったり。
現在のミシェルは、やり残したことを完成させるべく、いっそう精力的に活動しているようで、その中の1つである1970年代に頓挫したプロジェクトを、ナタリー・デセイを擁して装い新たに作り直した、『Between Yesterday and Tomorrow』がいよいよ年末に日本でもリリース。
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「もう一度、来日してほしいけど」と濱田さん。トリオで来ても奥さんを含めて4人分。お金がかかるので、どこがバックアップしてくれるのか、あてもないそうで。
以前来日した時も、ミシェルの相手は濱田さんに任せっぱなしにされたそうで、ホテルの迎えや食事の段取りなども全部やる羽目になったとのこと。
そうそう、ミシェルは飛行機の中でも紙の鍵盤を用意して作曲しているそうで、そのため本人はビジネスクラスを取っているのだそうです。ホテルもピアノが弾けるところということで、帝国ホテルのそういう部屋を取るのだそうです。
ドゥミの奥さんで映画監督のアニエス・ヴァルダとのこと。ルグランが参加した(出演者としても!)アニエスの作品では『5時から7時までのクレオ』が有名ですが、濱田さん曰く、「ミシェルとアニエスはトムとジェリーのような関係」と。
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アニエスの撮った『ジャック・ドゥミの少年期』をミシェルはとても批判しているとか、逆にミュージカル版の『ロシュフォール』の音楽をアニエスは批判したり、でも一緒にステージに立ったり、まぁそんな間柄なのだと。


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ミシェルの奥さんたち、今のお相手が4人めなのだそうですが、3人目のカトリーヌが、お互いにとっていちばん良かったのにと。音楽家どうしなかなか難しいところもあるのだそうです。ちなみに濱田さんは今でも奥さんたちとやりとりはあるとのこと。
ミシェルはホワイトチョコレートが大好きで、いつも寝る前に1枚食べているとのこと。家にもカバンの中にも常備しているそうで、パッケージのイルカのキャラクターも好きなのだそうです。
ネットで見つけた画像ですが、たぶんこれですかね?
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「シェルブールやロシュフォール以外のことを話す事は普段無いですから。ルルージュと話すときくらい。彼も同じような感じだって」と、マニアックな話題が展開するチャンスは無いと濱田さん。そうなんですね。
これからの季節、ルグランのクリスマスアルバムはおススメですとのこと。


対談は途中で音楽を聴きながら。本当は映像も用意してあったのだそうですが、リージョンコードが合わなかったのか、上映できずまたの機会にということになりました。

まずはミシェルの85歳をお祝いした数日前のフランスのラジオ番組から、双子姉妹の歌をピアノトリオで演奏したライブ音源を。「ちょっとヨレているところもあるけど」とはいうものの、素晴らしいグルーヴに耳を奪われました。

弾き語りのデモ音源から、アセテート盤から起こした、ミシェル30代くらいの時の録音で未発表の作品。そして、近年の未発表デモ音源も。こういった作品が何百もあるのだけど、発表のあてはなしと。

当時の奥さんだったハーピストのカトリーヌとのアルバムのために録音した曲は、リリースされたものの倍くらいあって、その中の一曲から「ロシュフォール」の 『You Must Believe in Spring(マクサンスの歌)』のハープアレンジ。離婚しちゃったので、お蔵入りだろうな、と濱田さん。
この曲、実はミシェルは好きじゃなくて、映画でも別の曲を用意していたところにドゥミがこちらを採用。ミシェルはいまだに納得していないそうで(^_^;)。ボツになった曲のエッセンスは『ロバと王女』に転用されているそうです。

最後にMelissa Erricoのアルバム「Legrand Affair」から『Something New in my Life』を流して終了となりました。


谷川さんはピアニカの生演奏を披露して下さいました。ドゥミの「天使の入江」が好きとのことでテーマ曲『L’amour et le jew』を。ほとんど取り上げられることがないので、初カヴァーだと思いますよ、と濱田さん。

さらにゴダールの「女は女である」から『ル・ブニャ亭のブルース』も。「お耳汚しで」なんておっしゃってましたが、素晴らしい演奏でした。これらは後述する白河で行われるイベントでかかる映画からの選曲です。

谷川さんは、年明けの1/19, 20に福島県白河市で開催される『ミシェル・ルグラン とヌーヴェル・ヴァーグ』という催しに出演され、映画上映の合間にミニコンサートをされるとのこと。先日ブログにも書いたEMO strings主宰のヴァイオリニスト 吉田篤貴さんが一緒に演奏されるそうで、楽しみな企画ですね。
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さらにサプライズがあり、谷川さんから私の友人ですと声がかかり、なんと原田節(はらだ たかし)さんが客席から登場。
原田さんと言えば、世界的なオンディスト(オンドマルトノ奏者)で、これまで何度もメシアンの『トゥーランガリラ交響曲』でお見かけしたことがあったのですが(私は1988年のサロネン/N響の定期が初見でした)、まさかこんなところでお目にかかろうとは思いもしませんでした。それも、むろんオンドマルトノの演奏のために登場したのではなく、『シェルブールの雨傘』を歌うためとのことで2度びっくり!
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原田さんのプロフィールを見ると、子どもの頃からヴァイオリン、ピアノ、歌と様々な形で音楽に触れていましたが、慶應大学卒業後に渡仏し、パリ高等音楽院でオンドマルトノを学び主席で卒業。その後は世界中で活躍されている訳ですが、確かにホームページの肩書きに「歌手」と書かれています!
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原田さんも、シェルブールまで足を運んだ事もあるくらいのルグランフリークで、特に『シェルブールの雨傘』は全部歌うことを自分に課したくらい好きなのだそうです。
というわけで、谷川さんのピアニカ伴奏でその一節を聴かせて下さいました。甘く少し掠れたシャンソンの雰囲気でとても素敵でした。終演後に恐るおそる少しお声をかけさせていただきました。「歌も歌われるんですね?」と訊いたところ、「もともとはこっちなんですよ」とニヤリとされていました。原田さんは1月の都響の『トゥーランガリラ交響曲』にも出演予定で、先日観てきた『アッシジの聖フランチェスコ』の話をしたところ、「あれは演る方も聴く方も大変ですよね〜」と仰っていました。原田さんは1986年に小澤さんが抜粋で演奏した時や1992年のバスティーユでの舞台上演の際に参加されています。
先日、谷川さんとレコーディングした原田さん歌唱のディスク(日本語詩のもの)も、来年の夏くらいには出るのでは?とのことでした。

それにしても実に有意義な時間でした。素人の私には少し場違いな感じもしましたが、興味深い話やレアな音源など盛りだくさんで、もともと1時間半の予定が、気づけば2時間になっていました。
またルグランの企画をやりたいとおっしゃってましたので、期待して待ちたいと思います。
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追記)原田節さんは、実は私の実家の近くの写真屋さん(原田写真工房)の息子さんで、子どもの頃はいつもこのお店に現像を頼んでいました。証明写真などもここで撮っており、原田さんのご両親と私の母が、世間話をするくらいの顔見知りだったのを、先日実家に帰った時に思い出しました^ ^