高松明日香展『届かない場所』@三鷹市美術ギャラリー、観てきました | cookieの雑記帳

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興味を持ったことなどを徒然なるままに書き留めていきます。半分は備忘録。音楽(classicからpopsまでなんでも)、美術(絵画、漫画、現代美術なんでも)、文学(主に近現代)、映画(洋画も邦画も)、旅や地理・歴史(戦国以外)も好き。「趣味趣味な人生」がモットーです。

瀬戸内を中心に活動されている若手の画家・高松明日香さんの個展が本日(8/11)より、東京・三鷹市美術ギャラリーで始まりました。
予告を見て気になる絵だったので、ご本人によるギャラリートークもある初日に訪れました。
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1984年生まれの高松さんは香川県出身(名前を見たときの印象は、香川の高松さん、覚えやすいな、とか、明日香村ー高松塚古墳なんてイメージが浮かびました。どうでもいいことですね(^_^;))。大学ではデザインを専攻されたそうです。
ご自身が作った年譜によれば、日本画や西洋画のコースでは、やりたくない裸婦のデッサンなどをやらなくてはいけないのが耐え難く、デザインに流れたそうです。
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入り口に置いてある出品作のリストを兼ねたハンドアウトは、全27点を写真で載せています。鑑賞の手引きという感じではありませんが、表紙に印刷されている作品タイトルを並べた言葉の列は、あたかもひとつの詩のようで、その抽象的なイメージは作品世界とも呼応します。
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先にひと通り作品を観たあと、午前11時からのギャラリートークに参加しました。
老若男女、約20人くらいが集まりました。今回の企画の中心人物である学芸員の朝倉さんから、「ひとつずつ作品を解説してく感じで。全部じゃなくていいですけど」とマイクを渡され、「こんな感じなんですね。知らなかった」と。
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作品はアクリル絵の具で描かれており、総じて寒色系の色合いです。ガラスなどはなく、画面の風合いが直接伝わってきます。
この展覧会はここ9年の間に描いた作品をシャッフルし、組み合わせることによって新たな意味合いを持たせるという試み。
2013年頃から隙間なく作品を並べて展示する方法は取られていた(はじめは展示スペースの問題から?)ようですが、今回はそれをさらに発展的に行ったもの。
使用された作品は160点以上になります。

順路に沿って作品をピックアップしながら、個々の作品の解釈というよりは、もう少し漠然としたイメージを話されました。関西方面のイントネーションの、控えめな語り口です。
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上は『鳥を印象する』
印象という言葉は印象派というイメージだったけど、歯科で働いていた時に歯の型を取ることを印象すると表現するのを聞いて、印象=写し取る、なんだと気づいたとのこと。鳥は好きなモチーフなんだそうです。
下は『川を渡る』。今年の新作を集めています。

絵の組み合わせはご自身で決めたとのことですが、タイトルなどは学芸員の方と意見を交わしながら決めていったそうです。朝倉さんが言うには、高松さんは何でも自分で決めなくては気が済まないタイプではなく、他人の手が入ることに抵抗がないタイプとのこと。
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こちらは『動き出す』という作品。

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上は『シカがいる(Deer are There)』
英訳が韻を踏んでいます。倒れているシカは、頭部が雪に同化していってるように描きたかったとのことで、なかなか気に入った形に決まらず当時展覧会場で展示中に手直ししたとのことです。
下は『私しか(Just Me)』
はじめ、『私しか』というタイトルを見たとき、中央のシカの絵に引きずられ、頭の中はI'm deerになっていました(^_^;)

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上は『青く光る』
もともとシリーズで描いたものを中心にまとめてあります。今年の新作です。
下は『本日は快晴なり』
自分の絵はあまり明るい感じのものはないけれど、これは珍しく明るい作品になったとのこと。

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上は手前が『たったひとつの』、奥が『弟のため池』。後者は実家の近くにできたアパートで、かつてため池のほとりにこんな建物は無く、風景が壊されたようで腹が立ったが、絵に描いたりしているうちに、これもありかな?と思うようになったとのこと。以前はかなり怒りっぽい性格だったのが、近頃は穏やかになったのだそうです。絵を描くことは、感情の吐き出し口になっていると高松さん。
下はラストを飾る『触れる』という作品。これは単体での展示でした。そんなに思い入れのある作品ではないけれど、先にチラシに取り上げられたので展示しないわけにはいかないとのことでchoiceされたそうです。でも並べてみると最後に相応しいかな?と。

展示を観てきて感じたことは、タイトルと絵の組み合わせから受ける印象は必ずしも具体的ではなく、どこかシュールレアリスティックな雰囲気が漂っており、ちょっと突き放されたような気持ちは、マグリットやデルヴォーの作品を観た時に受ける感覚に似ていました。
展覧会のタイトル『届かない場所』、あらためて言い得て妙だと思いました。

自分にはとても親和する作品群でしたので、観にきてよかったです。
お気に入りのアーティストを見つけるにはちょっとしたきっかけが必要ですが、やはり積極的に出かけてみるのが大事だと思います。

会場を出たところに、気に入った作品に投票するボードが設置されています。チケット購入時にシールを渡されますので貼ってきましょう。

今回の展示は前述したように、過去作をre-constructした作品ですが、2017年の新たなproductとして位置付けがなされています。しかし個々の作品には元々のタイトルがあるわけで、図録の巻末に掲載されている図説を参考に紐解いてみるのも楽しそうです。
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素敵な作品をありがとうございました。

会期は残り2ヶ月以上あります。都心からも遠くありませんので、興味を持たれた方は足を運んでみてはいかがでしょうか?

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