いつの頃だっただろうか。
愛知の某地方都市に経理部があった頃に、
社員個人の立替金を、銀行振込に変更したくて、
右往左往したことがあった。

それまでは、自分の出張旅費等は、
一旦本人が立て替えてもらって、
後日に旅費精算し、その場で経理部から
精算金をもらっていた。

これはこれで一般的な精算方法で、
本人も自分が立て替えたお金がすぐに戻ってくるから、
ありがたいでしょう。

個人別に1円までも細かいお金を用意するのは、
経理事務員の手間が、かなりかかるちゅうもんだ。
手元に小銭が無ければ、経理事務員は銀行に行って
両替しなくちゃいけなし、ほんと、面倒なんだよう。

あらかんは、立替金の銀行振込は前職でも経験していたし、
他の取引先会社の担当者との話のやり取りでも、
他社の状況は、把握していた。

何で当社は、銀行振込が出来ないのだろう?
って、そればっかり考えていた。
確かに、よく立替金をする営業マンにとっちゃあ、
すぐその場で、お金が精算出来るのはありがたい。
それが、銀行振込になった日にゃあ、
1週間分くらい自分のお金を立て替えなきゃいけないのは、
営業マンにとっては、面白くないかもしれない。

それに加えて、会社から、各個人の銀行口座への
お金を振り込む際の振込手数料も、少額と言えども、
何百円かかかるのも、立替金の銀行振込化を
躊躇させる大きな要因でもあった。

コストダウンを信条とする製造会社では、
こういったコストが余分にかかる事は
相当嫌うのだ。

コストが余分に発生するならするで、
その代わりの業務効率が、そのコスト増に
さらに上回るものかどうかの検証が必要となる。
この検証が、これまたやっかい、面倒となる。

その時は結局、振込手数料の増加に対する
説明が上層部に上手く出来ず、暗礁に乗り上げ、
この件は、お蔵入りの案件となってしまった。

それから何年経っただろうか。
経理部も東京に移転し、あらかんも単身赴任時代を
東京でおくっていた頃だ。

会社を取り巻く経済環境も、大きく変わってきていた。
金融機関も金融手数料自由化の波が押し寄せ、
銀行間での顧客の取り込み競争も、激しくなるばかりだった。

こんなときに、ある銀行から(こんなことばらしていいんかしら)
「あらかんさん、うちの銀行に社員さんの個人の銀行口座を
作ってもらって、そこへの個人立替金を振込みませんか?
その振込手数料を無料にするから、頑張って、
個人口座作りません?」って提案されたのだ。

あれれ、もうすっかり忘れていた立替金の銀行振込ですか。
振込手数料、無料ですか。
あらかんにとっては、銀行さんからの魅力過ぎる
提案だった。

その後関係部署に、銀行振込の了解を何とか取り付けて、
立替金の発生しそうな社員さんに、ある特定の銀行に、
銀行口座を新規に作ってもらったのだ。

紆余曲折はあったにせよ、何年か越しの夢が実現した瞬間だった。

何かに導かれるようにしての実現、なんて事が、
本当にあるんだと実感した一事案でした。