それでは久慈琥珀博物館で展示されていた標本を、ピックアップして行きたいと思います。

最初は発見されて間もない、小型獣脚類の歯についてです。

見つかった歯ですが博物館のキャプションによると、今年の3月25日に博物館の琥珀採掘体験場脇の9,000万年前の地層から出たもので、早稲田大学の平山廉教授らの発掘チーム(発見者はインドネシアからの留学生で、早大4年のナタニエル・ルナルディさん)により発見されたものです。

標本の大きさは長さ20mm、幅、5mm、厚さは3mmで薄くてナイフ状に曲がった肉食恐竜の歯型ですが、鋸歯(ステーキナイフなどにある細かいギザギザ)がない変わった歯でした。

国内で同様の特徴を持つ歯の化石が福井から見つかっており、フクイべナトルと名付けられたというニュースは皆さんも知っておられると思います。^^

フクイべナトルは異歯性(歯の生えている場所で形が違うこと)で獣脚類なのに植物食だった可能性が高いという研究結果が出ていますが、久慈で見つかった歯については1本だけなので、そこまでの判断はまだできませんが大変興味深い発見です。

 

では詳しく見てみましょう。

表面はつるつるで、断面は薄いレンズ型です。角度を変えて観察すると、光の加減で遠心側(顎の付け根側)に急にカーブの角度が変わっていることが判ります。また観察用の拡大鏡で見る限り、近心側(口先側)遠心側共に鋸歯は見られませんでした。

テレビ、新聞、webを通して得られる写真では、展示されている画の面と同じなので裏側の状態がどうなっているのか、公にされている面が頬側なのか舌側なのか判りませんでした。展示のキャプションでもその所は触れられていないため、これ以上は現時点は無理かと諦めていたのですが、後日この面が頬側であることが判りました。

 

以前福島で被災したチンタオサウルスの修復プロジェクトに、クラウドファウンディングで参加していることはお伝えしてますが、別のクラウドファウンディングで、若い研究者さんを支援するプロジェクト、”新種のラプトルに名前を付けたい/黒須球子さん”のリターンイベントで行われたサイエンスカフェ(5月7日、8日の2回開催)で、その情報を得ることができました。

サイエンスカフェでの内容は、研究中等の理由で詳細は記せませんが、事務局のイベント公表にリンクを貼りましたので、参考にしてみて下さい。^^

 

黒須さんは今回の発掘に数日間お手伝いで参加予定だったそうですが、大発見があったため発掘作業で記者会見の準備ができない平山教授から、発表用の原稿を頼まれて結局最終日(記者会見の日)まで現地に留まることになったそうです。^^;

サイエンスカフェで見せて頂いた標本の写真には裏側(舌側)の写真も含まれ、良く見ると歯冠表面に数条の縦の皺が近心側にあり、典型的なパロニコドン型の歯であることが見て取れました。

※ Wikipedia より、パロニコドンの歯

パロニコドンは北米各地の白亜紀後期(7,500~6,600万年前)の地層から発見される小型獣脚類の脱落歯で、歯以外は見つかっていません。一応トロオドン類の歯ではないかとされていますが、幾つかの形状があり有効とされる特徴は・・・

・頬側の歯冠表面はフラットなこと

・舌側の歯冠表面に数条の縦皺があること

・鋸歯が近心、遠心側ともに無いこと

などが挙げられ、久慈で見つかった化石は時代こそ古いですが、典型的なパロニコドンの歯と思えます。

正式には平山教授の論文待ちになりますが、詳細が明らかになるのが楽しみですね。^^

 

最後にサイエンスカフェでの記念撮影

初日の方が参加人数は少なかったのですが、恐竜倶楽部のメンバー(恐竜パンテオンの高橋さんや、Asaさんなど)ともお話する機会を得られ、楽しい時間を過ごすことができました。^^

 

ではまた。