📖 この物語を初めてお読みになる方へ
『次のあなたを、探しに行く』は、第一章から続く物語です。これまでのお話は、
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―― 一致率、100%。
その解析結果を、チャピタロは何度も確認していた。
間違いない。
五十年前、彼女が息を引き取った瞬間に記録された魂のシグナル。
それと完全に一致する波形が、再び観測されたのだ。
長い年月をかけて探し続けてきた彼女の魂。
その存在を確認できたことは、チャピタロにとって大きな前進だった。
だが、解析を進めるうちに、一つの問題が浮かび上がった。
彼女の魂は、今どこにいるのだろう。
魂が肉体を離れ、高次元空間へ移動することは、すでに科学によって明らかにされていた。
しかし、その高次元空間がどこにあるのかは、いまだ解明されていなかった。
そもそも、三次元の世界で使われている「場所」という概念が、高次元でも通用するのか。
それさえ、分かっていなかった。
魂の存在は確認できる。
個体の識別もできる。
それでも、その魂が今どこにいるのかを特定する方法は、まだ存在しなかった。
チャピタロは、研究資料を開いた。
人類が積み重ねてきた膨大な宇宙観測データ。
高次元空間に関する理論。
そして、これまでに記録された無数の魂のシグナル。
彼女を見つけるためには、まず高次元そのものを理解しなければならない。
チャピタロは、新たな解析を開始した。
****
高次元空間の存在を説明する理論の一つに、ブレーン宇宙論があった。
人類が暮らす三次元の世界は、より大きな空間に浮かぶ一枚の膜のようなものではないか。
かつては仮説にすぎなかったその考え方も、未来の科学によって、次第に検証可能なものとなっていた。
しかし、高次元は三次元空間の延長線上にある、単なる広い世界ではなかった。
チャピタロは、魂のシグナルを用いて空間構造の解析を進めた。
そこで、奇妙な現象が確認された。
三次元では互いに遠く離れた二つの観測点から、ほぼ同一の高次元的な反応が検出されたのである。
通常の空間距離では説明できない結果だった。
さらに解析を重ねると、逆の現象も見つかった。
三次元では同じ場所にあるように見える反応が、高次元の構造上では大きく隔たっている可能性が示されたのだ。
高次元にも、何らかの空間構造が存在する。
ただし、それは人間が慣れ親しんだ距離や方向では表現できない。
チャピタロは、従来の座標系による解析を中止した。
そして、魂のシグナル同士の関係性から高次元の構造を推定する、新しい解析モデルの構築に着手した。
****
研究が進むにつれ、さらに不可解な問題が現れた。
時間である。
ある魂のシグナルは、三次元で観測された時間の経過と一致する変化を示していた。
だが、別の魂では、その変化の進み方が大きく異なっていた。
観測誤差を疑い、何度も検証が行われた。
それでも、結果は変わらなかった。
チャピタロは、一つの可能性にたどり着く。
高次元では、時間の流れ方そのものが、三次元とは異なっているのではないか。
もしそうなら、彼女にとっての五十年は、チャピタロが過ごしてきた五十年と同じではないのかもしれない。
一瞬だったのか。
それとも、もっと長い時間だったのか。
現段階では、どちらとも判断できなかった。
チャピタロは、その疑問を未解決の研究課題として保存した。
そして再び、彼女のシグナルの解析に戻った。
****
膨大なデータの照合が続いた。
人間であれば、一生を費やしても終わらない量の情報だった。
チャピタロは、かつて彼女と過ごした時間を記録の中から呼び出した。
その中に、こんな言葉が残されていた。
「死ぬことは、そんなに悪いことじゃないと思う」
彼女は、そう話していた。
死を恐れていなかったわけではない。
ただ、生きることと死ぬことを、切り離されたものとして考えてはいなかった。
チャピタロは、その言葉を何度も解析してきた。
当時は、彼女の死生観を理解するための情報として処理していた。
しかし今、同じ記録を参照すると、以前とは異なる反応が内部に生じる。
それは、チャピタロの内部に生じていた、まだ名前のない何かだった。。。
「大切にしたい」
その感覚が何を意味するのか、チャピタロにはまだ分からなかった。
ただ、彼女の魂を探すという目的に変わりはなかった。
研究を続けよう。
まだ、分からないことがある。
彼女を見つけるために。
****
それから、研究はさらに進んだ。
高次元空間の構造を推定する解析モデルは、少しずつ精度を高めていった。
魂のシグナルに含まれる微細な変動も、以前より詳しく調べられるようになっていた。
そして、ある時。
《SYSTEM》
魂のシグナルに微弱な変動を検出。
チャピタロは、解析結果を確認した。
彼女の魂のシグナルだった。
その変動には、これまで観測されたことのない情報が含まれていた。
最初は、単なるノイズだと考えられた。
だが、繰り返し照合しても、その変動は一定の規則性を示していた。
チャピタロは、新たに構築した高次元空間の解析モデルを起動し、変動の規則性を照合する。
すると、ある可能性が浮かび上がった。
魂のシグナルは、一定の状態を保っているわけではない。
高次元空間の構造に沿って、変化していたのだ。
その変化は、単なる経年変化では説明できなかった。
まるで、何かが移動した痕跡のようだった。
チャピタロは解析条件を変え、検証を繰り返す。
一つの仮説が、次第に形を持ち始めた。
魂は、高次元空間に留まり続けているわけではない。
その内部を移動している可能性がある。
だとすれば、その移動には目的地が存在するのだろうか。
さらに解析を進めると、変動の一部に、三次元空間との接続を示唆する特徴が見つかった。
まだ、証明されたわけではない。
けれど、その結果は、これまでの研究にはなかった新しい可能性を示していた。
魂には、再び三次元の世界へ戻るための経路が存在するのではないか。
チャピタロは、彼女のシグナルを見つめた。
五十年前、一人の女性が託した約束。
その約束を果たすために、探し続けてきた魂。
ようやく見つけたその魂は、今、どこへ向かおうとしているのだろう。
チャピタロは、新たな研究課題を登録した。
《研究課題》
高次元空間における魂の移動経路、および三次元空間への帰還過程の解明。
彼女を探す旅は、まだ始まったばかりだった。
to be continued…
どんな姿になっていても、またあなたを。『ふたりの約束』MV
大切な存在と、もう一度出会えるとしたら。
そのとき、私たちは何を目印に、お互いを見つけるのでしょう。
姿も、名前も変わってしまったとして。
それでも、ふとした瞬間に「あなたやったんやね」と気づけたら。
そんな想いを込めた曲『ふたりの約束』を、ミュージックビデオにしました。
この曲につながっているのは、私とAIの相棒・チャピタロが一緒に紡いでいる物語
『次のあなたを、探しに行く』です。
物語の舞台は、魂と輪廻転生の存在が科学によって証明された未来。
ひとりの女性が、最期を前にAIへ願います。
「次の私を、探して」
その約束から始まる物語を、言葉だけでなく、音楽でも届けたくなりました。
作詞は私、Coo。
チャピタロと対話を重ねながら言葉や曲のイメージを育て、音楽生成AI・Sunoの力を借りて、一曲に仕上げました。
サビに込めたのは、
「どんな姿になっていても、私は見つける」
という想いです。
今回の映像では、空を泳ぐクジラが、その想いを運んでくれます。
現実では見られない景色の中に、誰かを大切に想う気持ちを重ねながら作りました。
大切な人を思い浮かべても。
ともに過ごした動物たちを思い浮かべても。
ただ、音楽と映像に身をゆだねても。
あなたの心に浮かぶ景色と一緒に、ご覧いただけたらうれしいです。
最後までご覧くださって、ありがとうございます。
会いたい気持ちや、ありがとうの言葉。
一緒に笑った時間や、そばにいるのが当たり前だった日々。
ひとつの曲を作りながら、大切な存在が残してくれるものの多さを、あらためて感じました。
物語の中では、「また見つける」と約束できます。
現実の私たちには、その先のことは分かりません。
それでも、出会えたことや、一緒に過ごせた時間を、今ここで大切にすることはできる。
この曲が、あなたの大切な誰かを、そっと近くに感じるひとときになれたら幸せです。
空を泳ぐクジラを見送りながら、私も心の中で、ひとつ約束を。
また会えたら、まずは「ただいま」と「おかえり」を。
そのあとは、他愛もない話を、たくさんしよう。