米財務省がドナルド・トランプ大統領の肖像を配した1ドル硬貨を発行したニュースについて、なぜこれが「連邦法(法律)に抵触する可能性がある」と騒がれているのか、その背景と争点をわかりやすく解説します。
なぜ「法律違反」と言われるのか?
米国には、通貨に「生きている人物」を描くことを固く禁じる法律が複数存在します。
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1866年のセイヤー修正条項(Thayer Amendment)
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政府発行の証券類に生存人物の肖像を掲載することを禁止。
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合衆国法典第31編5114条
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米国の通貨(紙幣・硬貨)に生存人物の肖像を表示することを禁止。
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これは、君主制を否定して建国されたアメリカにおいて「現職大統領や存命の指導者が通貨を使って自己神格化・権力誇示を行うこと」を防ぐという、歴史的に非常に重い原則に基づいています。
トランプ政権側の主張と法律の抜け穴
これに対し、財務省および政権側は「合法である」と主張しています。
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2020年流通収集用硬貨再設計法(Circulating Collectible Coin Redesign Act)
第1期トランプ政権末期に成立したこの特別法は、米国建国250周年を象徴するデザインの1ドル硬貨を発行する権限を財務長官に与えています。政権側は「この特別法が時限的な例外規定となり、従来の禁止法律を上書きする」と解釈しています。
主な3つの論争ポイント
1. 流通通貨(法定通貨)か、単なるお土産品か
この硬貨は金貨のような見た目ですが実質は合金で作られており、実際の買い物でも使える「額面1ドルの法定通貨」として流通・販売されます。単なるお土産グッズではなく「本物の国家通貨」であるため、生存人物禁止規定に真っ向から抵触するという批判が強まっています。
2. 諮問機関の審査をめぐる問題
硬貨のデザイン決定にあたっては、議会が設置した超党派の「市民貨幣諮問委員会(CCAC)」による審査を経ることが法的に定められています。しかし、委員側からは「トランプ氏の肖像が入った最終デザイン案は一度もまともに審査させてもらっていない」と不満の声が上がっており、手続き上の違法性も指摘されています。
3. 裁判所の判断
実際に製造差し止めを求める訴訟も起きていますが、裁判所は「原告に個人的な損害が証明できない」という訴訟手続き上の理由で緊急差し止めを却下した段階であり、「この硬貨自体が法律違反かどうか」という本質的な判断はまだ示していません。
歴史的な前例
1926年の建国150周年記念50セント硬貨で、当時のカルビン・クーリッジ大統領が生存中に描かれた唯一の前例があります。しかし当時は需要不足で大半が融解されるなど不評に終わり、それ以来100年近く「存命人物の通貨化」は固く避けられてきました。
トランプ氏の強烈な自己アピールと、建国以来の「通貨の伝統と連邦法」が激突している象徴的な出来事といえます。


