終わった後。
ベッドに寝そべったまま、金子さんはこんなことを言った。
「お互いに結婚してるから、いいんだよ」
「どういう意味?」
「結婚してるからバレたら困るでしょ?
だからお互いに秘密にするからバレにくい」
「ああ」
「これからも会ってくれるよね?」
「そうだね・・」
罪悪感に押し潰されそうだったのに、
嫌だとは言えなかった。
だって、嫌ではない。
会いたいと思われることは嬉しい。
この日から、私は夜まで仕事が長引く日の帰りには
金子さんと逢瀬を重ねるようになった。
重ねると言ってもたったの数回。
この求められる喜びに憑りつかれてしまったのだ。
毎日、頻繁に送られてくるメールには
ハートのデコメ
がいつも付いていて、
好きだ 好きだ のオンパレード。
まさか自分をこんな風に求めてくれる人が居るなんて
少し前までは想像も出来なかったのに。
恋をしているつもりになった。
旦那さんの出張中には、
夜中に「一目だけでも」と無理矢理、会いに来たこともある。
子供が寝ていたので、
本当にほんの2,3分だけ外に出た。
ペアリングもプレゼントされた。
「一生、一緒になることは無いけど、ずっと想ってるから。」
というようなことを言われた。
「こんな風に熱い気持ちになったのは、もう何十年ぶりだろう?」
こう言われた時は、
そんなに私のことが好きなんだ
と嬉しかった。
そんな浮かれた毎日が続くわけがない。
3か月を過ぎた頃から、
金子さんからのメールの数が減り、メールが短くなり、
動くデコメは無くなり・・
「会いたい」と言わなくなった。
浮かれた日々が不安な日々に変わる。