「東南角部屋二階の女」

2008年

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父親が莫大な借金を残して死んでしまった野上(西島秀俊)は、祖父・友次郎(高橋昌也)の古アパートの建つ土地を売却することで借金を返済しようと考えています

しかし、祖父は土地を手放すつもりはありません

突発的に会社を辞めてしまった野上と後輩の三崎(加瀬亮)、不安定な生活を結婚で解消しようとする涼子(竹花梓)は吸い寄せられるように友次郎の古アパートに集まります

友次郎と近所の小料理屋の女将・藤子(香川京子)が温泉旅行に出かけたある日、猛烈な台風が接近し空き室だった2階東南角部屋が水浸しに…

 

若者3人の紆余曲折と友次郎が売却しようとしない古アパートの隠された秘密

友次郎と藤子の関係が切なかったなぁ

 

何となく過ぎていく時間の中で各々の道を見つけ出す3人

地味な映画ですが粗い画質が昭和っぽさを出しているのも好みでした

 

ワンシーンだけ、中学生役で伊藤紗莉さんが出演されていました

 

 

 

 

「ある男」

2022年

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原作 平野啓一郎

 

弁護士の城戸(妻夫木聡)は、かつての依頼者・里枝(安藤サクラ)から、亡くなった夫・谷口大祐(窪塚正孝)の身元調査をして欲しいという奇妙な相談を受けます

里枝は離婚後、子どもを連れて故郷へ戻り、やがて出会った大祐と再婚、新たに生まれた女児と4人で幸せな家庭を築いていましたが、大祐は不慮の事故で帰らぬ人となります

ところが、長年疎遠になっていた大祐の兄が、遺影に写っているのは大祐ではないと話したことから、愛したはずの夫が全くの別人だったことが判明したのでした

城戸は、大祐を名乗っていた男の正体を追う中で様々な人物と出会い、驚くべき真実に近づいていきます

 

戸籍を交換し過去も名前も捨てた男を追いかける城戸は日本に帰化している在日3世

調査の過程で、自分は日本人か韓国人か、アイデンディティはどこにあるのか、嫌でも考えざるを得なくなります

 

相手がどこの誰であろうが、過去に何があったとしても、好きになって夫婦になって、子どもに恵まれ、幸せな家庭を築いたのはまぎれもない事実

里枝と最初の夫との間に出来た息子は、里枝の離婚再婚で、里枝の前夫、旧姓、谷口、と苗字が3度変わっています

そして、谷口大祐が谷口大祐では無かったが故に、もう一度里枝の旧姓に戻ることになることに納得がいきません

なぜ、谷口のままでいられないのでしょう

息子の苦悩と成長が哀しかったです

 

個人を個人として規定するものは何か

平野啓一郎さんの『分人』という考え方が浸透し、多様性を受け容れる社会であったなら大祐もどれほど楽だったことでしょう

巷で評価されているラストのカットに思わず膝を打ちました!