双葉社

2021年3月 第1刷発行

2021年4月 第2刷発行

238頁

 

とある町の、路地を挟んで家が建ち並ぶ住宅地

そこに業務上横領で服役中の刑務所から脱走した女性受刑者が近くに来ているかもしれないとニュースが入り、自治会長の提案で自警団を作り、交代で見張りを始めることにします

 

まず、各住人たちの家族構成と基本生活が語られます

問題のある一人息子を家に閉じ込めようと考えている夫婦

母親から見放された姉妹

その姉妹の妹の誘拐計画を企てている一人暮らしの男性

夜になると雨戸を締め切り、外灯も灯さない暗い家

老後を静かに暮らす老夫婦

事実婚の大学生講師夫婦

母親の介護を終え、独り暮らしになった50代の女性

老いた母と暮らすため都心から戻ってきた30代の息子=脱走した女性受刑者と同級生

そして妻に出ていかれ、中学生の息子と2人暮らしの自治会長、この息子の親友は女性受刑者の従兄弟で、閉じ込められそうになっている男子中学生とゲーム仲間です

どの家にも何やら秘密が見え隠れして居心地の悪さが先行します

最も大きな話題となるはずの女性受刑者が前面に出てくるのは終盤に入ってから

彼女が横領事件を起こした理由、脱走した理由と住民との接点が語られます

 

面白味のない住宅地で暮らす人々の生活と、心の中を描き、そこに女性受刑者の脱走という少しの盛り上がりを加えただけの淡々とした物語のように見せながら、実は各家庭の危うさや、事件には至っていないけれどギリギリの状態を上手く組み込んでいて、案外現実にありうる設定かも、なんて思いました

 

津村記久子さんの作品中では複雑な構成で、各家庭の人物像を把握するまでは読みにくかったですが、中盤以降は伏線の回収が見事でサラリと読み終えてしまいました

 

NHKでドラマ化されています

女性受刑者=日置照子は、背が高く細身で地味で印象に残らない顔、ということで江口のりこさんを想像しながら読みました

後で調べたところ、ドラマで演じたのは菜葉菜さんとのこと

なるほど、彼女もぴったりかも

確か、自治会長役が井ノ原快彦さんで興味が湧かなくて観なかったのだったかな

人間関係が把握できた今ならイノッチに関係なく楽しめるかもしれませんので探してみます♪

が、ジャニーズ問題で無理かも…