訳・土屋京子

光文社古典新訳文庫

解説・松本朗

476頁

 

 

映画を観て原作にも興味を持ちました

バーネットは「小公子」「小公女」は子どもの頃読みましたが本作は未読(のはず)

 

インドでコレラにより両親を亡くしたメアリは英国ヨークシャーの大きな屋敷に住む叔父に引き取られ、そこで病弱な従兄弟のコリン、動物と話ができるディコンに出会います

3人は長い間、誰も足を踏み入れたことのなかった「秘密の庭」を見つけ、その再生に熱中していくのでした

 

 

 

主人公のメアリは母親からも父親からも愛された記憶がなく、いつも不機嫌な仏頂面をしていて、性格は横柄で我儘、気の強さだけが取り柄といえば取り柄、という最悪のお嬢様

 

もうひとりの主人公コリンも親の愛情を知らぬまま屋敷の奥に引き籠って暮らし、自分は病気でもうすぐ死ぬのだと思い込んでいて、ことあるごとに激しい癇癪を起して使用人たちを困らせます

 

誰からも愛情を注がれず痛ましいほど歪んで育った二人の子どもたち

大きなテーマは「傷ついた心が自然の中で癒され生気を取り戻していく」

メアリとコリンが秘密の花園にこっそり通って自然との触れ合いを重ねながら次第に笑顔と健康を取り戻していく姿は感動的です

二人の『恢復』に大きな役割を果たすのは、メアリの世話役のマーサ、マーサの弟ディコン、マーサとディコンの母親スーザン

気難しい家政婦長のメドロック夫人も映画ほど堅物ではなくてホッとしました

 

束の間、別世界をのぞかせてもらえる幸せな読書時間でした

映画との違いも、どちらが良いなどはなく興味深かったです

 

光文社古典新訳文庫は大人に名作読み直しのチャンスをくれるシリーズですね