角川文庫

2003年11月 初版発行

2021年 4月 17版発行

解説・永江朗

214頁

 

「幸福な遊戯」

実家と上手くいっていないサトコ、留年して二度目の大学四年生

ハルオ、高卒後、同級生である立人のアパートに転がり込んできて5年が過ぎアルバイトでその日暮らしをしています

立人、サトコと同じ大学の院生

赤の他人、男2人女1人の3人が木造一軒家で共同生活をする話です

3人で暮らす家こそが我が家、ハルオと立人こそが家族と思って暮らしていたのですが、立人が出ていき、アルバイト暮らしのハルオもやりたいことが見つかったから巣立っていくと聞かされます

家賃10万円を一人で負担するのが無理なのは勿論ですが、大学も5年目になるというのにやりたいことが見つかっていない自分に気づかされ大きく動揺するサトコでした

 

 

「無愁天使」

母が亡くなり高額保険金を手にした父と2人の娘

やがて、父と妹は家を出て独り暮らしになった「私」

働くこともせず目につくものを買い漁る日々

家の中は使われぬまま放置された物で溢れかえりまるでゴミ屋敷のようです

やがて保険金が底を尽きかけたことに気づき、仕事を探すことにします

 

 

「銭湯」

大学で演劇に目ざめ、就職はしないつもりが定職がないことの不安に耐えきれず就職した八重子

「幸福な遊戯」のサトコと同じく、実家とは上手くいっておらず、就職していることは内緒で、実家に顔を出せない理由を演劇の仕事で忙しいことにしています

会社の理不尽な上司や先輩OL、銭湯で出会う人々、周囲の誰も彼もが「変な人」なのですが、彼女自身も「変な人」と同類であることに気づくのでした

 

 

3編とも主人公は家族を求めながら家族に恵まれず成長し、屈折したものを抱えている若い女性です

ラストで描写される主人公たちの状態は

「幸福な遊戯」は出口が見えないまま闇に囚われています

「無愁天使」は闇から抜け出せることに気づきます

「銭湯」は出口から一歩踏み出そうとしています

モヤモヤ感いっぱいで読書中の気分は良くなかったです

でも角田光代さんということで最後まで頑張りました

疲れた…

 

「幸福な遊戯」は角田光代さんのデビュー作とのこと

乃南アサさんのデビュー作「幸福な朝食」といい、「幸福」という言葉の持つ意味は捉え方によって様々変わるものですね

 

角田光代さんも乃南アサさんも、お気軽に手を出すと痛い目に合います

要注意(*_*)