「パリに見出されたピアニスト」

原題 AU BOUT DES DOIGTS

2018年 フランス、ベルギー

【Amazon Prime Video】

 

夢を持たずに生きてきた不良青年・マチュー(ジュール・ベンシエトリ)と、パリ、北駅で駅ピアノを弾く彼の才能を見出し一流ピアニストに育てようとする音楽学校のディレクター・ピエール(ランベール・ウィルソン)と教師・エリザベス(クリスティン・スコット・トーマス)を描くヒューマンドラマです

 

窃盗容疑で逮捕されたマチューへのピエールの申し出は音楽学校でピアノを学ぶ代わりに実刑を免れるため清掃の無償奉仕をすることでした

好きなピアノで生きていけるのなら、と必死にピエールについていくかと思いきや、ずっとマイナス思考で生きてきたマチューは自分には無理だと途中で投げ出してしまいます

しかしチェロを学ぶアンナやピエール、エリザベスが根気強く諭してくれたのと、幼い頃にピアノを教えてくれた近所の老人の言葉を思い出し、大舞台で見事な演奏を披露することができました

 

若者のサクセスストーリーは良いものです

マチューの屈折した思いや弱さは分かったのですが、彼のピアノ奏者としての長所や天才ぶりをもっと強く描いて欲しかったです

 

大舞台の後、どうなったかが描かれています

初めは蛇足ではないかと思ったのですが時間が経ってプラスと考え直しました

ただどうしても描く必要があったのかは何とも…

皆さんどう思われたでしょう?

     

 

 

 

 

「ミュンヘン:戦火燃ゆる前に」

原題 MUNICH:THE EDGE OF WAR

2021年 イギリス

【Netflix】

 

原作 ロバート・ハリス

 

1938年の秋

ヒトラー率いるナチスドイツがチェコスロバキア侵攻に乗り出そうとし、イギリス首相チェンバレン(ジェレミー・アイアンズ)は平和的解決を図るべく苦悩していました

緊張が高まる中、ミュンヘンで国際会議が開かれることになり、チェンバレン首相の私設秘書・ヒュー(ジョージ・マッケイ)と反ナチス勢力の一員でもあるドイツ外交官ポール(ヤニス・ニーヴーナー)はそれぞれ現地へと向かいます

大学時代の親友でもある2人はナチスの秘密情報をめぐって奔走するのですが…

 

有名なチェンバレン首相の宥和政策ですが、彼の楽観主義は実を結ぶことなく開戦がしばし延びたというだけ

ロンドンに戻ったヒューは開戦は不可避と覚悟を決め、ドイツのポールは反ナチス活動を継続する決意をより強くするのでした

 

ただのお人好しにも見えるチェンバレン首相を威厳も残しながらジェレミー・アイアンが上手く演じていました

 

イギリス人は英語、ドイツ人はドイツ語を使っていることで緊迫感が強く伝わってきたのが良かったです

アメリカ映画の「ジョジョ・ラビット」は戦時下のドイツ国民の物語なのに全編英語で違和感がありましたから

 

ジョージ・マッケイは「1917」で名前と顔を覚えた俳優さんですが調べたら鑑賞済みの映画に多々出演されていました

(#^.^#)

     

 

 

 

「博士と狂人」

原題 THE PROFESSOR AND THE MADMAN

2018年 イギリス、アイルランド、フランス、アイスランド

【ムービープラス】

 

初版の発行まで70年を費やし、世界最高峰と称される「オックスフォード英語大辞典」の誕生秘話を描きます

 

貧しい家庭に生まれ、学士号を持たない異端の学者・マレー(メル・ギブソン)

エリートでありながら精神を病んだアメリカ人の元軍医で殺人犯のマイナー(ショーン・ペン)

2人は辞典作りという壮大なロマンを共有し、固い絆と友情で結ばれていきます

しかし犯罪者が大英帝国の威信をかけた辞典作りに協力していることが明るみとなり、時の内務大臣ウィンストンン・チャーチルや王室をも巻き込んだ事態へと発展してしまいます

 

三浦しをんさんの「舟を編む」的なものを想像していましたが遥かにそれを超えた内容で辞書編纂は同じでも全く違うものでした

 

19世紀半ば、コンピュータも無い時代に、膨大な用例を集め、矛盾や間違いのないよう検討を重ねる作業はひたすら根気のいる作業で、想像するだけでも頭が痛くなりそうです

辞書編纂作業の他に描かれるのはオックスフォード大学の閉鎖的な体質、マレーの家族、マイナーが誤って殺害してしまった相手の遺族、マイナーの入院する精神病院の治療方針など

マレーの家族の話以外は辛い内容ばかりですが、その中で精神病院の警備員・マンシー(エディー・マーサン)は人間味に溢れ、マイナーを一人の人間として尊重する姿に心打たれました

「おみおくりの作法」で知ったエディー・マーサン、良いですね~

 

言葉の力と可能性を信じていたマレーとマイナーの姿にいくら言葉が変化しても本質は変わらないのだと改めて学んだ気がします

偉大な業績を残した2人ですがマイナーに関しては生前全く評価されなかったのが残念でした

他にも大いに貢献するも忘れ去られた人、置き去りにされた人は多いのかもしれませんね