ねぶたの家「ワ・ラッセ」
昨年9月のシルバーウィークに青森に行ってきました。
青森にウィーンのカフェがあってお菓子を取り寄せたら美味しかったのと、青森出身の人が「三沢の青森屋がいい」と言っていたのを思い出し、1泊で行ってみることになったのです。
羽田空港→三沢空港→青森屋(泊)→青森市内(カフェ・シュトラウス、青函連絡船「八甲田丸」、ねぶたの家「ワ・ラッセ」)→青森空港→羽田空港、という行程です。
青森の魅力のほんの一部分でしたが、小旅行を味わってきました。
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【三沢空港へ】
羽田から三沢には、今はコロナで減便中ですが、もともとJALが1日3往復飛んでいました。
乗ったのは昼下がりの便。J-AIR運航の小さな飛行機でした。
隣にはJALのラグビーW杯ラッピング機。出発は9月21日だったので、W杯開幕の翌日でした。あの盛り上がりを思い出しますね。
三沢は軍民共用空港です。
空港の滑走路等は防衛省の所有。運営はアメリカ空軍。民間は敷地のごく一部のターミナル等を運営しているに過ぎません。
三沢空港に着陸しました。
飛行機が民航ターミナルのゲートに近づきます。
右後ろを振り返ると、右の方から電動ゲートが閉まっています。これが軍民の境界線で、民間航空機が滑走路に出入りする時だけ開閉します。
空港に降り立ち、展望スペースへ。電動ゲートは閉まっています。
飛行機を眺めていると、操縦士さんが窓から手を振ってくれました。小さい子供に混じって夫婦二人で手を振りました。
暫く見ていると、再び電動ゲートが開きました。
滑走路エリアに向かうJ-AIR機。到着から約30分。結構早いですね。
電動ゲートがまた閉まります。
羽田に向けて飛び立つJ-AIR機。軍と民が隣り合う、ちょっとした緊張の空間を目撃したひとときでした。
タクシーに乗って宿泊先の青森屋へ。
途中で「MISAWA」の大きな文字。米軍っぽいかも。
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【青森屋の楽しみ】
星野リゾートの施設に泊まるのははじめてです。
同じ県内の奥入瀬渓流ホテルも星野リゾートですが、そちらは連泊専用で、青森屋の方が手軽です。
着いてみると、観光ホテルをリノベーションしたイメージでした。
ここはもともと、渋沢栄一の元執事が経営する「小牧グランドホテル」だったのですが、経営破綻し星野リゾートが再生したそうです。
着いてバイキングの夕食。地元素材も多く、美味しかったです。
買い物をしてから部屋に戻って、締め切り時間間際に大浴場に。
途中のリンゴの廊下。もう人はあまりいません。
リンゴにもいろいろ品種があるんですね。
青森マップ。青森県は、八戸を中心とする太平洋側の「南部地方」と、弘前を中心とする日本海側の「津軽地方」に分かれるようです。太平洋側は南部氏が藩主の旧盛岡藩、旧八戸藩の領地だったので「南部地方」なのですね。
青森の夏の風物詩、ねぶたも飾られていました。ねぶたは明日、青森市内でじっくり見ましょう。
温泉の入口。12時の閉店時間ぎりぎりだったので空いていました。
風呂あがりにぶらぶら歩く「じゃがめぐ広場」…イベント広場です。夕食後の時間は結構人がいましたが、今は人影もまばらです。「りんご×ほたて祭り」…青森だなあ…。では、おやすみなさい!
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朝。朝食をいただきいてちょっと外に出てみると、ゆったりとした風景。小牧グランドホテルと一体だった小牧温泉渋沢公園です。ここには、元執事が東京から移設した旧渋沢栄一邸がありましたが、小牧グランドホテル破綻後の曲折を経て、東京への再移設が決まったそうです。文化財保護は大変ですね。
このホテルが星野リゾート傘下に入った後の従業員の体験談を読みました。資本が変わっただけで直ちに再建できるものではなく、従業員一人一人の意識改革と努力により今日に至ったんだなあと感じました。会社経営って難しいものなんですね。
送迎バスで三沢駅まで行き、「青い森鉄道」で青森を目指します。
青い森鉄道は、2002・10年の東北新幹線開通に伴い3セク化された旧JR東北本線の青森県内区間です。
東北本線といえば、私が小中学生の鉄道ファンだった時は特急「はつかり」が走る東北の大動脈でしたが…時の流れですね。
各駅停車に揺られて1時間ちょっと。青森駅に着きました。
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【青森で楽しむウィーン・カフェ】
青森市での最初の目的地は、カフェ・シュトラウス。青森にあるウィーンのカフェです。
青森駅から商店街を少し歩いたところに、ありました!
いかにもウィーンという感じの階段を上がり…
ここがカフェの入口です。
妻とともに、ウィーンのザッハトルテとアプフェル・シュトゥルーデルをウィンナコーヒーとともにいただきました。普段は食べ物の写真は出さないんですが、今回は特別です。
全てがとても美味しく、満足でした。多くの人がいて、地元の方々の憩いの場になっているようでした。中には、熱心に写真を撮っている人がいましたが、遠方から来たのかな?
階下には売店が。お土産に、アプフェル・シュトゥルーデルとクグロフを買いました。
ウィーンといえばこの人。皇妃エリザベートの肖像が店内に。
既にお亡くなりになりましたが、この店のご主人は、日本人では珍しく、ウィーンのお菓子職人の称号を得たそうです。美味しい訳です。これからもその味を是非受け継いでいってほしいですね。
お店の外に出ると、カフェ・シュトラウスは地元の老舗和菓子屋さんと一体になっています。和菓子屋の若旦那がウィーンに修行に行ったという訳です。和菓子屋さんの地元に根差す経営基盤があったから、ウィーンカフェも続いているのかもしれませんね。
カフェ・シュトラウスを出て青森駅の方に戻ります。
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【青函連絡船「八甲田丸」】
次の目的地は、今はなき青函連絡船の「八甲田丸」です。今はなき国鉄(日本国有鉄道)の「JNR」も懐かしいです。
青函連絡船は、文字どおり青森と函館を結ぶ連絡船で、東北本線の列車がそのまま連絡船に乗って函館本線につながっていました。青函トンネルの開通に伴い、1988年に廃止されてしまいました。
私は、大学生の時と社会人1年目の夏休みに北海道に行き、青函連絡船に乗りました。私が社会人になったのは1985年ですから、廃止直前の時期だったのですね。
かつては青森駅につながっていたレールも、今は断ち切られています。
八甲田丸は、今でも見学用に旧青森桟橋に鎮座しています。
船内に入って見学してみると、お腹の中の車庫に、昔懐かしいディーゼル特急の姿を見ることができました。
そもそも青森市は、弘前藩が江戸との交易を目的に開いた青森港を中心とする港町です。明治時代に県庁所在地となり北海道への連絡拠点として発展。青函連絡船はまさにその象徴だったのですね。
明治からつい最近まで、北海道の物流や観光を支えた連絡船の雄姿でした。
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【ねぶたの家「ワ・ラッセ」】
青森駅のすぐそばに「ねぶたの家 ワ・ラッセ」があります。季節外れに青森に来ても、ねぶたの雰囲気がちょっと味わえるのです。
夏に街を賑わせたねぶたが所狭しと飾られています。
このねぶた祭りも、今年の夏はコロナの影響で中止だそうです。やむを得ないとはいえ、残念です。
どれも綺麗ですね!でも、この電飾、昔はロウソクだったのでしょうか?そもそも、ねぶたはいつできたのでしょう?
ネットで調べてみると、青森ねぶたはもともとは七夕祭りで、明治時代に巨大な人形を担ぐようになり、戦後に台車化、電飾化が進んだようです。
国の重要無形民俗文化財となっているお祭りですが、時とともに形を変え、今は電気という近代技術に支えられている訳ですね。
弘前にはねぷた祭りがあり、扇形のねぷたが青森との違いだそうです。東北各地にねぶたやねぷたはあるそうですね。
どうやら、「青森=NEBUTA」、「弘前=NEPUTA」というのは、両者が1980年に国の重要無形民俗文化財に登録された時の「定義」らしくて、もともと呼称は入り乱れていた(あるいは同じものだった)ようです。面白いですね。
ワ・ラッセの一角にねぶたの由来が。平安時代に坂上田村麻呂が蝦夷をおびき出すために大きな人形を作ったとの伝説があります。
青森駅からバスで青森空港に行き、東京に帰りました。
青森のほんの断片でしたが、いろいろ回った小旅行でした。
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旅行記はこれで終わりですが、新しい会社に移って全国出張の生活に入って3年。実は結構青森に行き、思い出深いものもあります。
その一端を少しご紹介しましょう。
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【平成最後のねぶた】
出張で何回か青森に行きましたが、1年前、初めてワ・ラッセを覗いてみました。今回のものとはまた違いますので、並べてみましょう。
上で見た今回のねぶたは令和最初のもの、以下に掲げた前回のねぶたは平成最後のものです。
ほんの一瞬ですが、ひととおり見るとねぶたの醍醐味を実感した気になります。出張の合間に短時間ですぐ見ることができ、地元の方も行くと喜ぶと思いますので、お奨めです。
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【青森の夏と冬】
今回青森に行ったのは9月ですが、出張で何回か青森に行って感じたのは、夏と冬のコントラストです。
例えば青森駅。夏はこんな感じです。左がJR奥羽本線、右が3セク青い森鉄道。背景には海を渡る吊り橋「青森ベイブリッジ」が。
一転、冬の銀世界。青い森鉄道が雪に埋もれています。ベイブリッジもほとんど見えません。
続いて八甲田丸。夏の堂々とした姿。
冬は、駅から桟橋の方を見ただけで寒くなります。
少し近づいてみましたが、このあたりが限界でした。八甲田丸も確か冬は見学中止だったと思います。厚手のコートの出張姿で雪国の厳しさを感じました。
冬の北国出張では、足回りにだけは是非気をつけてください。靴底がツルツルの革靴は厳禁。私はいつも靴底ギザギザの黒のジョギングシューズを履いていきます。
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【冬の青森出張~陸路】
青森で思い出深い出張というと、なぜか冬になります。
確か2年前の冬、東北新幹線で初めて青森出張に行きました。
新青森駅到着前、あたり一面の雪景色です。
新青森駅の新幹線ホームから東京方面を望む。見にくいかもしれませんが、スプリンクラーで線路のあちこちに水を撒き、凍結を防いでいます。
新青森駅の在来線ホーム。こちらは雪に覆われています。
入ってきた奥羽本線の列車。これで青森駅まで行きます。
新青森駅舎も雪に霞んでいました。
雪は大変でしたが、私は転勤では北国に行ったことがなかったので、ちょっと心ウキウキしたことを覚えています。
面談先の方も、「こんな季節によく来てくれましたねえ」と喜んでくれ、心がちょっと温かくなりました。
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【冬の青森出張~空路】
今年2月。青森に行くことになりました。
羽田を飛び立つ飛行機。
途中から、雪山です。朝日の作る影が描く稜線…雪の白さとのコントラストが美しいですね!
そしてこれは…十和田湖でしょうか?
もうすぐ青森空港…一面の雪景色です。
出張の合間に、ウィーンカフェ「シュトラウス」に行き、お土産の宅配だけ頼んできました。お茶はまた今度…出張ですからね!
仕事を終えて青森駅前へ。バスで青森空港まで行き、あとは帰るだけです。
ところが、バスに乗っているとみるみる天候が悪化。吹雪になってきました。
飛行機に乗り、飛び立つ寸前。整備の方が手を振って送ってくれます。雪の中ありがとう!と、こちらも珍しく手を振りました。…雪がこんなにひどいけど、大丈夫ですよね…?と祈る気持ちが半分。
飛行機が走り出すと、吹雪がエンジンにどんどん吸い込まれていきます。「滑るな滑るな」と天に祈ります。
ふわっと飛び立ちました。ああ、よかった…!
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空の旅の最後は美しい東京の夜景。あんなに心配したのがウソのようです。
東京湾アクアブリッジと海ほたる…無事羽田空港に着陸しました。
大雪の青森出張もこれで終わりです。
緊張感漂いつつ、厳しい季節に地域のインフラを支える人たちのご苦労も垣間見えた出張でした。
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秋のいい季節の青森旅行、厳冬の雪中出張…同じ街でも、いろいろな機会、いろいろな季節に訪れると、地域の魅力が少しずつ分かってくるような気がします。
これからも、機会があればいろいろな地域を訪れてその魅力を味わってみたいですし、味わった地域の魅力はまたこのブログでお伝えしていきたいと思います。
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最後に、ウィーンカフェ「シュトラウス」の手軽なお土産、アプフェル・シュトゥルーデルをご紹介しましょう。
アプフェル・シュトゥルーデルはカフェで食べたり冷凍で送る本格的なものもあるのですが、お土産用の手軽なものもあります。
味もしっかりしており、最近はシュトラウスのネットショップで買えるようになりましたので、調べてみてください。
わが家の大好物です。
【今日のBGM】
・武満徹 ギター作品集成
鈴木大介(ギター)
・武満徹は言わずと知れた日本の誇る現代音楽の巨匠ですが、ギターの作品があるとは知りませんでした。NHKの「らららクラシック」で初めて知り、思わず買ってしまいました。
・聴いてみると、ギターの音色ってこんなに温かいんだ…と改めて感じました。武満の宇宙的なというか、和声的でありながらややひんやりした響きが、ギターの温かさで包み込まれて、刺激的ながら何とも心地よい響きがします。
・ポピュラーな曲もあり、ビートルズの編曲が4曲もありました。ヒア・ゼア・アンド・エブリホェア、ミッシェル、ヘイ・ジュード、イエスタディで、いずれもポールの作品です。最初の曲は「リボルバー」収録のあまり有名でない曲ですが、個人的には大好きなので、大いに納得しました。編曲はすごくロマンチックで、ところどころに武満らしい響きのワサビが効いています。
・「ノヴェンバー・ステップス」のようなパンチはありませんが、目立たないところにある宝物を見つけたような喜びを感じた1枚でした。