822日付日経新聞の「私のリーダー論」ではピジョン山下茂会長の示唆に富む記事が出ていましたので、私の27年間勤務していた会社のことを思い出しつつ書きました。ピジョンと言えばベビー用品の会社ですが、会長の言葉にはリーダーの持たねばならない意識を指摘していますが、同時に内容的には一般社員が仕事をする時に必要な取り組み姿勢でもあり、ピジョン会長の独自ポリシーと言うよりは、普通に常識的なあるべき論とも感じました。
 
日経新聞の記事の抜粋は次の通りです。
―タイの経験からどうのようなリーダーの在り方を学びましたか。
4つの言葉に行き当たりました。1つは気です。コミュニケーションはある意味で気の交流です。例えば『あまり好きじゃないな』と思いながら人と話していると、何となく相手に伝わりますね。私は突然社長になったので、社員に対してどんな時も、良い気を送り続けなければいけない思いました。次は速度です。ビジネスは時間との戦いなので対応の速さが重要です3番目は他の人がやっていないことを自分でとことん考えてやる工夫。最後は熱意です。」
「単純な4つの言葉ですが、やり続けて成果を出そうと自分に誓いました。そのうち、それまではずっと自分のために働いていたことに気づきました。能力もスキルも給料も自分のことだけを考えていたのです。でも、タイには現地の社員がいて、責任を負うのは私です。彼らのことを真剣に考えるようになりました」
 
何時も通りに、私が27年間勤務した会社ではどうであったかを思い出しつつ批評します。
1)社員に対してどんな時も、良い気を送り続けなければいけない思いました。
   会社の社風として自己本位みたいなところがあり、又上意下達が尊ばれた職場なので、上司が部下に対して「良い
   気を送り」等という発想は無かったと思います。私個人は職場でも年齢が高いという事もあり、役員とか事業部長の
   話なんかは聞き流している方でしたが、若い社員は上司や管理部門から「良い気」どころか色々な注意事項がメー
   ルでどんどん送られてくるので、胡散臭いという風に感じていたのではないかと推測をしていました。
   職場環境の活性化になるだろうと想像して、村社会の象徴である社内運動会をやる事くらいの発想しか出ないし、
   元々精力的に仕事をする雰囲気でも無いのを役員や事業部長以下の管理職が醸成していたので、社内は減点
   主義の減点を避けるとか問題が発生しても無視するとか、そういう雰囲気にも拘わらず社内弁慶が目立ちたいため
   なのか理由は不明でしたが、他人の仕事に対していちゃもんをつけて威張っている社員がいました、「良い気」どころ
   か「悪い気」を社内にばらまいて益々消極的な仕事の作法に進んでいても誰もそういう社員を咎めなかったのが不思
   議でした。
 
2)ビジネスは時間との戦いなので対応の速さが重要です。
   新しい契約を取り付けるも、常に利益率とか売上高を気にして承認を得なければならないという、仕事の流儀なので、顧客の求めるスピード感には追い付いていなかったと思います。要領の悪い社員とか常に保守的行動を旨とする社員は、何かあるたびに上司にお伺いを立てて承認を得て、ゆっくりと次の仕事に取り掛かるという仕事の流儀をしていましたが、多くの社員がそういう仕事の仕方なので、顧客もそういう流儀についていける顧客としか契約できないという結果に陥っていたと思います。特段、業績が悪くても責任を感じない管理者揃いであるのを社員も理解しているので、スピード感を持って問題でも起こした方が余程問題という意識があり、ビジネスのスピード感というのは社内全体に皆無であったと思っています。
 
3)他の人がやっていないことを自分でとことん考えてやる工夫。
   何度も繰り返し書いていますが、社風としての仕事の流儀が常に消極的でリスクを避けて何も問題を生じさせないの
   が重要で、社員は常に道の下ばかり見ているので、前を向いて何か新しい事を考えるという思考は出るはずもないと
   感じていました。平凡を絵にかいたような会社で殆どの事が無思考だと感じていました。私は顧客に対して、常に次
   の一手をえて毎日を過ごしていたので毎日が試行錯誤の日々であったと思いますが、平凡が常識の社内では異物
   みたいに思われていたのだろうと思っていました。
 
4)熱意
   職場が消極的、危険回避、問題無視というような雰囲気なので、若手社員でも中々熱意をもって仕事をするのは
  困難ではなかったのではないかと見ていました。社外に対する交渉が苦手という社風だと思いますが、その一方、異様
  な熱意が感じられたのは社内弁慶が大立ち回りを演じているのを見た時だと思います。少なくとも社外の顧客に対し 
  ては社員としても会社としても熱意を注でいないという風に感じていました。