役所体質の顧客の新システム開発で象徴的だったのは、基本計画の作業が終了した頃、システム開発を受託した事業部から当初提案の機能数では見積金額が増額となるので5システムのうち1システムの開発を除外してほしいという提示があった事でした。後に顧客役員から「騙された」という言葉の出る一因にもなったと思われる事件だと思いました。
このシステム範囲縮小の話があった時、もし開発範囲が変更になるのならば提案書から仕切り直しになるというのが普通だと思いましたが、発注者である顧客は社内で既にシステム開発プロジェクト進行中を宣言しているという面子もあり不承不承了解をせざるをえないという状況であっいたと思います。顧客側のプロジェクトマネージャーも会議で座っているだけで何もできないという状況の中、システムを受託したやくざまがいの事業部からみれば赤子の手をねじるようなものだったとも感じていました。
この時の状況を考えてみると、提案時と開発範囲を変えるということならば、システム開発を受託した事業部の元々提案時の社内決済が無効になるということなので、再度稟議を上げて審議をしなくてはならないという事態と思いましたが、社内では費用的に損にならない話ならば問題なしとされたようでした。会社の看板であるシステム開発という業務に対して、役員の意識や能力レベルが図らずしも知れてしまったという事だったと思います。
元々の見積もりが何故変わるのかというのは、システム開発を受託した事業部では見積もりが出鱈目であったという事になるし、そうでなければ基本計画を終えてシステム開発の難易度が漸く理解出来てシステム開発を受託した事業部にとっては勘違いをしていたことが証明されたということだと思いました。この件は続きがあって、一旦は顧客もシステム内容の縮小に合意したものの、その縮小した筈の基本設計が半年近くも遅れたという事になり、この時も費用は全て顧客に請求していました。
早い話が、受託したシステム開発は提案時から8割規模に縮小されて、半年もの作業延長で費用は増加したものの満額請求出来たので、結果としてシステム開発を受託した事業部にとっては利益が大幅に増加するのは当然であったと思いました。
契約上プロジェクト終了後、会社としては利益が大きいとしてシステム開発を受託した事業部のメンバーが表彰されたということでしたが、実務上は提案時から自ら開発範囲を縮小し、自らの能力不足で延長された費用を無抵抗な顧客から満額得た事が高額な利益につながったのであったと思うと、会社の表彰という行為は社員の金策に対するものであって、顧客が満足するシステムを提供したものではないという事であったという事を証明するようなことであったと感じています。こういう場面で会社としての力量というものが知れてしまうということではなかったのかと感じています。同時に、顧客の立場に立って仕事をするという思想は絶無で、会社利益優先の思想が極めて鮮明に出ていたシステム開発プロジェクトではないかともいえると思いました。
このシステム開発の仕事は、契約が完了してから3年程も経過して段々と忘却のかなたに行くような出来事でしたが、未だにシステムに障害が発生してるならば契約は終了してしていても、システム開発は完了していなかったということの証だと思いますが、そうではない事を祈るばかりの気持ちです。