定年後に就職した1年半の派遣社員の契約期間が終わる半年ほど前になると、そろそろ次の就職先を探したいと思う様になりました。人間というものは不思議なもので、毎日働いているという日常を何十年と過ごしていると会社という職場に来ることが当たり前に思えてくるのでした。又、とっくに定年をすぎているのに何故働くのかという疑問は全く起きなくて、自分自身は体力的にも能力的にも十分仕事ができると思っていたこともありました。
派遣という仕事について右も左も分からず、誰も指南してくれる人もいないので手探りで就職活動を始めたというのが正直なところでした。
直ぐ思いついたのは、現在派遣している会社の営業マンに相談するのが一番手っ取り早いと思い、その営業マンが何かのついでに派遣先の会社に来た時を狙って相談をすることにしました。中年の女性の営業マンで、私が簡単な経歴書を渡して説明して次の派遣先を探して欲しいという話をしても反応は「分かりました」という返事だけでした。契約期間の終わる9月に再びこの女性営業マンが私の派遣先の事務所に現れたのですが、その時の話を聞いてみると真剣に私の就職先をさがしているようには見受けられませんでした。単なる事務仕事をするだけのルート営業マンで、仕事を探すという事は出来ない様に思えました。私が相談を持ち掛けた最初から分かっているのであれば「出来ません」と言えばよいのに、そういう態度を見せなかったので出来の悪い営業マンと判断せざるを得ませんでした。9月になり、この女性の営業マンが事務所を訪問してきた時、派遣終了後の色々な手続きの説明をしていても「はいはい」という空返事しかしませんでした。
定年退職しているので普通に社員として就職先を探すのは難しいと思えたので、最初から派遣という業種で何か仕事がないかとインターネットで探し始めたのですが、派遣会社という会社が星の数ほどあるというのを始めて知ったのはこの時でした。
昼間は派遣先で何かしらの資料を作っていたりするので、当然ながら会社で就職活動をするわけにもいかないので、就職先を探そうと思うと休日くらいしか時間はありませんでした。
最初に仕事を探そうとしてインターネットで探すと事務職というのが多数あり、当然ながら私でもできる仕事だと思って登録をしたことがありました。そのサイトでは、登録後に派遣会社への訪問日時を決めるというメニューが出てきたので自分の行けそうな日も同時に入力をしました。翌日、この派遣会の年配と思われる男性から電話があって「間違いだと思いますので来社は不要です」と言われてしまいました。何で断るのか理由が不明だったので帰宅後に再びその派遣会社のホームページを見て、事務職採用と言っているものの若い女性ばかりの派遣をしている会社らしいということが判り、相手が慌てて電話をしてきた理由も理解ができました。
自分の出来る仕事なら何でもやろうと思っていたので、簡単な事務でもいいのかなと思ったのが間違いの原因でした。しかし、派遣会社の職種を見ていると簡単な事務職か、情報システム関係でもプログラマという職種ばかりが多く自分が出来そうなものは少ないという事に気づきました。
或る大手の派遣会社に登録した後に「システムの上流工程の仕事がきています」という紹介をうけたことがありました。これは私の出番かなというので、仕事を終えた夕方に派遣を要望している企業を派遣会社の営業と一緒に訪問しました。
事前にその会社のホームページで事業概要を調べると規模が小さい会社なので、小さな会社にも関わらず難しそうな課題に取り組むのが不思議に思えました。面談の際、話を聞いてみると、自分の仕事の相談相手が欲しいという事と既に出はいりしている業者がいるというので、合い見積もりのために呼ばれたのではないかと思いましたが、案の定決まりませんでした。この時、派遣会社の営業マンという27・8歳の元気の良い男に「派遣先はどういう職種が多いですか」と質問すると「下流工程ばかりです」という答えがあって、私の就職先を決めるのは難しいという事が想像できました。
この時、派遣会社の仕事の仕方というのも理解ができました。派遣を請ける部署は女性が対応していて、登録者からマッチしそうな人を探すという仕事をしていて、その後に外回りの営業マンにつなぐという形で仕事は進んでいくということが判りました。外回り営業マンの企業訪問は、既存の契約先だけでなく新規の企業も一日中ぐるぐる回るという大変な仕事だという事も分かりました。派遣会社の営業マンはルート営業の一種で、こういう体力勝負の営業は長年続けられるものかどうかという事についても疑問を持ってしまいました。
私は登録した派遣会社から何回か仕事を紹介されて営業マンと企業を訪問しましたが、いずれの場合も非常に若い人ばかりだったのが印象に残っています。
派遣者の採用は採用する相手に主導権があり、派遣会社の営業マンは単にどれ位マッチした人材を連れてこられるかどうかにかかっているだけで、営業マンのスキルというものは普通に対話できるだけの良いという風にも思いました。
兎に角、派遣会社に登録しなくてはいけないという事を思い、土日に登録をしては返事を待つという事を続けましたが、面談さえ行きつかないという日々が過ぎていきました。そういう事をして過ごしていた時、或る企業で派遣事業をしているという子会社の営業マンから面談してもいいですというメールが届きました。派遣先の会社で仕事を終えてから、夕方にその会社を訪問しました。都内のビル街で全然知らない場所でもなかったのですが、夜になり街燈で見る景色は昼間とは違い目的の会社を探すのに少しばかり手間取り、約束の時間よりも少し遅れて到着しました。
この会社に派遣登録したいとういう事で訪問したのですが、対応した営業マンが少しばかり変わった人でものすごく懇切丁寧に話をしてくれました。経歴書は書き方の修正をしてくださいと言われて、普通は経歴書を受け取るだけの作業だけなのか、ここまで親切なのは何なのかと不思議に思えました。
私は高齢なのを気にしていましたが、営業マンから最後に言われたのが「自分のしてきた仕事で探してください、きっとありますから」と言われた後で「安易に事務作業とかというのは女性の仕事で駄目ですよ」とアドバイスされました。
この営業マンに言われたアドバイスが以降は、派遣の職業はシステムエンジニア職のみ探そうと決めた契機になりました。