新システム開発の中断方針が8月中旬に決まってからは癖のある次長はプロジェクトの進行中と相変わらずの日常を送っていたようでした。プロジェクトが中断するとプロジェクト状況を探る私の個人接待も必要が無くなり劇的に頻度が少なくなりました。それは癖のある次長も当然のことと分かっていたと思います。それでも時々はどういうプロジェクトの後始末をしているかと聞きたくて接待をしていました。
その時に聞いた話ではえらくのんびりとしたもので「今制作途中の設計書は仕上げる」とか「開発中の新規のプログラムは完成させる」とかいうもので、プロジェクトは中断ではなく縮小と言ったほうが正確な表現だと思いました。プログラマが100人以上もいたので急には止められないという事情を外資系コンピュータ会社から泣きつかれて、裏金をもらった恩返しのつもりで引き延ばしをしていたのかもしれませんでした。
会社の費用とはいえ100億円もの金を使って始めたプロジェクトが完遂できすに終わって癖のある次長はどう進退をきめるのかと見ていたのですが、特段そういう事は考えていないようでした。本人に「100億円もかけて出来なかったんですよね」と質問をすると「そんなに使っていないよ」という返事がありましたが、その返事の意味は自分の小遣いでも使うような感覚だったのかなと思える時がありました。元々管理能力が無いので所詮これだけのプロジェクトを仕切れなくて、只やみくもに花火を打ち上げて騒いでいただけの事でしかなかったというのが私の感想でした。
上司である取締役も暫くすると部署が企画部門に変わりましたが、社内では大金を使って中国まで遊びに行ったとか、外資系コンピュータ会社とは裏金授受とかあったのかも知れないとは薄々察知されたので、そういう事情も背景にあるのだろうと思いました。
癖のある次長も次長から課長に降格というのを社内の掲示板で公表されたのですが、それ以上の事はありませんでしたので、何とも面白い人事だと感じました。
 
癖のある次長からは色々なクレームを投げつけられたのですが、私で解決できるものは社内の誰にも相談もせずさっさと全部解決して、残った1件が1年以上も係りました。多分社内の私以外の人間では誰も解決は出来なくて、さっさと1千万円を支払って終わりにしろというのが、私以外の社員が対応していたら管理職から出る言葉はそんなものだろうという一件でした。
これは当初の見積書に書いた内容の仕事ができていなので、その出来ていない分を支払えという内容でした。元々プロジェクト方針が無い状態で始まったので、途中で新しい要件がどんどん発生し、現場ではプロジェクト開始を優先して見積書に書いていない仕事を実行していたのでした。癖のある次長の言い分は実態を全く理解していないもので、1千万円返金をさせたいがための言いがかりでした。対抗策として毎月1回のペースで過去の作業実績を数字を交え解説し、実質私の勤務していた会社は赤字ですという架空の計算式を作って対抗することにしました。
癖のある次長よりは私の方が理屈を作るのは私が上というのは分かっていたので、最初から勝算はあると思っていたのですが、相手も社内での評価を挽回しようと必死で食い下がるので困りました。100億円も使って1千万の金を返して貰っても大した利益も無い話なので、それよりも100億円を使った外資系コンピュータ会社に億の単位で請求するのが筋ではないかと、普通の人間なら普通にそう考えると思いました。しかし、外資系コンピュータ会社から常識外の裏金を渡されていたので何の反論もできなかったので、金を取りやすそうな私の勤務していた会社に言いがかりをつけたという事と理解していました。
根拠の薄い要求に対しては徹底的に理詰めで対向して、癖のある次長の要求が如何に理不尽であるかを毎回のように説明したのでした。
この時、会議に出てきたプロジェクト責任者の取締役は「この人がこう言っていますが・・・」と発言して他人事であるような態度で関わりたくないというが分かる程でした。一方の私の勤務していた会社の営業部長も同様で私にすべてを任せているばかりで何も解決策は出てこないのでした、こういう事案が出てきた時に本当の能力が試されるというので私はこりゃいかんなと理解しました。そういう役立たずの人材を管理職につけるのが社風とは分かっていましたが、こういう時は邪魔なだけで何の役にも立たないので少しばかり神経がいらいらしました。難癖をつける顧客の癖のある次長とか、自分の勤務する会社の無能な管理職とか、どちらも大して変わりのない自己保身の極みみたいな人間の間に私が入って孤軍奮闘している図式に思えました。
そうこうしているうちに、顧客のプロジェクト責任者である取締役は異動になり、社外から新任の情報システム部長が着任しました。この件は事情の分からない新任部長のもとで継続することになりました。