この顧客で新システムの開発が始まってから中断するまでの3年半もの間に癖のある次長を自腹で接待したのは以前にも記述した通りですが、この接待で食った物について忘れられないのは人間と言う生物の特性がそうさせたのだろうと思います。特に私は酒が飲めないのでウーロン茶ばかりを飲んでいたので余計に料理の質が気になったのかも知れないと思います。
癖のある次長は尋常では無い酒の飲み方と尋常では無い性格でしたが、私と酒を飲むときはスポンサーであるというのを意識してか、会社での会議での席上の見下した会話に対して、極めて普通の会話に終始するので相手にするのには楽でした。辛いのは私の財布ばかりという事でした。
接待は昼食と夜の酒席との2部構成でした。昼食は顧客の会社の近くで蕎麦屋とかすし屋で食べるくらいなので値段も知れたものでした。それでも癖のある次長は午後の会議の時は大抵早めに来ませんかと誘ってくるので12時前には会社の前で待ち合わせては近所の同じ会社の社員が来そうにない店を選んでは行きました。
データセンターに来る必要の無いくだらない用事で昼間にデータセンターに来るときには、データセンターは住宅街にあって気の利いた店も少なく、地下鉄駅前の和食屋がランチの定食で店の看板料理を安く出していたので何時も利用していました。今ではその看板料理が何であったのかも思い出せない程に美味しくはなかったというのは覚えています。
話は少し脇道にそれますが、昼飯の思い出で面白かったのは顧客の情報システム部長と癖のある次長と一緒に埼玉県の小川町にあるデータセンターを見学した時の事でした。そのデータセンターは埼玉県のものすごい田舎にあるので訪問する時は、顧客は電車で東京から目的の駅まで行ってからタクシーで行くか、ないしは東京から社用車で行くしかないのでした。
この時は顧客の高級な社用車を借りて朝9時前には東京都内の会社を出発して埼玉のデータセンターに向かいました。データセンターの営業マンからもらった地図を見ながら進みましたが、高速道路はいいとしても一般道に入ると田舎なので標識も無く少し迷いながらのろのろと進み目印の石屋とかの風景を見つけて漸くたどり着くことが出来ました。
この田舎のデータセンターでは会社概要やデータセンターの説明とコンピュータの設置場を見学して、見学会の終わりが12時の少し前になりました。データセンターの営業マンが折角なので名物の昼飯にご案内しますというので、田舎の商店街の端にある風格のある古そうな店に案内されました。旅館業と兼業しているような店らしいと思えました。
こういう田舎の格式あるらしい店なので「うな重」とか「懐石料理」でも出るのかなと期待が膨らみましたが、出てきたのはお茶漬けでした。正式な名前は失念しましたが、いずれにしても地場の名物料理という能書きを聞きながら食べた思い出があります。
同席のデータセンターの営業マンは我々が気落ちしているのも感じていないようで「時々はお客様からカブトムシを持ってこいと言われて、この近くの山で捕獲して持って行くこともありました」という話をして場を盛り上げようとしていました。
お茶漬けは、特別に美味しいと言うほどのものではなく普通のお茶漬けだと思いました。帰りの車の中でも「昼食をご案内しますと言ってお茶漬けとはね???」という事を誰もが何度も繰り返しながら東京の顧客の会社まで戻ったという思い出があります。