新システム開発のプロジェクトが開始されて以来1ケ月経過しても私の勤務する会社には注文書を提示しないような状態が続きました。
何せ開始早々に、開発する外資系コンピュータ会社と私の勤務する会社との仕事の分担が決まっていなかったという事は以前の項目で書いた通りですが、そういう本来プロジェクトを開始する前に段取りすべきことが何もできていなくて、大げさな開始のセレモニーをしただけで実作業になだれ込んだというような事で混乱があったのは事実ですが、私は社印さえ押印すれば提出できるような注文書をとっくに渡していたのですが、癖のある次長はどういう訳かなかなか差し出そうとしませんでした。電話を掛けると何時も会議中ですと返事があるのですが、癖のある次長はどのみち聞いていても内容の分からぬ会議ばかりだろうというのは想定していましたが、形ばかりにとらわれて会議に出席し、朝から晩まで忙しい忙しいと言っているというような状況は容易に推測できました。
電話が通じないのでメールでも何回となく督促してもなしのつぶてで、これも私がプロジェクトを仕切る外資系コンピュータ会社のプロジェクトマネージャーを会議の席上でこてんぱんに責めつけた事も理由の一つかなとは思い当たりました。
外資系コンピュータ会社でもこれほどの大規模のシステム開発の経験が少ないので、プロジェクトを組んだ時にプロジェクトマネージャーとして転職してきた年配の男が担当をさせていました。会議の席上で私がシステム開発の一般論を述べても理解が出来ないのを見ていると、外資系コンピュータ会社では普通によくある口先ばかり達者なエンジニアというので、レベルの低い客先にはもってこいの人材だったかも知れませんが、私の勤務している会社との仕事の分担という具体的な話になると理解が全く出来ないようでした。私は仕方がないので、システム開発を解説した資料を探しては、会議の席上でどういう作業が発生するのかを説明せざるを得ないような状況も発生して、私は一人で憤慨するばかりでした。
それに銀行の子会社から派遣されたプロジェクトマネージャーもネットワーク構築という肝心な作業をずっぽりと抜け落ちていたのを私が指摘して大騒ぎになった事も一因かなとも考えてしまいました。
 
私はメールと言う感情の入らないものは好きではないので、何度も癖のある次長に対して電話をしていると「契約担当が癖のある次長の子飼いの係長だ」という風に情報システム部員から聞いたので、今度はその係長に何度も電話をして何とか話がつながりました。
その係長は癖のある次長から私の作成した見積書や注文書をもらい、初めて中身をチェックしたようでした。というのも私の作成した見積書に誤りがあって、その係長から一部修正してほしいとの要請がきたので漸く話が進むと確信したのでした。この時に、見積項目数は決めているものの内容が未定な要件についてはみなしで係長と相談して決ました。
そういう調整が終わると漸く、数億円の注文書を係長からもらうことができたのでした。当の係長も何で私の勤務している会社だけ注文書が遅れたのでしょうかと少々いぶかし気で、申し訳なさそうに注文書を受付の横のソファーに持ってきてくれたのは忘れがたい光景でした。
こういう事を平然と行う癖のある次長の態度には呆れるばかりでしたが、私はプロジェクトがこけた時に私の勤務する会社に影響が及ぶことだけが心配になっていたのも当然でした。ベテラン営業マンとしての対応力が求められるとも感じて、色々な策を考えざるを得ませんでした。こうして私が一人で苦労するのは何時もの事で、私の勤務している会社の連中はそんな雰囲気はどこ吹く風で「情報システム部長に挨拶に行かなくていいかね」とか言ってぼけまくるのでした。