新システム開発のプロジェクトが開始され、見慣れぬ大勢の人がぞろぞろと情報システム部の部屋の周りの会議室に集まっているのを見て何かをやっているのは分かると風に感じました。というのも、癖のある課長はプロジェクトが開始されると課長職から次長職に昇格してますますのぼせていたのかどうか分かりませんが、私の勤務している会社に対してはシステム開発の全体像が分かる工程表を見せようとしませんでした。私が要求しても中々出さなかったのは何か思惑があったとしか思えませんでしたが、私は多分外資系コンピュータ会社との裏金の推測をされるような資料は出したくなかったのかもしれないと推測していました。
私は仕方なく、私の勤務する会社のシステムエンジニアが参加している分科会で入手した全体スケジュールのコピーを貰って漸く全体像が分かりました。そこにはどこのベンダーが何を担当して何時迄に仕上げるかは記述していましたが、私の勤務する会社の仕事について何も書いてありませんでした。この資料は銀行の子会社のプロジェクトマネージャーを担当している男が作成したという説明でしたが、何とも頼りない工程表で、こんなものでシステム開発ができるのかなというのが私の最初の感想でした。
業務システムについては私は取引先会社の全貌を把握している訳ではありませんでしたが、工程表を見てこれで全部なのかな、大丈夫かなと癖のある課長に問いてみましたが反応はありませんでした。何もかも丸投げでシステム開発が出来ると空想している輩には到底理解できていないと考えた方がいいかと思ったのでした。
私はその工程表をじっくりと会社の自分の机の上で眺めていると、何か足りないのではないかと直感が働いて、この工程表を1週間ほど眺めてシステムのイメージを頭の中に入れて行きました。そうすると、工程の中にはサーバーを導入するという項目はあるのですが、そのサーバーや既存のシステムを接続するネットワーク構築の項目がすっぽりと抜け落ちているのを見つけたのでした。
2・30人もいる外資系コンピュータ会社の大勢のベテランのエンジニアや銀行子会社から派遣されているマネージャーとかいわれている連中は、誰一人としてこの大きな欠陥に気づかなかったのが非常に不思議になるくらいの凡ミスでした。
そのミスを癖のある課長に指摘すると、癖のある課長は烈火の如く怒って外資系コンピュータ会社を会議の席上で叱りつけて「提案したお宅の責任でネットワークを作って下さい」と言ったものの、私は内心どうせ裏で金を渡されてうやむやになるんだろうなと思っていました。
私がこのミスを発見したのが契機でネットワーク設計のプロジェクトに強制的に参加をさせられました。私は自分の勤務している会社で仕事を担当出来ないかと思いましたが、癖のある課長の会議での剣幕はどこ吹く風で、いつの間にか何もなかったかのように外資系コンピュータ会社が自分の領分として担当することになりました。癖のある課長の剣幕がどこかに飛んで行ったのは、外資系コンピュータ会社から何かされたんだろうなというのは容易に想像できるのでした。
プロジェクト開始早々に私が銀行子会社のプロジェクトマネージャーの仕事のミスを暴露したことで、このプロジェクトマネージャーとは自然と疎遠になりましたが、この男は以後の仕事でも私の勤務していた会社には何の利益をもたらさなかったので、自然と疎ましい関係になるのは当然の事でした。