癖のある課長との付き合いも段々深まっていくと、この課長に私は酒も飲まないのに夕食に酒を加えた飲食だけでも大変だなと感じていました。というのも、自分の力を部下に見せたいと思ったのか、食事をはじめると「部下を呼んでもいいですか」といやおうなしに私に認めさせると言うようなものでした。会社で残業をしている2・3人の若い連中を店まで来させて一緒に飲食をする羽目に陥るのでした。費用が高くなる時は領収書を2枚に分けてもらい、日付もいれないで2回に分けて接待申請をするというような面倒な事をしていました。
上司である事業部長や営業部長は何人も変わりましたが、接待の支払いは嫌々というのが分かるような認め方をしたので私も何時も気分が悪くなるのでした。接待で自分が酒をどんどん飲んで肝心の接待相手の事などは気にもしない営業の本当の辛さが理解できない連中ばかりでした。
こういう連中には、好き勝手放題に酒を飲む癖のある課長や癖のある課長には社内で逆らえず耐えている部下の面倒を見ている私の気苦労なんかは爪の垢ほども分からんだろうなと思っていました。売上を上げる時は知らん顔をしておいて、わずかな接待の金を使う時は嫌な顔をする、上司としては問題のある連中が会社の幹部になっていたのは、それが会社の実力というものかなとも感じておりました。
癖のある課長は段々と接待の度合いが深くなると、2軒目に行くようになりました。当然私が支払い掛かりとして同行させられた訳です。酒も飲まないので夜11時も過ぎると早く帰りたいと思うばかりだったので、2軒目は非常につらいものがありました。
2軒目は飲み屋ですが、いわゆるキャバクラという類の店で、若い子がバニーガールで話し相手になるという店で、癖のある課長は常連のようでした。外資系コンピュータ会社からの裏金はこういう店で使っていたのかとうかがわせるようなものでした。
この店では癖のある課長は常連さんなので、少々混んでいても客を移動させて席を作らせてしまうほどでした。ここも最初は癖のある課長と私の2人だけでしたが、部下を連れてくると金額が張って接待費の処理には大変苦労しました。大枚を自腹を切っても仕事がうまくいくのであれば仕方が無いとあきらめていました。又、癖のある課長はこの店の店長とも懇意と言ってましたが、私にはそれがどうしたと言う風にか思えませんでした。金遣いが荒いというだけの事ではなかったかなと思ったのでした。
ここに癖のある課長の好きな見た目にかわいい女性がいました、昼間は劇団に入って練習をしているということで、後にある人からの聞き伝えでは、癖のある課長はこの女性の出演する演劇を見に行っているという事も聞きました。
私は質問係りなので酒なんか飲まないで「どうしてこんな場所で働いているんだ」という質問を興味本位にかわいい女性にすると「関西で学生の頃からこういう商売をしていました」と聞いてびっくり、関西のK大学に通学していた時にバニーガールをしてから以来だそうでした。そして何で東京に来たのかというのはとうとう聞きそびれましたが、多分演劇でもやるつもりで上京したものの、生活のためにバニーガールをしているらしいと想像してしましました。この店でも顔がかわいらしいので人気者のようでした。
この店では時間制限があって制限時間を過ぎると料金が増えるので気が気でなかったのですが、癖のある課長に合わせないといけないと思って眠い目をしょぼしょぼさせて若い女性とくらだぬ話を続けるのでした。私にはこういう場所がなんでいいのかさっぱり分からず、酒を飲まないので若い女性と話をしても高揚感がないからなのかとも思いました。私はこういう場所で働く女性が金の為とはいえ少々過酷な商売かなと思えて憐みも覚えるようなものでした。店の女性から「xxさん、xxさん」と呼ばれるのが癖のある課長はうれしいらしく、同時に支払いの気兼ねも無く気前よくボトルを入れていました。
嬌声を発して喜ぶ癖のある課長に対して、私は早く飽きて帰ろうと言わないかなと思ってぐったりしていました。店内の様子を見ていると、客がすくないとバニーガールが私の前にも来るので何か質問をしてやろうと思い「昼間は何をしているのですか」と尋ねると多くは「学生しています」という答えなので驚くばかりでした。稼ぎのいいアルバイトというようなものかなと思いましたが、夜が遅いし少々危険なアルバイトかなとも思いました。癖のある課長の好きなかわいらしい顔をした女性も「帰りは自転車でフルスピードで帰ります、危険な場所は特に・・・」と言っていましたので、私の懸念はあながち外れてもいないと思ったのでした。
その学生に「明日の授業は・・・」と質問すると「ええ、明日は午前からありまして・・・」と答えるので「早く帰らなきゃあいけないね」と暗にこんな場所でアルバイトなんかするなと言うような言い方でした。それでも話は終わらないので「何を勉強しているんだ」とか相手が嫌がるような話ばかりをして、癖のある課長が帰るのを待っているのでした。私は癖のある課長の財布のような存在なので店を出る時にカードで支払い領収書をもらうのでした。
夜1時も過ぎて漸く解放されて、翌日朝5時には起きるのが大変だと思っては気も重くなるのに、癖のある課長はご機嫌で「それじゃあ」と街の何処かに消えるのですが、私はネオンも消えて薄暗い駅前のタクシー乗り場で眠い目をこすっているばかりでした。