この会社の癖のある課長には色々な嫌な思い出ばかりですが、中でも一番いやだったのでは電話が来た時でした。毎度いちゃもんをつけたり、不平を言ったり、様々な感情的な表現が用件と共にのべられるので、電話が掛かってくるのが分かっている時は若干心の準備ができていましたが、案外突然に怒鳴り込まれるという事が多かったので神経的にも苦労がありました。言ってみればそういう代償を会社からほしいくらいでしたが、鈍感無知な管理者ばかりの会社では所詮無理というものかなとも顧客を担当していた10年以上も感じていました。
別の観点から見てみると、癖のある見えのある課長より私の方が年配で営業経験も豊富なので逃げ方が分かっているので何とか続けられたのかなともずっと思ってはいました。
裏金作りの手助けをするようになってからは、癖のある課長も少しは態度は軟化しましたが、それでも時々ものすごい剣幕で電話口から怒られることも度々でした。時々、技術者がへまをして問題を起こした時などは、怒りでボルテージの上がっている癖のある課長には平身低頭でお詫びに出かけて、事実を説明するのが一番良しと言う記憶が多々あります。そして、案外問題の発生のきっかけを作ったのは情報システム部の担当者ということになると急に怒りの矛先は行先を無くして、詫びると言うことは「顧客だから」という理由でしないという風に考えている人間なので、お詫びの会議は尻切れトンボみたいな雰囲気になるのでした。
上記の事情だけが理由ではありませんでしたが、私は会社から支給されていた携帯電話を使う事は殆どありませんでした。日中の会社に掛かってくる電話だけでも少しばかりの緊張を強いられているのに外出先まで追っかけてこられてはたまらんという気持ちが強かったということでした。個人的な感想では、私の勤務していた会社でわざわざ携帯電話で連絡をするような急ぎ用件は皆無であったろうということでした。仕事自体に緊急性のあるものは少ないし、第一企業としてそういう投資をして見返りはどれほどのものかという事を何時も思っていたのですが、多分そういう事に思いが至る人はいなかったと思います。単に便利と言うだけで業績も上がらず、顧客の評判を上がらず、何一つ変わらなかったと思って、携帯電話を忙しく見せる道具に使っていた連中をみていたのでした。
 
振り返ってみれば、癖のある課長からの電話が来ること自体がすごく嫌な事ばかりだったのでした。会社の業績底上げする「見積もりを下さい」と言われればどういうお返しを期待しているか聞かなければならんと思って心が折れてくるし、契約書の文面がおかしいといちゃもんをつけられれば「はいはい、ご希望の通りに」と言って相手をなだめなくてはならないし、クレームの時の首でも取ったように見下されて大声で怒られる時はひたすら耐えるしかないというような具合でした。
それでも営業経験の長い私の口からは「何時も貴重なご指導有難うございます」といって相手をおだてて少しは怒りの矛先をよけていました。これは以前に勤務していた時の上司から「客から矢が飛んできた時は、さっと頭を下ろしてやり過ごすのが定石ですよ」と営業マンの心得を学んでいたのが少しは役にたったのかと思いました。そういう癖のある課長との電話を横できいている連中には「おや、何だか楽しそうだね」と言う風にしか聞こえていなかったようで、私が退職する時に某管理者から「あなたはあの会社と楽しくやっていると思いましたが」というものすごい勘違いをしているコメントを聞いて、理解度のレベルの低さに驚嘆したことがありました。