この会社の癖のある課長とは厚い信頼に基づいた裏金でつながりができると色々な案件が増えていった時に、プログラム開発をしている課長からサーバーの注文を出したという電話がありました。
「どういう製品ですか」とプログラム開発をしている課長に確認すると、データセンターには導入しないが何処かの部署で使いたいので導入するという説明でした。同時にサーバーの構成表も送ってもらいました。この時、直接発注ではなくて間に代理店が入りますという事だったのですが、その時は「そうですか」と何の疑問も無く電話の説明を聞いていました。
ところが後日代理店から送付されたサーバー構成表を見るとプログラム開発をしている課長からもらった構成表との間に差があり、私がもらった見積用の構成では部品がいくつか少ないものでした。秋葉原にある代理店の担当者に「私が貰った構成と違いますが」と疑問を投げると相手は何時もの事でしょうと慣れた調子で「あの会社では物を売る時には別途の料金が係るのはご存知でしょう」と言って電話を切られてしまいました。
私はそのプログラム開発の課長と代理店との間の話なんかはどうでもよくて、構成が変わってシステムが動作し無くなる事に不安を覚えてプログラム開発をしている課長に電話して確認をしました。「代理店からもらった見積依頼内容と課長からもらった構成内容には差があります。代理店からもらった構成表で問題ありませんか」という質問をすると、課長は笑いながら「いいんです、いいんです、その構成でも動きますから」と言って早く見積書を出すようにと催促をされたのでした。この会社では癖のある男ばかりか、他の男も裏金を貰うような事をしているのが分かった時でした。
小さな会社が急成長して大きなお金が流れるようになると、おこぼれでも貰おうという気持ちになるのは人情かなとも思いました。私はコンピュータ関連の業者として出入りしていたので、コンピュータ関係の物品購入とかサービス購入とかを眺めていると明らかに普通の会社とは違う動きがありました。導入する製品はその時々で変わってしまい統一性がないし、割と大手の良さそうな製品を選ばないでベンチャー製品が割合多く導入されているという感触を持っていました。それは、すべての取引に何らかの情実がからんでいるのかなと思えば十分に理解ができるものでした。

癖のある課長に「こういう事は会社に損失をかけていませんか」という質問をしたことがありましたが、その返事が「いやあ、会社の金なんで困りません・・・」という答えと同時に「購買部門ではもっと大きな発注がありますからね」と自分よりも他部署の人間の方が余程いい思いをしているんだ、というようなことを堂々と言ってのけたのには少々驚きました。
コンピュータ会社がコンピュータを買ってもらった時に、金品や海外旅行をプレゼントしたり、中には好き者のために風俗に案内するようなことは外資系コンピュータ会社では日常茶飯事というのを知っていましたが、まさか私自身がこういう事にかかわるような事になるとは思いもよりませんでした。それもこれも定年を目の前にしていたので清濁併せ呑むというような心境で対応をしていたのかなと思います。この会社との付き合いも長くなると、この会社では上から下まで一部の社員が行っているのではないかと思えるようになって、そういう風土かなと割り切って考えるようになりました。
こう書いてくると、自分の勤務していた建前ばかりの綺麗ごといっていた会社でも、時々不思議な事が管理部門でもあったのが思い出されました。とにかく綺麗事が声高に言う会社だけに、出来るだけ知られない様に行動をしているだけと思いましたが、疑いの目で見ると怪しい動きは社内でもちらほらありました。
いやはや、世の中とはかくの如く何処でも地位に乗じて欲をほしいがままにする人間の性が現れて、それはやり方が上手下手の差があるだけの事なのかと思ったのでした。