2つめのデータセンターに入居を決めた顧客は、コンピュータをデータセンターに設置して共用の古いコンピュータからデータを移すという段取りでした。年末には計画を作り、年始から5月の連休に向けて作業を行い、5月連休明けが本番と言うスケジュールでした。契約はデータセンターの他に移設作業費用とか新規に運用のツールを入れるとかあり物入りでした。

年末には契約書を貰えるということになりましたが、この時も情報システム部長と課長が二人で契約書を持参するということでした。普通ならばベンダー会社から取りに行くのが普通なのに少し変だなとは思いました、しかし来社するということは当然接待をしなくてはいけないという事になり段取りをしました。
私が担当を外された食品会社の近くに、その食品会社との忘年会で使っていた料理屋がありました。私は酒を飲まないので接待する店の料理を厳しく評価していました。所謂名前だけの老舗店とか、立派な皿や器ばかり出てくる皿料理店は料金ばかり高くて好きでは無く利用もしませんでした。たまたま見つけた食品会社と同じ地区にある料理屋を見つけて接待していました。座敷は少々狭く感じましたが小奇麗なのが気に入っていました、料理もちゃんと仕事をしているのが分かって好感がもてました。
顧客が持参するという契約書は、当然ながら午後遅く持ってきてくださいという事にして、夕方そのまま料理屋に行きました。訪問する日が突然だったこともあり当日は座敷では無く椅子席になってしまいましたが、料理そのものは何時もと同じでしたので安心しました。飲食を始めて1時間帆した頃、顧客の課長の携帯電話が鳴りました。電話は代理店の営業マンからのもので、導入するコンピュータの機器構成でもめているようでした。売り上げを増やしたい営業マンがディスクを相当に大きなものを見積もったようで、わざわざ接待している時に連絡しなくてはいけない程に急いでいるのかなと思って、課長が少しは離れた場所でこそこそ電話をするのを聞いていました。この代理店の営業マンはコンピュータの移転後に問題を起こして出入り禁止になったのですが、この時はその予兆があったという事だと後で分かりました。
この新しい顧客には、ホストコンピュータ用の新しいツールの導入が必要というので、顧客をツールを開発している会社に案内しました。この時は、午後いっぱいで製品の紹介から使い方までを説明してもらい、夕方には少々早めでしたがこの会社の接待専用の場所に顧客と一緒に連れていかれました。和風の一軒家だったので、私が転職する前の会社と同じだなと感じました。私が転職する前の会社では部長や役員を接待するための専用の一軒家が高輪にあり、そこを利用していました。元はxx会社の会長も自宅だったというのを改装して接待用の場所にしていました。ツール開発会社に連れていかれた場所も同じような雰囲気だったので、私は転職前の接待する場所との比較をついついしてしまいましたが、さほどの違いはありませんでした。私が転職前に勤務していた会社の接待寮は個人宅の風情が残っていて銅板で作った手洗い所とかあるのが頭に残っていただけで、このツール開発会社の接待寮にはそういうものは無かったので、接待用に作り直したのかなと思っていました。顧客のお土産や送迎も全てツール会社で手配してくれたので、私は顧客に同伴で座っているだけでしたので楽だった記憶があります。
新しいデータセンターの契約とか製品の販売と、新しい取引が出来たのを接待という形で御礼をしたのが、やり手の課長と懇意になるとこの接待の意味が段々と変質してくるようになりました。
この会社は当時は急成長の始まり時期でしたが、聞くところによれば営業マンは歩合給で稼ぐ人もいたのですが、管理部門の待遇は良くなくてベンダーの接待が非常に貴重なものだと言うのも段々と分かるようになったのでした。