2つめのデータセンターの新しい顧客が内定した頃に、データセンターに事件が起きました。この事件というのは、私の勤務していた会社の社員が通信会社に出向していて、その社員がデータセンターの話を聞きつけたところから始まりました。私の勤務していた会社では普段でも余剰社員が沢山いるので何かあれば出向させてそのまま転籍になるというケースが非常に多くあり、特に年配の社員で行き場のない人たちが関係のない会社に出向していました。
ある日、その男が突然現れて「お宅が借りるというデータセンターにインターネットの回線を引きたい」という話が持ち込まれたのでした。この男は多分勘違いしているのだろうと思って「そんな大きいデータセンターでは無いので、ご期待に添えるようなビジネスは出来ないと思います」と言ったのですが、理解力がなさそうで納得しませんでした。
この男は担当者がインターネット回線の引き込みに消極的だと思ったらしく、私が知らないうちに社長にトップセールスをしたので、社長の取り巻きからクレームをもらってしまいました。私は怒って直ちに電話でその男に文句を言ったのですが、やっぱり感度が鈍くて何で怒られなくてはいけないのかというような調子でした。
頭の悪そうな顔をした事業部長は私がトラブルを起こしているとでも思ったらしく、社内でごたごたが起きるのを心配して早々に導入を決めてしまいました。同時に、この元社員も出向先の会社で手柄を立てたい一心であることは、私の勤務していた会社の知り合いに何とか実現したいということを酒を飲ませて依頼しているような噂を聞いて分かりました。こうなるとサラリーマン根性の座った事業部長は波風が自分に当たるのを恐れて「入れろ、入れろ」というような調子になったのでした。私はこの時も非常に気分が悪くなりましたが、サラリーマンのとして我慢しているだけでした。
この時の契約は私が手続きを行い、通信会社もデータセンターの顧客として設備を設置してもらうことにしたのでした。同時に、通信会社がインターネット回線をデータセンターまで引き込むのに「当然、わが社には費用は請求されないですよね」という念押しをしましたが、それはすんなりと認めたのでした。
私は自分の会社の実力を知っているので、データセンターに太いインターネット回線を引き込んでも多分利用者は少ないと分かっていたので、もうからないというのを後で金の請求をされたりとか、文句を言われないようにと考えていました。

この通信会社ではとにかく顧客を増やそうとして回線を引きたい一心であるのは、工事内容を聞いてもよく分かりました。地下鉄の線路に沿って敷設された光回線から直接公道に穴を掘って埋めでデータセンターの借りているフロアまで直通で引くと言う素晴らしい回線でした。しかもバックアップ回線も準備されていると聞いて、ユーザーにインターネット利用を進めても心配ないと確信しました。
太い回線をデータセンターのフロアまで引いてもらうまでは良かったのですが、私の勤務する会社の事業部では回線を小分けする機械を導入する程の金がないので、最初のユーザーには契約値は小さいが実際は太い回線をそのまま貸し出していたので、何も知らないユーザーは「アクセスが増えてレスポンスが悪くなるかと心配しましたが、何も起きなくてよかった」という感想を時々聞かされました。実情は10年後くらいに初めて説明したといういわくつきのインターネット通信サービスを行っていたということでした。案の定、データセンターを営業開始してから顧客は増えましたが、このインターネット回線を利用する顧客は少なくて業者は赤字だろうと思われました。
私の勤務していた会社が、この以後にデータセンターサービスを開始したインターネットサービスは、事業部の素人技術者が非常識なインターネットサービスを始めて、ネットワーク機器を切り替えるとサービスが止まるとかいうようなこともありました。しかし、この通信会社のインターネット回線サービスは、数回通信会社の設備トラブルで短い時間の障害があっただけでしたので安心できていました。そういう意味では色々な問題を経て設置された通信設備は顧客サービスと言う面ではよい結果をもたらしたというので評価できると思っていました。こういうのを瓢箪から駒というのではないかと思い、苦々しい思い出として残っております。