携帯電話の事業が好調に推移して事業計画の4倍とか5倍もの売れ行きになると交換機の増設がどんどん進みましたが、データセンターの中は交換機の設置場所が無くなりそうだと言う時、設備課長から私にはではなく、技術者に対して建物の増築検討の要請がありました。年中費用値下げを言い続けている手前自分の身勝手な話はしたくないという理由ではなかったかと推測しました。

依頼を受けた技術者は、敵の首でも取ったかのように社内中に建築見積依頼を触れ回り、親会社の建築事業部に提案を作らせました。
データセンターは設置スペースを自由にレイアウト出来るようにと無柱構造を売りにしていましたが、相手が何でも安値の設備課長なので、建築費用を抑えるために無柱構造では無く、普通の建物の様に柱を部屋の中に立てた構造にしました。部屋は柱だらけで、空調室とのコンピュータ室との境目にある壁も作らないと言うような、何とも安ぽっいものだと私は感じました。しかしそれ以外にさしたる費用削減の妙案も無く、費用は何十億円というような物になり、件の設備課長からだめ出しを食らったのでした。
安易に安く作れば良いという思想が受け入れられなかったのと、そなんにしても尚世間相場からすれば割高という費用だと思いました。技術者はこれだけの費用に抑えたのだから必ず注文してもらえると思い込んでいたようですが、懐疑的に見ていた私の読みが当たって注文がもらえませんでした。
これには当時の事業部長がデータセンター事業は投資ばかりかかり儲からないというような自説を持っていたこともあり、妥当性のある費用になるよう親会社とは折衝せず、担当者任せにしていたのも一因でした。しかし結果的にみれば、この客先は15年後位にはデータセンターからいなくなったので、追加で投資をしなくて正解と言えば正解でした。ある意味では客先と丁々発止で事業を拡大出来なくてしぼんでいく客筋だったのです。

その後、件の設備課長はデータセンターの近くに自前のデータセンターを建築してしまいました。費用は勿論当社の増築費用よりも安価だったので驚きました。と言うのは、増築するビルには受電設備が無く隣のデータセンターから電源を給電する方式だったので、その受電設備さえも含んで当社の見積金額以下というので驚きが増したわけです。
業者に安く作らせた分、工事は雑で配線は線がバラバラで整列していないとかで外見は悪かったようです。これから先は何時も設備課長から「お宅のデータセンターの半値以下で自前のデータセンターを建築しました」と言われるようになりました。
建物の設備仕様は中々教えてくれませんでしたが、その後調べて見ると安価な低圧の受電設備というのは解りましたが、それでも同じ免震ビルで驚くほど安く建築したという事実には驚きを隠せず「いやあ、今回限りは参りました」と設備課長に頭を下げたのでした。