1992年に長崎県佐世保市にオランダやヨーロッパの街並みを再現して作られたテーマパーク「ハウステンボス」が開業しました。ここには宮殿外観を忠実に再現した「パレスハウステンボス」という建物があり、内部は美術館となっています。

1991年には建築工事が開始されていたと思いますが、当初はオランダ王宮をそのまま写した建築にするというので図面は秘密にされていたようですが、たまたま某ゼネコンとのご縁があり何も知らないままに手書き図面をコンピュータに入力してほしいとの依頼がありました。
最初、「図面を入力するオペレータ以外の人にはこの図面を開示しないでください」と厳命されていたので、社内でも秘密扱いでコンピュータで扱えるCADデータを作成しました。
この仕事は半年くらいも続きましたが、ある日の夕方技術部長の都合で事務所を訪問しました。その時、小さな応接室に通されて待っていた時、応接室の机の上にハウステンボスの図面が置いてあるのが目に留まりました。
技術部長が応接室に入って来た時「この綺麗な建物は何ですか」という質問をしたら「それが今CADデータ化をお願いしている建物の図面ですよ。未だ設計も完了していていないので他言しないで下さい」と釘をさされました。それは芸術家が描いたようにも見える図面だったので強い印象を受けました。

技術部長から「ハウステンボス王宮を忠実に写そうとしているので、煉瓦の一個一個の形や大きさまで再現するための図面を作成しているんでよ」と説明がありました。
建物は一見すると左右対称ですが、左右では微妙に煉瓦や装飾している動物の形が違うので「こういう小さな違いも再現するんですか」と質問すると「だから大変なんです」という答えが返ってきました。
建築する前に壮麗な王宮の図面の一部を見るたという貴重な体験をしたので、仕事にあくせくしている時間から離れて別世界にいるような気分になった時でした。
仕事とは言いながら、こういう新鮮な驚きを体験できたので一時の気分転換になりました。