私の扱っていた機械は、ビジネスショーなどのコンピュータ関連の展示会にも出品していました。会社のブースの中の1小間に機械と説明員を配置してお客様に説明するもので、他の会社でやることと同じで特段変わったものではありません。この展示会については色々な悶着があって別項で紹介したいと思います。展示会では、出品各社が来場客に対して製品の紹介をする場所があって、そこで私が製品の紹介をしたときのことです。

こういう一般客に対する説明は、普通は技術グループの誰かが製品説明をしていたのですが、どういう風の吹き回しか私が説明をする事がありました。展示会場は未だ晴海の時代でした。
100人近い来場客に、米国ベンチャーの製品ながら非常に面白い使い方が出来ますという説明をしました。私自身はいつも通りにコンピュータメーカーやその代理店の営業マンやお客様向けに説明しているのと同じ事を説明したつもりでした。

製品説明が終わって自社のブースに帰ると、某自動車会社の設計をしているというお客様が待っていて、一度会社を訪問して欲しいという依頼をうけました。
そのお客様は機械の機能を正確に理解されていて、メリットが大きいというので早速導入することになりました。この会社の設計部ではこの機械の機能が話題となって、他の設計部にも導入することになり、この会社では最終的に3セットも導入してもらうことができました。

この会社は自分の仕事のことは自分で考えるという方針らしく、技術者は自分の仕事に役立つものであれば自分で稟議を書いて所長決済をもらうというような会社でした。この会社がわりと自由に担当者の意見を受け入れる素地があったので、私の扱っていた機械も導入できたのだろうと思いました。
実際に注文書を貰うときに出て来た課長は「私はめくら判を押して、担当者の後ろ盾をしてるだけですよ」という話を聞きました。別の部署の担当者は「我々の職種は他の技術者とは違うので、所長に会社支給の作業着ではなくカジュアルな服装にしてもらいたいと具申したら認められました」というような具合でした。

このお客様に対しては営業努力をしたというよりも、たまたま展示会場の機械の機能説明で、お客様の仕事のニーズに合う機械との出会いがあったということでした。
それに加えて、このお客様に機械が販売できたのは、より分かりやすく説明するという自分の努力もあったのだろうと思いました。その理由は、以前に勤務していた会社で宣伝広告を経験したことでした。前に勤務していた会社で色々教育された成果が転職した会社で生かされたことになり、転職した会社の投資効果は大きかったのだと思いました。しかしながら、そういう自分の頭の中で考える評価と、強欲な部長の評価とは大きく違っていたのだろうというのは容易に推測できました。