20も以前の六本木のビジネスの中心はアークヒルズでした。今の六本木ヒルズあたりは東京日産があったりするビジネスビルとウェーブというレコードを手広く販売している店がありました。ミッドタウンのある場所は防衛庁があり、ここには技官と言われる人がいてビジネスで何度か訪問しました。
私の勤務していたビルはアークヒルズではなくて、アークヒルズが出来たときにアークヒルズに引越しをして出て行った後の空きビルで、アークヒルズ地区の一番端にある安い賃料のビルでした。

アークヒルズも元々は麻布谷町といわれる下町を再開発してビジネスビルを建てたものでしたので、六本木ヒルズやミッドタウンのさきがけとなっていたビルだと思います。
しかしながら場所は不便で地下鉄の駅は無く、虎ノ門や神谷町から歩いて10分以上はかかったと思います。新橋から渋谷に行くバスは営業で出かけるときは何時も利用していました。

昼間に出世欲に取り付かれた部長にしこしこ文句を言われていた、私の転職を誘った男は早く家に帰れない事情があるのか、毎日の様に一杯やってから帰宅するのが常でした。
私が夕方自分の席に座っている時は必ず私の方を見て「そろそろ・・・」と言って飲み屋に誘いました。私は酒は飲めませんが新参者でもあり、お付き合いの意味で頻繁に一緒に六本木界隈の赤提灯に行きました。
今時は六本木にはすっかり見かけなくなりましたが、当時は未だ路地裏にそういう赤提灯をぶら下げた店があって「この店はこんな汚くてもカードが使えるからね」と言って安心して仲間と飲み食いしながら部長の悪口と毎日の忙しい仕事の憂さを晴らしていました。

色々な店がありましたが、アークヒルズが出来た時に再開発で肉屋が無くなったのですが、その肉屋はアークヒルズ端の目立たない場所に焼き鳥屋を出していました。
値段は少々高めでしたが元々肉屋で焼き鳥がうまいので当時は繁盛していました。つい最近この近くに行ったついでに懐かしくて立ち寄ったのですが、店主とか従業員はそのままで高齢の老人になっていました。味も落ちていたので客の入りが悪いのもうなずけました。私が「昔によく通ったよ」というと「そりゃ随分古い話だ」という答えが返ってきました。
当時のこの店は焼き鳥の注文が多くて、この男が焼き鳥の竹串を使い回しするために食べ終わった皿を厨房に持ち帰るときには串だけ選別して自分のエプロンのポケットに入れるのがおかしかったことは忘れられない思い出の店でした。